【目次】
「インバウンドSaaS」とは、「Software as a Service（サービスとしてのソフトウェア）」の形態で提供される、訪日外国人観光客（インバウンド）向けのサービスや事業を支援するためのITツールの総称です。
具体的には、宿泊施設や観光施設、飲食店などがインバウンド顧客を受け入れる際に直面する様々な課題を解決するためのクラウドベースのソフトウェアを指します。具体的には多言語対応の予約システム、オンライン決済、多言語のWebサイト・SNS連携ツール、CRM（顧客管理システム）、マーケティングオートメーション、施設内のデジタルサイネージ、さらには多言語チャットボットなどです。
これらのSaaSは、インターネットを通じて提供されるため、初期費用を抑えつつ必要な機能を必要な期間だけ利用できるという利点があります。また、これにより観光事業者は効率的に業務をデジタル化し、外国人観光客へのサービス品質向上、集客力強化、そして業務効率化を実現することができるため、今とても大きな注目を集めています。
日本は現在、歴史的なインバウンド需要の回復期にあり、それに伴い「インバウンドSaaS」への注目度が急速に高まっています。その理由は多岐にわたりますが、主に以下の点が挙げられます。
新型コロナウイルス感染症の影響が緩和され、訪日外国人観光客数はV字回復を見せています。これにより、宿泊施設や観光施設、飲食店など、観光関連業界はこれまで以上に多様な国籍や文化背景を持つゲストへの対応が必要になってきました。また多言語対応、キャッシュレス決済、オンラインでの情報提供や予約など、きめ細やかなサービスの提供も求められており、SaaSの利用が不可欠といっても過言ではありません。
コロナ禍を機に、多くの企業で業務のデジタル化、DX推進が喫緊の課題となりました。特に観光業界はアナログな業務プロセスが多く残っているため、デジタル化による効率改善の余地が大きいとされています。インバウンドSaaSは、予約管理、顧客管理、多言語対応、マーケティング、決済など、多岐にわたる業務をクラウド上で一元管理できるため、人手不足の解消や生産性向上に直結します。
SaaS（Software as a Service）は、従来のオンプレミス型ソフトウェアと比較して、初期費用を抑えられ、月額利用料などのサブスクリプション形式で利用できる点が大きなメリットです。そのため中小規模の事業者でも導入しやすく、必要な機能を必要な期間だけ利用できるため、事業規模に合わせた柔軟な運用が可能です。また、システムの保守・管理はサービス提供側が行うため、運用コストも削減できます。
インバウンドSaaSは、顧客の属性、予約履歴、利用状況などのデータを蓄積・分析することが可能です。これにより、顧客一人ひとりにパーソナライズされた情報提供やサービス提案が可能となり、顧客満足度の向上に繋がります。また、売上データや予約状況のリアルタイムな把握は、今後の経営戦略やマーケティング施策の立案において、迅速かつ的確な意思決定に役立ちます。
インバウンドSaaSは多様なサービスに細分化されています。ここからは主要なカテゴリに分けて代表的なサービスやツールを紹介します。
予約・宿泊管理システム（PMS: Property Management System）は、訪日外国人観光客がスムーズに予約し、宿泊施設側が効率的に運営するためのSaaSです。多言語対応の予約受付、空室状況のリアルタイム管理、オンライン決済（クレジットカード、QRコード決済など）、顧客情報の一元管理、OTA（オンライン旅行代理店）との連携などが主要な機能です。これにより、外国人ゲストの利便性を高め、ダブルブッキングの防止、業務の自動化による人件費削減、データに基づいたマーケティング戦略立案を可能にし、施設全体の収益向上に貢献します。代表的なサービス・ツールは次のとおりです。
PMSとサイトコントローラーを統合し、予約管理、チャネル連携、決済などを一元化。宿泊施設の運営を効率化します。
https://www.cloudbeds.com/
多機能なサイトコントローラーとPMSを提供。予約管理、料金設定、チャネル連携を自動化し、宿泊施設の業務負担を軽減します。
https://www.beds24.com/
宿泊施設の運営業務をクラウドで一元管理。PMS、スマートチェックイン、多言語メッセージなど、幅広い機能を備え、省力化を強力にサポートします。
https://airhost.jp/
宿泊施設向けのシンプルなPMSと予約システム。直感的な操作性で、予約管理から顧客情報まで一元化し、業務効率を向上させます。
https://chillnn-inc.com/
民泊運営に特化した管理システム。予約管理、清掃手配、鍵の受け渡しなどを効率化し、民泊事業者の負担を軽減します。
https://renoful.jp/minpakuin/index.html
小規模宿泊施設向けのオールインワンソリューション。サイトコントローラー、PMS、予約エンジンを統合し、オンライン販売と運営を支援します。
