インバウンド集客で売上を伸ばした飲食店の成功事例3選!取り入れたい集客テクニックも紹介
【目次】
急増するインバウンド需要の背景
新型コロナウイルス感染症の影響が落ち着き、日本を訪れる外国人観光客(インバウンド)の数が急速に回復しています。日本政府観光局(JNTO)のデータによると、2024年の訪日客数は年間3,686万人を超え、過去最高を大幅に更新しました*1。これは、2019年の約3,188万人を上回る数字です。なぜ今、これほどまでにインバウンド需要が急増しているのか、その背景を詳しく見ていきましょう。
まず考えられるのが円安の進行です。外国人観光客にとって日本での飲食やショッピングがこれまで以上に手頃になったことで消費意欲が高まり、大きな消費に結びついています。
また、SNSの普及は、旅行情報の主要な情報源となり、「インスタ映え」する料理やユニークな体験が国境を越えて拡散されるようになったのも大きな理由です。これにより、お店の情報が国境を越えて広がり、新たな集客に繋がる二次的な広告効果が生まれています。
さらに、これまでの団体旅行とは異なり、個人旅行者が増えたことで、彼らが日本滞在中に「何を食べ、どこで食事をするか」という消費行動が多様化しました。これにより個性的な飲食店や、その地域ならではの食文化を求めるようになったことも大きな要因です。
これらが複雑に絡み合った結果、急激に生まれたインバウンド需要がかつてないほどのチャンスを飲食業界にもたらしているのです。
*1 出典:年別 訪日外客数, 出国日本人数の推移|日本政府観光局(JNTO)
飲食店にとってのインバウンド集客のメリット
インバウンド集客は、単に客数を増やすだけでなく、飲食店にさまざまなメリットをもたらします。観光庁の調査によると、訪日外国人による旅行消費額は2024年には8兆円を突破し過去最高を記録 しました*2。内訳を見ると、1人あたりの飲食費は平均4.9万円 に上り、この消費行動は飲食業界にも大きな影響を与えています*2。ここからは、飲食店がインバウンド集客に力を入れるメリットを詳しくみていきましょう。
*2 出典:訪日外国人の消費動向 2024年 年次報告書|国土交通省観光庁
1. 客単価の向上
訪日観光客は、食事にお金をかける傾向が非常に強いです。特に、日本の文化や食材に興味を持つ層は、高付加価値なメニューや特別な体験を求めているため、客単価の大幅な向上が期待できます。例えば、高級な日本酒や地元の特産品を使ったコース料理を積極的に提案することで、通常の日本人客の客単価をはるかに上回ることも珍しくありません。
2. 新しい顧客層の獲得
インバウンド集客に成功すれば、これまでターゲットとしていなかった外国人観光客を新規顧客として取り込めます。彼らは一度良い体験をすると、リピーターになるだけでなく、家族や友人にそのお店を積極的に紹介する傾向があります。これにより、国境を越えた新たな顧客ネットワークを構築できるため、安定的な集客に繋がります。
3. SNSによる強力な拡散効果
外国人観光客は、食事の体験を写真や動画に撮り、自国のSNSに投稿することが一般的です。InstagramやTikTokなどのSNSを通じて「日本の美味しい店」として情報が拡散されると、お店の知名度が飛躍的に向上し、新たな顧客を引き寄せる二次的な広告効果が生まれます。これは、有料の広告では得られない、非常に強力な集客ツールとなります。
インバウンド集客で売上を伸ばしたモデルケース3選
ここからは、実際にインバウンド集客を成功させた飲食店の事例を3つご紹介します。それぞれの店がどのような課題を抱え、どのようなユニークな施策を実施し、どのような成果を上げたのかを具体的に見ていきましょう。彼らの成功事例から、自店に活かせるヒントを見つけ出せるはずです。
事例1:都内繁華街の居酒屋A – SNSで「和食体験」を発信
都心にあるこの居酒屋は、日本の伝統的な料理と雰囲気で知られています。インバウンド集客に力を入れるため、SNS、特にInstagramを徹底的に活用しました。
Instagramでは料理や店内の写真を投稿するだけでなく、調理風景の動画やスタッフの笑顔など、「和食を体験する楽しさ」が伝わるコンテンツを積極的に発信。さらに、#japanesefoodや#izakayaといった英語のハッシュタグを数多く使い、外国人観光客に情報が届くよう工夫しました。 また、日本食に馴染みがない外国人にも安心して楽しんでもらえるよう、お店の看板メニューを組み合わせた「おまかせコース」を導入しました。
