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日本政府観光局(JNTO)が発表した最新の統計データによれば、2025年5月の訪日外国人旅行者の総数は3,693,300人を記録しました。これは前年同月の実績と比較して21.5%増加しており、前年2024年5月の3,040,294人という過去最高記録を大幅に更新しています。この顕著な増加の背景には、様々な要因が考えられます。
特に大きく影響していると考えられるのが、世界的な注目を集めている大阪・関西万博の開催です。万博協会によると、大阪・関西万博は開幕してから44日目(5月28日)の時点で運営関係者やスタッフを除いた一般来場者数がついに500万人を突破しました。このことからも、万博への関心の高まりが日本を訪れる外国人観光客の増加に寄与している可能性が高いことが見て取れます。
これらのデータは、日本の観光産業が順調に回復・成長していることを示しています。
本記事では、これら2つの最新動向について詳しく解説します。
2025年5月の訪日外国人客数は、前年同月比21.5%の3,963,300人となりました。
桜のシーズンと本格的な夏休みシーズンは、例年訪日外国人客数が増加します。しかし、そのちょうど中間にあたる5月に訪日外国人客数が増加するのには、それぞれの国や地域の祝日やスクールホリデーなどの要因があると考えられます。
※出典:日本政府観光局「訪日外客統計」
日本政府観光局(JNTO)が公表した統計によると、東アジアの中国や東南アジアのフィリピン、欧米豪のアメリカをはじめとした国々で、訪日外客数が着実に増加していることがわかりました。
国や地域別の外国人観光客の動向もみてみましょう。
※出典:日本政府観光局「訪日外客統計」
国や地域別に詳しくみてみると、韓国は82万人超(前年同月比11.8%増)、中国は約79万人(前年同月比44.8%増)、台湾は53万人超(前年同月比増15.5%)となり、いずれも定期便やチャーター便増加の影響もあり、5月として過去最高を記録しました。一方で、香港は19万人(前年同月比11.2%減)となっています。
東南アジアはインドを除く全てで5月として過去最高となり、同様に北米・豪州・欧州も過去最高を更新するなど例年に比べ好調であることが伺えます。さらに、中東地域においても訪日人気は続いており、前年同月と比較して直行便数の増加もあり5月として過去最高を記録しました。
2025年4月に開幕した「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」は、国内外から非常に多くの来場者が集まり、訪日インバウンドの最新状況を象徴する大規模な国際イベントとなっています。株式会社ナビタイムジャパンは、訪日外国人向けのナビゲーションアプリ「Japan Travel by NAVITIME」に蓄積されたGPS位置情報を活用し、開幕から1カ月間(4月13日~5月12日)における来場者の利用実態を徹底的に分析しました。ここからは分析から明らかになったリアルな来場者の動向や行動パターン、最新の観光トレンド、来場者の国籍ごとに異なる特徴をみていきましょう。
分析の結果、外国人来場者の万博会場滞在時間帯にも国別の傾向が見られました。全体としては11時〜14時台と17時台に滞在する観光客が多い一方で、朝から滞在する人は比較的少ない傾向です。
そのうえで、国や地域ごとに次の傾向が見られました。
夜間チケットを利用した夜間の来場者も一定数を占め、万博会場では日中から夜にかけて、国籍や目的ごとに異なるライフスタイルが共存していることが見てとれます。
今回の分析結果では、万博会場内に設置されている多様なパビリオンのうち、どの展示が特に外国人来場者に人気を集めているのか、その傾向も明確になりました。特に、海外からの観光客の動向を探るため、会場内で一定以上のサンプル数を取得できた訪日外国人の中から、タイ、アメリカ、フランスという三つの国籍に焦点を当てて調査を実施した結果わかった、それぞれの国の旅行者によるパビリオンの好みや行動パターンは次のとおりです。
タイやフランスの訪日客は自国のパビリオンを出発点としつつ、日本特有のエンターテインメントやクールジャパンを象徴する展示物への関心が高い傾向が目立つ一方、アメリカからの来場者は、自国パビリオンのみならず会場全体を幅広く巡り、各国のパビリオンや国際色豊かな展示の体験・見学を重視しています。このような傾向は、それぞれの国民性や旅行スタイルの違いが反映されていると考えられます。
また、タイやフランスからの来場者に特に人気のあった「よしもと waraii myraii館」や「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION(実物大ガンダム像)」、「日本館」は、万博を象徴する日本ならではの独自性が評価されている証拠です。それぞれのパビリオンの魅力的な展示やインタラクティブな体験型コンテンツが、海外からのゲストを引きつけてやまない理由となっています。
万博会場へは訪日外国人来場者の約80%にあたる非常に多くの来場者が鉄道を利用して会場にアクセスしていることもわかりました。特に、会場の東側ゲートを経由する鉄道路線の利用が中心となったことが特徴的です。
また、万博開催期間中のGW(4月26日~5月6日)における大阪メトロの全駅の乗降客数は前年同時期比約11.5%増加し、会場最寄り駅である夢洲駅の乗降客数も万博開幕後に大幅に増加したとみられます。(出典:日本経済新聞 GW客、夢洲駅180万人 大阪メトロ全駅乗降11.6%増 万博効果訪日外国人旅行者の大阪・関西万博の滞在・来訪動向を分析|プレスリリース/おしらせ)
