訪日外国人観光客にとって「グルメ体験」は大きな目的となっています。観光庁が公表した『2024年インバウンド消費動向調査』によると、訪日外国人1人当たりの旅行支出額は合計で22万7千円になりました。そのうち飲食費は4万9千円を占め、全体の21.5%に達しています。この総支出額は、2019年時点での一人当たり15万9千円と比較して6万8千円もの増加です。円安の影響も背景にはありますが、所得水準の高い層が増えている可能性も考えられ、国内の飲食業界にとっては注目に値する変化といえます。
つまり、外食産業にとっては、ますます増える訪日外国人のニーズを正確に把握する必要があり、料理の品質や商品ラインナップだけでなく、購買プロセスやマーケティングアプローチも再考するタイミングになっています。メニュー設計やプロモーションには、単に英語対応を強化するだけでなく、多言語・多文化の観点を踏まえた細やかな工夫が求められます。例えば、アレルギーや宗教上の理由による食事制限への配慮、見た目の美しさやSNS映えを意識した提供方法など、より幅広い視点での戦略が鍵を握るのです。
さらに、コロナ禍以降は衛生管理に対する意識が世界的に高まり、安心・安全な環境で食事ができるかどうかも評価ポイントに変わっています。検温や消毒の徹底だけでなく、調理工程の“見える化”を進める店舗も増えています。こうした傾向から、今後ますますグローバル基準での対応が当たり前となり、他店舗との差別化を図るためにも独自のストーリー性や付加価値の提示が重要視されるでしょう。
本記事では、インバウンド向けの飲食トレンドと、有効なマーケティングやサービス展開について考察していきます。また、具体的なトレンドキーワードをもとに、今後の外食産業における戦略ポイントを解説します。訪日客に支持される店舗づくりを行うことで、口コミやリピーターを通じたさらなる成長が見込めるでしょう。
【目次】
2025年3月13日放送のテレビ朝日『林修の今知りたいでしょ!』では、「外国人845人に聞いた!一番感動した!最強ジャパンフードランキング BEST 25」が発表されました。この特集では、日本を訪れた外国人観光客が実際に食べて感動した日本食をランキング形式で紹介しており、訪日客のリアルな嗜好が反映されています。それでは早速、外国人観光客が支持する“最強JAPANフードの最新データ”を分析していきましょう。
寿司・ラーメン・焼肉・天ぷらなどは、日本食のアイコンともいえる存在であり、やはり高い評価を得ています。これらの料理は、素材・調理法・見た目すべてにおいて“日本らしさ”が凝縮されており、観光客にとって「日本を体験する」代表的な手段といえます。
一方で、おにぎり・味噌汁・納豆・オムライスなど、比較的地味ながら“日本の生活感”を感じさせる料理がランクインしている点にも注目すべきです。これらは、観光地だけではなく、コンビニや家庭料理として手軽に体験できることが魅力となっています。
また、餃子・カレーライス・ハンバーグといった“和洋中のミックス”要素を含んだメニューも評価されており、「日本風アレンジ」の妙が、外国人の舌に新鮮な驚きを与えていることが伺えます。
このように、外国人観光客は単なる「高級グルメ」だけではなく、日常に根ざした“等身大の日本食”にも深い感動を覚えていることがわかります。飲食店としては、王道メニューの磨き込みと同時に、地元ならではの料理や家庭的な味も発信していくことで、インバウンドの心を掴むチャンスが広がるでしょう。
1. サステナブルフードの浸透
「健康志向」や「地球環境への配慮」というキーワードが、グローバルな消費動向の中で年々高まっています。この潮流は日本国内でも例外ではなく、訪日外国人もサステナブルな食の選択に関心を寄せています。地元で収穫されたオーガニック野菜や、漁獲量を管理した上で持続可能な方法で獲られた魚介類を使った料理が、旅行者の心をとらえるケースが増えました。フードロス対策として、残った食材を無駄にしないメニューを提案する飲食店も注目を集めています。