https://www.littlehotelier.com/
多言語対応・コミュニケーションツールは、訪日外国人観光客との円滑な意思疎通を実現するSaaSです。Webサイトの自動翻訳、AIチャットボット、音声翻訳アプリ、多言語デジタルサイネージなどが含まれます。
これらのツールは、言語の壁によるストレスを軽減し、外国人観光客が求める情報を迅速に提供することを可能にします。また、観光事業者にとっては、外国人スタッフが少ない場合でも高品質な接客を実現し、問い合わせ対応の効率化や顧客満足度の向上に繋がり、最終的にリピーター獲得や集客力強化に貢献します。
WebサイトをAIで多言語化するクラウドサービス。最短3分で導入でき、インバウンド対応のウェブサイト構築を支援します。
https://autolingual.io/
国立研究開発法人情報通信研究機構（NICT）が開発した、話しかけると外国語に翻訳してくれる無料の音声翻訳アプリです。
https://voicetra.nict.go.jp/
タブレットやスマートフォンで、オペレーターによる映像通訳を提供。多言語でのリアルタイムコミュニケーションを可能にします。
https://www.mieru-tsuyaku.jp/
AIを活用した高精度な音声翻訳サービス。ビジネスシーンでの多言語コミュニケーションをサポートし、会議や商談を円滑にします。
https://solution.toppan.co.jp/newnormal/service/voicebiz.html
テキストを自然な音声で読み上げるAI音声合成サービス。多言語に対応し、コンテンツの多言語化や音声ガイド作成に活用できます。
https://ondoku3.com/ja/
AIチャットボットと有人チャットを組み合わせた多言語対応の顧客対応ツール。宿泊施設の予約や問い合わせに自動応答し、顧客体験を向上させます。
https://tripla.io/ai-chatbot/
https://www.kotozna.com/ja/in-room
店舗情報やFAQなどを一元管理し、GoogleマップやSNSなど多様なプラットフォームに正確な情報を配信。インバウンド顧客の店舗発見を促進します。
https://www.yext.com/ja/index.html
Shopifyストアを多言語化するアプリ。商品情報やページコンテンツを自動翻訳し、海外の顧客にシームレスなショッピング体験を提供します。
https://apps.shopify.com/langify?locale=ja
Googleビジネスプロフィールなどの店舗情報を一元管理・最適化。インバウンド顧客のオンライン検索からの来店を促進するMEO対策ツールです。
https://locaop.jp/
デジタルサイネージを活用し、多言語で情報発信を行うソリューション。観光施設や商業施設で、外国人観光客への情報提供を強化します。
https://www.next-system.com/kinesys
決済ソリューションは、訪日外国人観光客が自国で使い慣れたキャッシュレス決済手段を利用できるようにするSaaSです。中国のAlipay・WeChat Pay、韓国のKakao Pay・Naver Pay、台湾のJKOPAYなど、多様なQRコード決済や電子マネー、国際ブランドのクレジットカードに対応します。
これにより、外国人観光客は現金両替の手間なくスムーズに支払いができるため利便性が向上し、消費拡大に繋がります。店舗側も、多種多様な決済手段を一元管理でき、売上向上とレジ業務の効率化が図れるため、インバウンド需要を取り込む上で不可欠なツールです。
ソフトバンクグループの決済代行会社で、国内外のクレジットカード、Alipay+、WeChat Payなど主要なインバウンド決済に幅広く対応。大手から中小まで多様な業種で導入実績が豊富です。
https://www.sbpayment.jp/
GMOインターネットグループ傘下で、国内外の決済ブランドに加え、Alipay、WeChat PayなどのQRコード決済にも対応。ECサイトから実店舗まで多様なニーズに応えます。
https://www.gmo-pg.com/
アジア圏の主要QRコード決済（Alipay+、WeChat Pay、JKOPAYなど）に特化し、スマートフォン一つで手軽に導入できるのが特徴。初期費用・月額費用無料で、決済手数料のみで利用可能です。
https://univapay.com/
マーケティング・データ分析ツールは、訪日外国人観光客の行動や嗜好を把握し、効果的な集客・販促戦略を策定するためのSaaSです。
具体的には、GPSデータやSNSデータ、決済データなどを活用し、訪日外国人の国籍別・エリア別の動向、滞在時間、周遊ルート、興味関心のあるスポット、消費行動などを可視化・分析します。これにより、ターゲット層に合わせた多言語コンテンツの最適化、効果的な広告出稿、魅力的な観光ルートの提案、サービス改善などを実現できるため、顧客満足度の向上と効率的な集客に繋がります。
訪日外国人の人流データを分析し、国籍別・エリア別の行動や滞在時間を可視化。効果的な観光戦略立案と施策実行を支援するデータ分析ツールです。
https://www.datawise.co.jp/
CRMを核としたマーケティング、営業、カスタマーサービス統合プラットフォーム。見込み客獲得から顧客育成まで、インバウンド顧客との関係構築を支援します。
https://www.hubspot.jp/
ビッグデータとAIを活用し、SNS分析やアクセス解析、AIチャットボットなど多様なツールを提供。インバウンド市場のトレンド把握や顧客理解に貢献します。
https://www.userlocal.jp/
訪日外国人の行動データを詳細に分析し、国籍や地域ごとの興味・関心を深掘り。ピンポイントな情報発信とマーケティング戦略の最適化に役立ちます。
https://inbound.nightley.jp/
日本最大級の訪日外国人向けウェブメディア「MATCHA」のデータに基づき、記事閲覧データやユーザー属性を分析。効果的なコンテンツマーケティングを支援します。
https://www.getmatcha.tech/matcha-insights
トリップアドバイザー上の施設情報を分析し、口コミ評価や競合比較、ユーザーの動向を把握。インバウンド集客のための改善点発見と戦略立案を支援します。
https://www.tripadvisor.com/business/ja-jp
施設管理・運用支援ツールは、宿泊施設や観光施設が訪日外国人観光客を受け入れる際の運営業務を効率化するSaaSです。多言語対応のセルフチェックイン・チェックアウトシステム、客室や設備の故障報告・修繕管理、清掃状況のデジタル管理、スタッフ間の情報共有ツールなどが含まれます。
これらのツールは、言葉の壁がある中でもスムーズな施設利用を促進し、顧客満足度を高めます。また、アナログ業務をデジタル化することで、人手不足の解消、オペレーションコストの削減、業務の標準化を実現し、施設運営の質と効率を向上させ、外国人観光客へのより良いサービス提供を支援します。
交通事業者、観光事業者（DMO）向けのSaaS型観光交通システム。多言語対応の予約販売・会員管理機能を備えます。
https://willer-marketing.co.jp/service/system/
複数の宿泊予約サイトの在庫・料金を一括管理。自動調整で二重予約を防ぎ、業務効率化と売上向上を支援する宿泊施設向けサイトコントローラーです。
https://www.neppan.com/
宿泊施設の運営業務をクラウドで一元管理。PMS、スマートチェックイン、多言語メッセージ、清掃管理など、幅広い機能を備え、無人運営や省力化を強力にサポートします。
https://airhost.jp/
https://tabiq-lp.reqrea.co.jp/
既存のWebサイトを簡単に多言語化するソリューション。専門知識不要で、SEO対策も施された高品質な自動翻訳を提供し、インバウンド向けの情報発信を強化します。
https://wovn.io/ja/
訪日外国人観光客の増加に伴い、インバウンド集客の強化は観光業界にとって喫緊の課題となっています。SaaS（Software as a Service）は、その課題解決に貢献する強力なツールですが、闇雲に導入しても効果は得られません。ここからは、導入のポイントと選定基準を解説します。
SaaS導入を検討する上で最も重要なのは、「なぜSaaSを導入するのか」という目的を明確にすることです。「予約数を増やしたい」「多言語対応を強化したい」「業務を効率化したい」など、具体的な目標を設定しましょう。同時に、現在の集客における課題（例：多言語対応が不十分、予約システムが使いにくい、外国人からの問い合わせが多いなど）を洗い出すことで、必要なSaaSの種類や機能を絞り込むことができます。曖昧なまま導入すると、費用対効果が得られず、かえって業務が複雑になる可能性があります。
インバウンド集客において、多言語対応は必須条件です。SaaSを選定する際は、対応言語の種類（英語、中国語、韓国語はもちろん、利用ターゲット国に合わせた言語）とその質を確認しましょう。単に多言語表示できるだけでなく、翻訳の正確性、現地の文化や習慣に合わせた表現ができているか、UI/UXが多言語環境でも使いやすいかなどを重視する必要があります。特に、予約システムや問い合わせ対応ツールは、外国人にとってストレスなく利用できるかが、予約獲得や顧客満足度に直結します。
すでに利用しているPMS（宿泊管理システム）やPOSレジ、CRMなどのシステムがある場合、新しいSaaSが既存システムとスムーズに連携できるかは非常に重要な選定基準です。API連携が可能か、あるいは連携実績があるかなどを確認しましょう。連携が不十分だと、データの二重入力や整合性の問題が発生し、業務効率が低下するだけでなく、機会損失にもつながりかねません。シームレスなデータ連携は、業務効率化と顧客体験向上に貢献します。
SaaSは導入して終わりではありません。導入後の運用サポートが充実しているかも重要なポイントです。特に、外国人観光客特有の問い合わせやトラブルに対応できるサポート体制があるか、多言語でのサポートが提供されているかなどを確認しましょう。また、初期設定の支援、マニュアルの充実度、定期的なアップデート、担当者からの迅速なレスポンスなども、円滑な運用には不可欠です。困ったときにすぐに相談できる体制があるSaaSを選ぶことで、安心して利用を続けられます。
SaaSの導入費用は、月額利用料や初期費用など様々です。予算内で最大の効果が得られるか、費用対効果を慎重に検討しましょう。単に料金が安いだけでなく、提供される機能やサポート内容とのバランスが重要です。また、将来的に事業規模が拡大した際に、機能の追加や利用ユーザー数の増加に対応できるスケーラビリティがあるかどうかも確認しておくと良いでしょう。
2025年後半から2026年にかけて、訪日外国人観光客の需要はさらに多様化・高度化し、それに伴いインバウンドSaaSのトレンドも進化すると予測されます。特に以下の5つの領域で大きな変化が見られるでしょう。
最も注目されるのが、生成AIのSaaSへの本格的な組み込みです。
単なる予約管理や多言語対応だけでなく、顧客の「来日前」「滞在中」「来日後」の行動データを統合し、LTV（顧客生涯価値）を最大化するためのSaaSが強化されます。
モノ消費からコト消費への移行がさらに加速する中、体験型コンテンツに特化したSaaSが重要になります。
キャッシュレス化の進展に伴い、各国の多様な決済手段への対応が必須となります。
観光業界の慢性的な人手不足を背景に、SaaSによる自動化・省力化のニーズは高まる一方です。
インバウンドSaaSの導入を検討している方々からよく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。
主なメリットは、業務効率化、集客力向上、そして顧客満足度の向上です。多言語対応の予約・決済システムにより外国人観光客の利便性が高まり、スムーズな情報提供やコミュニケーションで顧客体験が向上します。また、データ分析機能で戦略的なマーケティングが可能になり、人手不足の中での運営を効率化できます。
インバウンドSaaSは多岐にわたります。主なものとして、予約・宿泊管理システム（PMS）、WebサイトやSNSを多言語化する多言語対応・コミュニケーションツール、AlipayやWeChat Payなどに対応する決済ソリューション、訪日客の行動を分析するマーケティング・データ分析ツール、そして施設運営を効率化する施設管理・運用支援ツールなどがあります。
最も重要なのは、自社の課題と目的に合致しているかです。多言語対応の質、既存のシステム（PMSやPOSなど）との連携性、そして導入後のサポート体制が充実しているかも確認しましょう。費用対効果と、将来的な事業拡大に対応できるスケーラビリティも考慮に入れるべきポイントです。
インバウンドSaaSの費用は、サービスの種類、機能の範囲、利用規模によって大きく異なります。多くは月額料金のサブスクリプション形式で提供され、初期費用が無料のケースもあります。複数のSaaSを組み合わせる場合は総額での費用対効果を検討しましょう。無料トライアル期間を設けているサービスも多いので、まずは試してみるのがおすすめです。
導入後は、SaaSの機能を最大限に活用するために、スタッフへの十分なトレーニングが不可欠です。また、収集したデータを定期的に分析し、マーケティング戦略やサービス改善に活かすPDCAサイクルを回すことが重要です。外国人観光客のニーズは常に変化するため、SaaSのアップデート情報に注目し、柔軟に運用を最適化していく姿勢も求められます。
2025年は、インバウンド需要が本格回復し、観光業界にとって大きな飛躍の年となるでしょう。この好機を最大限に活かすには、インバウンドSaaSの戦略的な導入が不可欠です。
単にツールを導入するのではなく、自社の課題や目的に合致したSaaSを選定し、既存システムとの連携も考慮することで、競合との差別化を図れます。多言語対応の強化、予約・顧客管理の効率化、データに基づいたマーケティングは、外国人観光客にとって魅力的な体験を提供し、リピーター獲得に繋がります。2025年後半から2026年にかけては、生成AIの活用やデータ統合によるパーソナライゼーションなど、SaaSはさらなる進化を遂げます。これらのトレンドに注目し、未来を見据えてSaaSを導入することこそがインバウンドビジネスを成功に導く鍵となるでしょう。
私たち、インバウンドマーケティングジャパンは、
訪日外国人観光客の集客支援に”とんでもなく”特化。
多言語対応のMEOやGoogle広告を活用したデジタルマーケティングの知見を生かし、訪日客の集客や来店促進、海外向けSNSの構築・運用、店舗のインバウンド対応まで、総合的な支援サービスを行っています。
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