これにより、注文のハードルが下がり、客単価が向上。 これらの施策の結果、SNSでの発信が功を奏して外国人観光客の予約も急増し、来店した観光客がさらにSNSに投稿することで、情報が国境を越えて拡散し、週末はほぼ満席の状態が続きました。
インバウンド集客が新たな収益の柱となり、結果として売上が2倍に増加しました。
事例2:京都の観光地近くにあるカフェB – 決済の多様化で利便性を追求
地元の人々に愛されるこのカフェは、観光客増加に伴うキャッシュレス決済の利用増という課題に直面していました。この問題を解決するため、クレジットカードだけでなく、中国や韓国で広く普及しているWeChat PayやAlipay、さらにはKakao Payなど、多様なQRコード決済を積極的に導入しました。
加えて、多言語での案内を徹底し、レジ横には英語、中国語、韓国語で利用可能な決済方法を明記したポップを設置。さらに、外国人観光客の多くが情報収集に利用するGoogle Mapsの店舗情報を多言語で最適化し、営業時間やメニュー、決済方法などの情報を正確に発信しました。
これらの取り組みにより、決済時のトラブルが激減し、外国人観光客の顧客満足度は大幅に向上。特にQRコード決済を好むアジア圏からの観光客が顕著に増え、売上も安定的に推移するようになりました。
事例3:北海道のラーメン店C – 地方の魅力を伝えるユニークな情報発信
北海道の地元食材を使った独自の味噌ラーメンが看板メニューのこのラーメン店は、地域の魅力を積極的に発信することで集客を成功させました。
SNSには、単にラーメンの写真を投稿するだけでなく、「北海道の雪景色とラーメン」や「新鮮な地元野菜の収穫風景」など、旅の思い出に結びつくようなストーリーを投稿。また、地元の観光協会と提携し、多言語で作成したパンフレットを観光案内所に設置することで、観光客の目に留まる機会を増やしました。
さらに、ベジタリアンやハラルに対応したメニューを開発し、多様な食習慣を持つ層の来店ハードルを下げることにも成功。
こうしたユニークな施策が功を奏し、「北海道の旅の思い出に、あのラーメンを」と訪れる観光客が増加。結果として、旅行ブログなどで「外国人にも優しい店」として紹介される機会が増え、観光客全体の約30%を占めるまでに成長しました。
【モデルケースに学ぶ】インバウンド集客を成功させるための3つのポイント
モデルケースから見えてくる、インバウンド集客を成功させるための3つの重要なポイントを解説します。これらのポイントは、外国人観光客が持つ「お店選びの基準」と「日本での体験」に深く関わっているので、ぜひ具体的な施策に落とし込んで実践してみましょう。
ポイント1:外国人観光客が「来たい」と思う情報発信
まず、外国人観光客に「この店に行きたい!」と思ってもらうための情報発信が不可欠です。彼らの多くは、SNSや口コミサイトで情報を探すため、オンライン上での存在感を高めることが最も重要となります。
具体的には、日本語だけでなく、英語や中国語、韓国語などターゲットに合わせた多言語対応を徹底しましょう。メニューはもちろん、アレルギー情報や宗教上の配慮(ベジタリアン、ハラルなど)についても分かりやすく明記することで、安心して来店できる環境を整えられます。
さらに、料理の魅力を伝える「視覚的な訴求」は、集客に直結する重要な要素です。ただ料理の写真を載せるだけでなく、調理風景の動画や店内の雰囲気、スタッフの笑顔など、「この店でしか味わえない体験」が伝わるようなコンテンツを積極的に発信してください。
InstagramやTikTokなどのSNSでは、関連性の高いハッシュタグ(例:#japanesefood, #ramen, #tokyoizakayaなど)を適切に活用することで、国境を越えた強力な集客効果が期待できます。
ポイント2:来店へのハードルを下げる工夫
次に、外国人観光客が実際に店を訪れる際の障壁を取り除くための工夫が求められます。特に、旅行中のお金に関する不安を解消することが重要です。現金を持ち歩かないことが多い彼らにとって、キャッシュレス決済への対応は必須です。クレジットカードはもちろん、中国で主流のWeChat PayやAlipay、韓国で人気のKakao Payなど、自店のターゲット層が利用する決済手段を導入することで、利便性は大きく向上し、機会損失が防げます。
また、店内での情報収集やコミュニケーションをスムーズにするために、無料Wi-Fiの提供も有効です。外国人観光客の多くは、Wi-Fi環境がないと地図アプリや翻訳アプリを使えず、不安を感じてしまいます。使用頻度が高いなら、オフラインでも使用できる翻訳デバイスを導入するのも良いでしょう。
さらに、予約システムを多言語で利用可能にしたり、オンライン予約サイトへの掲載を最適化したりすることも、スムーズな来店に繋がる重要な施策です。
言葉の壁による予約のハードルが下げられれば、計画的な来店を促すことができます。
ポイント3:顧客満足度を高める接客とサービス
最後に、来店した外国人観光客に「また来たい」と思ってもらうための接客とサービスも不可欠です。「おもてなし」という日本の文化が世界で高く評価されているように、丁寧で温かい接客は、彼らにとって忘れられない特別な体験となります。 具体的には、以下のような点を心がけましょう。
- 簡単な外国語での対応
完璧な英語でなくても、挨拶や注文の確認、お会計といった最低限のコミュニケーションが取れるだけで、お客様の安心感は格段に上がります。 - 文化的な配慮と情報提供
日本の食文化や食事のマナー(例:箸の使い方)について優しく伝えることは、彼らの日本での体験をさらに豊かなものにします。 - パーソナルな体験の提供
例えば、サプライズで誕生日を祝ったり、簡単なメッセージを添えたりするなど、一人ひとりに合わせたサービスは、感動を生み出し、強力な口コミに繋がります。 - 口コミサイトへの積極的な対応
Google Mapsやトリップアドバイザーなどのレビューサイトに寄せられる口コミには、良いレビューだけでなく、改善点や不満も含まれています。これらに真摯に耳を傾け、返信することで、お店の信頼性を高め、新規顧客の獲得にも繋がります。
インバウンド集客を行う際の3つの注意点
インバウンド集客を成功させるためには、外国人観光客を迎え入れる上での注意点にも配慮が必要です。彼らが安心して快適に過ごせるように、文化や食習慣の違いを理解し、それに対応できる体制を整えましょう。
1. 文化や食習慣への配慮
外国人観光客の文化や食習慣への理解は非常に重要です。宗教上の理由(ハラル、コーシャなど)や健康上の理由、ライフスタイル(ベジタリアン、ヴィーガンなど)から、特定の食材を口にできないお客様がいることを知っておく必要があります。メニューに食材のピクトグラムを表示したり、代替メニューを準備したりすることで、すべてのお客様が安心して食事を楽しめる環境を提供しましょう。
2. スタッフの意識改革と研修の徹底
インバウンド集客は、経営層だけでなく、現場のスタッフ全員の協力が必要です。外国人のお客様への接客方法、多言語メニューの活用、文化的なマナーの違いなど、具体的な研修を通じてスタッフの意識を高めましょう。これにより、お客様に不快な思いをさせないだけでなく、より質の高いおもてなしを提供できるようになります。
3. 口コミサイトへの丁寧な対応
外国人観光客は、お店を選ぶ際に口コミサイトを参考にすることが多いため、レビューの内容は集客に大きな影響を与えます。特に、多言語で寄せられるレビューには、サービス改善の貴重なヒントが隠されていることがあります。悪いレビューにも真摯に耳を傾け、丁寧に対応することで、お店の信頼性を高め、リピーターや新規顧客の獲得に繋がるでしょう。
インバウンド集客は売上向上に不可欠!
今日の飲食業界において、インバウンド集客はもはや特別な戦略ではなく、持続的な成長を実現するための不可欠な要素です。急増する訪日客は、単なる一過性のブームではなく、円安やSNSの普及によって生まれた新たな市場そのもの。このチャンスを最大限に活かすためには、彼らの「お店選びの基準」と「日本で求めている体験」を深く理解し、それに応じた対策を講じる必要があります。
本記事で紹介した「情報発信」「利便性」「顧客体験」の3つの視点から、自店の強みを見つけ、小さな一歩からでも外国人観光客にとって魅力的な店作りを始めてみましょう。