また、日本の伝統的な発酵食品、例えば味噌、醤油、ぬか漬けなど—を使ったメニューの人気も引き続き高まっています。これらには体に良い酵素や菌が含まれており、「ヘルシーでおいしい」というイメージが海外でも評価されています。店舗側が食材に関するストーリーを伝えると、訪日外国人は料理から学べる楽しさを実感でき、食事の満足度がよりいっそう高まるでしょう。
また、近年の食の楽しみ方として、“食べるシーン”自体をストーリー化する工夫が増えています。例えば、生産者と直接つながるオンラインイベントでの食材紹介、あるいは店内に設置したモニターで仕入れ先の畑の様子を映し出すなど、料理の背景を視覚的にアピールする取り組みも人気です。こうした仕掛けは訪日客にとって珍しく、かつ興味をそそる要素になり得るため、店のブランディングに大きく貢献します。
2. 進化する和牛・寿司体験
依然として根強い人気を誇るのが、高級和牛や寿司です。特に富裕層の旅行者が増えたこともあり、ただ食べるだけではなく「体験型」のプログラムに注目が集まっています。熟練の寿司職人から直接教わる「寿司握り体験」や、ブランド和牛の部位ごとの味の違いを学ぶ「食べ比べコース」、カウンター越しの料理人との会話を楽しむ「シェフズテーブル」など、五感を刺激するコンテンツが支持されています。
このような場所では、料理の魅力だけでなく、提供する演出やホスピタリティが大きな差となります。職人が目の前で肉を焼く音や香り、魚を捌く大胆な手さばきが視覚的なエンターテインメントとして価値を高めています。さらに、単なる高級食材の提供にとどまらず、原産地や育て方、味の特徴をしっかり説明することで、訪日客は「食べる前の期待感」と「実際の味わい」を結びつけられ、強い印象を持って帰国するケースが多いようです。
「日本に来たからこそ体験できた」と感じる文化体験の需要はますます高まっていくでしょう。そこにさらに「このお店だから」が加わることで、リピーターから新たなファンの獲得までつなげることも可能です。
3. ハラール・ヴィーガン対応の拡充
中東や東南アジアからの旅行者が増加する中で、ハラール対応は外食産業において見過ごせないトレンドとなりました。ハラール認証を得るためには、食材や調理過程に厳格な基準を満たす必要があり、設備投資やスタッフ教育も欠かせません。しかし、認証を取得し、公式サイトや店頭で分かりやすく表示している店舗は、それだけで訪日外国人からの信頼を得やすくなります。
同様に、欧米を中心に増えているヴィーガン層への対応も進んでいます。ヴィーガン食を提供するために、動物性の食材を一切使わないメニューを開発するケースはもちろん、出汁の原材料を植物性に変えるといった小さな工夫が大きな評価につながることがあります。日本の食文化は魚介や肉を使う料理が多いイメージですが、豆腐や野菜、海藻などを活用した植物性メニューも豊富に開発できる下地があります。
さらに、「自分専用の食事をカスタマイズできる体験」が注目されるようになりました。例えば、具材の選択肢を豊富に用意し、宗教やアレルギー、好みに応じてトッピングを変えられる仕組みを導入するなど、自由度の高い提供スタイルは訪日客の満足度を大幅に上げるきっかけとなります。
4. スマートオーダー・キャッシュレス決済の標準化
モバイルアプリやタブレットを使ったスマートオーダーは、日本人客にとどまらずインバウンド向けにも便利な仕組みです。メニューを多言語で表示できるだけでなく、写真や動画付きで料理を紹介することで、味のイメージを伝えやすくなります。また、オーダー時の言語トラブルが減少するため、スタッフが少数でも効率的にサービスを提供できるメリットがあります。特に訪日客が好むクレジットカードやQRコード決済が利用できる環境を整えることで、スムーズな会計フローを実現し、ストレスのない体験を提供できるようになるでしょう。
また、店舗独自のアプリやオンラインサービスを通じて、予約や事前注文が可能なシステムを導入する動きも見られます。海外からの旅行者は時差や通信環境などの懸念を抱えるケースがあるため、事前に予約しておけば待ち時間を最小限にできるほか、注文内容の確認やアレルギー対応のリクエストもスムーズに行えます。結果的に、訪日客の体験満足度は高まり、リピーターや口コミの増加につながるでしょう。