万博の開催に際しては、会場を訪れる多くの訪日観光客が、万博だけでなくその前後の時間を利用して日本国内のさまざまな観光地や地域へ足を運んでいる点も見逃せない特徴です。彼らがどのようなエリアを選ぶのかについては、訪日客の出身国や地域ごとに顕著な傾向が現れています。
たとえば、アジア圏からのゲストの場合、大阪と京都の間を移動しながら観光を楽しむパターンが非常に多いことが、実際のデータ分析によって判明しています。一方、アメリカから訪れる旅行者、東京23区から京都市、そして大阪市を結ぶいわゆる“ゴールデンルート”が特に人気です。ヨーロッパ圏からの旅行者の場合は、ゴールデンルートだけでなく、広島や金沢、高山といった地方都市へも積極的に足を運ぶ人が増加傾向にあります。
このような動向からも読み取れるように、万博が関西圏のみならず日本全国への観光促進や誘客に対して非常に大きな波及効果をもたらしていることが分かります。今後もこうした傾向は強まることが予想され、各地でインバウンド需要がさらに高まっていくことでしょう。
上記の表は、万博と一緒に訪れた観光スポットのランキングです。このデータからは、大阪・京都・奈良で人気の寺社仏閣や、新しくオープンしたアートミュージアム、トレンドのショッピングエリアなど、多様な日本独自の観光体験を複数楽しむ「周遊型消費」の傾向がより一層強まっている様子がわかります。
日本政府は、最近閣議決定した「食料・農業・農村基本計画」の中で、これからの日本の成長戦略に不可欠な要素として海外市場から収益を得る力の強化、すなわち農産物や食品、さらには食文化そのものの輸出拡大に注力する方針を明確に示しています。特に、観光分野においては、訪日外国人観光客(いわゆるインバウンド)による日本国内での食関連消費の増加が、日本の独自性ある和食や伝統的な食文化の魅力の発信と密接不可分だと捉えており、両者は相互に高め合う関係にあると位置付けています。そして、この流れが最終的には日本の農林水産物や加工品の輸出拡大に直結すると見ています。
そのため政府は、2030年を一つの大きな目標年としてインバウンドによる国内での食関連消費額を、2023年の約1.6兆円という数値から4.5兆円へと、およそ3倍にまで拡大するという非常にチャレンジングな目標を設定しています。このターゲット実現のため、観光庁や日本政府観光局(JNTO)と密接な連携を図りつつ、様々な新たな取り組みや施策を着実に展開し始めています。具体的な柱となるのは以下の通りです。
なかでも特に今注目されているのが「農泊」と呼ばれる新しい旅行スタイルです。農泊は大都市圏では味わえない、各地域固有の歴史や伝統、文化、さらには自然環境といった資源を生かし、地元の人々との交流や、その土地ならではの食体験などを楽しむことができる点が最大の特徴です。ただ宿泊するだけではなく、農作業体験や伝統料理づくり、季節の郷土行事への参加など、多様なプログラムが提供されており、これが国内外の旅行者のみならず、地域住民にとっても新たな活力を生み出しています。
このような体験型観光の普及は、「モノ」消費から「コト」消費へのシフトという近年の観光トレンドとも一致し、単なる観光消費だけでなく、観光客一人ひとりの心に残る付加価値体験を創出しています。農泊をはじめとする地域資源を活用した観光は、地域経済の活性化や持続可能な地域社会の構築にもつながるサステナブルな取り組みであり、環境保全や地元産食材の需要拡大による食農連携の深化にも貢献するでしょう。
地域ごとに異なる景観や気候、伝統、食材、食文化をうまく観光資源として磨き上げることで、訪れる人々には新鮮な驚きや感動を、そして地域にとっては新たな収益源や雇用創出をもたらします。そのためには、地方自治体や観光事業者、農林漁業者などが連携し、地域の魅力やブランドを戦略的に発信していくことが重要です。
今後も地域の観光コンテンツの”磨き上げ”を継続し、新しい素材や体験プログラムを生み出すことで、地域経済全体への波及効果の拡大が大いに期待されています。
2025年5月の訪日外国人客数は5月として過去最高を記録し、関西万博の来場者数も約1ヶ月半で500万人を突破するなど、日本へのインバウンド需要は引き続き力強く推移しています。特に、訪日需要が一時的に落ち着くとされるこの時期においても勢いが衰えず、万博開催による誘客効果が複合的に働き、全体として高い水準を保っている点は注目したいポイントです。
ナビタイムジャパンの行動データからは、万博が単なる一地点のイベントにとどまらず、鉄道アクセスや周遊観光、地域消費の活性化にまで影響を及ぼしている様子が明らかになりました。来場者の国籍別の行動傾向や文化的嗜好の違いを踏まえた観光・プロモーション施策の必要性も、今後さらに高まるでしょう。
政府の基本計画における「食×観光×輸出」の連携戦略は、インバウンド市場の拡大と農林水産物の輸出促進を両立させるための重要な柱です。単なる観光消費ではなく、「体験としての食」を通じた地域資源のブランディングと国際的な価値向上が期待されています。
夏のハイシーズンに向け、引き続きリアルタイムデータと各国市場の動向を注視し、柔軟かつ戦略的なインバウンド対応が求められます。2025年は、観光立国としての日本の実力と課題が浮き彫りになる転換点ともいえる年。こうした動きをタイムリーに捉えながら、継続的な情報発信と現場のアップデートを行っていきましょう。
私たち、インバウンドマーケティングジャパンは、
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多言語対応のMEOやGoogle広告を活用したデジタルマーケティングの知見を生かし、訪日客の集客や来店促進、海外向けSNSの構築・運用、店舗のインバウンド対応まで、総合的な支援サービスを行っています。
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