さらに、調理風景をライブ配信してリアルタイムにコミュニケーションをとりながら オーダーを進めるといったデジタル技術の活用事例も登場しています。離れた場所からでも、まるでカウンター席に座っているかのような感覚を楽しめる仕掛けは、食のエンターテイメント化を後押しします。訪日客だけでなく、海外にいる人々へ「いつか日本へ行って本物を味わってみたい」という気持ちを喚起する効果も期待できます。
5. 飲食店で提供できるその他の体験型サービス
寿司や和牛、高級食材による体験型サービスに加え、もっと手軽に日本文化を感じられる取り組みも訪日外国人に好評です。店舗スペースを活用し、文化的なワークショップを同時に行うことで、食事だけではない多面的な楽しみを提供できます。
これらのワークショップや体験型メニューは、日本独自の文化・食材に直接触れる機会として人気を集めています。味覚だけでなく、視覚・嗅覚・触覚を刺激するため、思い出としてのインパクトも大きいです。その結果、旅行を終えて帰国した際にも日本での体験を話題にしやすく、SNSやクチコミを通じた情報発信も活発になるでしょう。
2025年のインバウンド市場において、飲食体験は訪日外国人にとって「旅の目的」そのものとなりつつあります。しかし、どれほど料理がおいしくても、情報が届かなければ選ばれることはありません。
多くの訪日客は、日本に来る前から綿密に飲食店をリサーチし、滞在中も現在地からアクセスしやすい店をスマートに探しています。こうした行動に合わせて、店舗側も「情報発信の質」と「見つけやすさ」を高める工夫が求められています。
ここでは、「旅マエ(訪日前)」と「旅ナカ(訪日中)」に分けた情報戦略に加え、SNS・口コミ・多言語対応など、訪日外国人の心に届く具体的なアプローチを紹介します。
◆ 訪日前:「旅マエ」の情報接点を整える
◆ 訪日中:「旅ナカ」の即時検索に対応する
◆ SNSで「シェアしたくなる話題」を創出
訪日外国人の食ニーズは年々多様化し、今後もインバウンド市場の成長は外食産業にとって見逃せないビジネスチャンスとなります。サステナブルフード、高級和食体験、ハラール・ヴィーガン対応、デジタル技術の活用、そしてSNSを軸とした情報発信が、次世代の飲食店経営において欠かせない要素となるでしょう。特に、食文化を体験型のコンテンツとして提供できるかどうかが、訪日客への訴求力を左右する大きな要因です。
店舗としては、グローバル基準を意識したサービス品質の向上と多言語対応の強化を行いつつ、独自色を打ち出すマーケティング施策が求められます。さらに、地元食材の魅力を活かしたサステナブルメニューや、オンライン事前予約システムの導入、口コミプラットフォームへの積極的な参加といった多角的アプローチで、訪日客の興味を引くことが重要です。
インバウンド需要をしっかり取り込むためには、常にトレンドを把握し、発信情報を随時アップデートしていく姿勢が欠かせません。一度だけの施策で終わるのではなく、継続的に改善を図ることで、より多くの外国人旅行者が「この店に行ってみたい」と思う魅力を打ち出し続けることができます。店舗や業態ごとに異なる特性に合わせ、専門家のアドバイスを活用するのも効果的です。
日本の豊かな食文化を強みに、訪日外国人に忘れられない食体験を提供し、世界各地からの評価とリピーターを獲得する未来を目指しましょう。
私たち、インバウンドマーケティングジャパンは、
訪日マーケティングに”とんでもなく”特化。
多言語対応のMEOやGoogle広告を活用したデジタルマーケティングの知見を生かし、訪日客の集客や来店促進、海外向けSNSの構築・運用、店舗のインバウンド対応まで、総合的な支援サービスを行っています。
「対策を進めたいが、どこから手をつけていいか分からない」とお困りですか?当社では、企業の業態や目標に応じた最適なプランをご提案いたします。無料での相談も受け付けていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください!