インバウンド集客が向いている立地・向いていない立地の違いとは?成功の鍵を握る「選定基準」を徹底解説
近年、訪日外国人観光客の急増により、多くの店舗や施設がインバウンド集客に力を入れています。しかし、「人通りは多いのに外国人が入ってこない」「地方なので集客は無理だと諦めている」といった悩みも少なくありません。実は、インバウンドにおける「良い立地」の定義は、日本人の集客とは大きく異なります。
本記事では、インバウンド集客に向いている立地と向いていない立地の決定的な違いを、外国人の行動心理や動線の観点から徹底解説します。立地に不安がある方でも実践できる逆転の集客戦略も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
はじめに:インバウンド集客における「立地」の重要性
インバウンド集客を成功させるための第一歩は、「立地」に対する固定観念を捨てることです。店舗や施設を運営する上で、立地はビジネスの成否を分ける最大の要因の一つですが、インバウンド市場においてはその評価基準が国内客向けとは大きく異なります。
国内客をターゲットにする場合、周辺人口の多さや日常的な利便性が重視されます。
しかし、訪日外国人は「生活者」ではなく「旅行者」です。彼らは独自の観光ルートや、SNS・旅前サイトで得た情報に基づいて動くため、日本人が「不便だ」と感じる場所でも、外国人にとっては「魅力的な目的地」になるケースが多々あるからです。
もちろん駅からの近さは強みになりますが、それだけが正解ではありません。
例えば、大型の観光バスが停められる駐車場の近くだったり、「次の目的地へ向かう途中にある絶景スポット」の周辺だったりと、訪日客特有の移動手段や目的に紐付いた立地こそが真の好立地となり得ます。また、デジタル上での視認性が高ければ、物理的な距離は大きな障害になりません。
自社の立地がどのような訪日客の動線上にあるかを正しく把握できれば、「どの国の人に」「どのタイミングで」アプローチすべきかが明確になります。
的外れな広告投下を防ぎ、リソースを特定のルートや層に集中させることで、最小限のコストで最大限の集客効果を得ることが可能になるのです。
インバウンド集客に「向いている立地」の共通点
インバウンドで「勝てる立地」には、訪日客の移動動線と行動心理に裏打ちされた共通点があります。以下の4つのポイントに当てはまる場合、強力な集客ポテンシャルを秘めています。
有名観光ルート(ゴールデンルート)の経由地
東京・箱根・富士山・名古屋・京都・大阪を結ぶ「ゴールデンルート」は、初めて日本を訪れる外国人の多くが通るインバウンドのメインストリートです。 このルート上の都市や、主要な新幹線停車駅の周辺は、黙っていても「外国人観光客が目の前を通り過ぎる」状態にあります。
特に「成田・羽田空港からの入り口」や「各都市を繋ぐ中継地点」は、宿泊や食事の需要が非常に高く、集客の難易度が最も低いエリアと言えます。
二次交通の利便性が高い場所
インバウンド客の移動は「電車」か「観光バス」が中心です。
- 鉄道利用
主要駅から徒歩圏内、あるいは迷わず辿り着ける直線的なルート。 - 団体客
「大型バスの乗降場所や駐車場」が近いこと。
特に地方において、駅から離れていてもバスツアーの立ち寄りポイントに近い場所は、個人客よりも効率的に大量の送客が期待できる「隠れた好立地」となります。
SNS映え・フォトジェニックな景観が近くにある
「目的地」そのものではなくても、有名な撮影スポットへの道中にある場所は非常に有利です。
例えば、富士山が見えるコンビニや、アニメの聖地となった踏切の近くなどがこれに当たります。
外国人は「写真を撮る」という目的のために移動するため、その撮影スポットから徒歩5分圏内にある店舗は、「ついで寄り」による高い認知と集客が期待できます。
外国人向けの宿泊施設(ホテル・民泊)が密集している
宿泊施設の周辺は、夜間や早朝の消費が活発になるエリアです。
多くの外国人観光客は、ホテル周辺で「夜遅くまで開いている居酒屋」や「朝早くから開いているカフェ」「24時間営業のドラッグストア」を探しています。
住宅街の中であっても、近くに人気のゲストハウスや外資系ホテルがある場合は、宿泊客をターゲットにした特化型の戦略が有効です。
インバウンド集客に「向いていない立地」とその要因
一方で、どれだけサービスが優れていても、立地上の制約により集客が困難なケースもあります。以下の特徴に当てはまる場合は、集客手法を根本から見直す必要があります。
観光動線から外れた「完全な住宅街」
日本人が多く住んでいても、観光ルートから完全に孤立した住宅街は苦戦を強いられます。
外国人は基本的に「知らない場所」には行きません。
案内板やSNSでの露出がない住宅街では、看板を見てふらっと立ち寄る「フリー客」がほぼゼロになるため、WEB上で「指名買い」されるほどの強力なブランド力や体験価値がない限り、インバウンド集客は非常に厳しくなります。
言語・インフラのハードルが高い難アクセス地
「駅からバスを乗り継ぎ、さらに徒歩15分」といった場所や、「タクシーでしか行けないが、運転手に行き先を伝えるのが難しい」場所は、外国人にとって心理的な壁が非常に高くなります。
無料Wi-Fiが届かない、公共交通機関の電子マネーが使えない、といったインフラ不足も重なると、一度は訪れても「不便な場所」としてネガティブな口コミを書かれるリスクも孕んでいます。
ターゲット国籍のニーズとミスマッチな地域
立地の「雰囲気」とターゲット層のニーズがズレている場合も、インバウンド集客に向いていません。
例えば、「日本の大都会を体験したい」と考えている欧米客に対して、高層ビル群の中にある和食店を勧めても、彼らが求めている「禅」や「伝統」を感じにくいため、満足度が上がりません。
その土地が持つイメージと、外国人が日本に求めている価値が一致しているかを見極める必要があります。
競合が多すぎる「レッドオーシャン」エリア
京都の清水寺周辺や東京の浅草など、誰もが知る観光地は集客しやすい反面、競合も無数に存在します。
こうしたエリアで、特別な強みや多言語対応の徹底といった差別化ができていない場合、「単なる通りすがりの店」の一つとして埋もれてしまい、集客コストばかりがかさむ結果になりかねません。
【決定的な違い】国内客とインバウンド客の「立地感」のズレ
集客を成功させるためには、日本人の感覚で「不便だ」「遠い」と決めつけるのは禁物です。国内客と訪日客では、場所に対する価値観や情報の探し方が根本的に異なります。
日本人の「遠い」と訪日客の「歩ける距離」のギャップ
日本人(特に都市部の居住者)にとって、駅から徒歩15分は「遠い」と感じる距離かもしれません。しかし、多くの訪日外国人にとって、徒歩15〜20分は十分に「歩ける距離(Walking distance)」です。 旅行中は1日に2万歩以上歩くことも珍しくない彼らにとって、途中の街並みや風景が日本らしさを感じさせるものであれば、歩くこと自体が観光コンテンツになります。
駅から離れていることを欠点とするのではなく、「静かな住宅街を抜ける散歩ルート」としてポジティブに発信することで、評価を逆転させることが可能です。
「どこにあるか」よりも「どう見えているか」:情報の接点
国内客は「食べログ」や「ホットペッパー」などのポータルサイトや、通りがかりの直感で店を選びますが、訪日客はGoogleマップ、TripAdvisor、Instagram、RED(小紅書)といった世界規模のプラットフォームを駆使します。 この違いは非常に大きく、物理的な立地が「裏路地の目立たない場所」であっても、デジタル上の立地(MEO対策やSNSの露出)で上位を獲得していれば、そこは訪日客にとっての「一等客」となります。
逆に、大通りに面していてもデジタル上で見つからなければ、彼らの世界には存在していないも同然なのです。
「目的地化」できるコンテンツが物理的制約を凌駕する
国内客は「近場で済ませたい」という利便性を重視する傾向がありますが、訪日客は「日本でしかできない体験」のためなら、移動時間を惜しみません。
例えば、秘境にある温泉宿、人里離れた工房での伝統工芸体験、特定の専門店でしか味わえない希少な食事などは、わざわざ数時間かけて訪れる「目的地(デスティネーション)」になります。
「わざわざ行く価値(Why travel there?)」を明確に提示できれば、交通の便が悪いことは「隠れ家感」や「特別感」という付加価値に昇華させることができます。
立地が「向いていない」場合の逆転集客戦略
「駅から遠い」「観光ルートから外れている」といった不利な立地であっても、戦略次第でインバウンド客を呼び込むことは十分に可能です。ここでは、物理的なマイナスをカバーし、強みに変えるための4つの具体的な戦略を解説します。
「体験型コンテンツ」で目的地化する
単にモノを売るだけの店舗から、その場所でしか得られない特別な「コト消費」を提供する拠点へとアップデートすることが、物理的な立地のハンデを克服する最大の鍵となります。
例えば飲食店であれば、単に食事を出すだけでなく「伝統衣装を着用して自分でお寿司を握る体験」を提供したり、物販店であれば「熟練職人の技術を間近で見学できる工房ツアー」を企画したりといった工夫が考えられます。
訪日客にとって、そのサービス内容や体験自体が旅の主目的(デスティネーション)になれば、アクセスの不便さは「特別な体験に辿り着くための贅沢な過程」へとポジティブに変換され、集客の強力な武器になります。
SNS・Googleマップを徹底的に活用したデジタル立地の確立
店舗の前を通る物理的な人通りに期待するのではなく、スマートフォンの検索画面上での視認性を高める「デジタル一等地の確保」に全力を注ぐ必要があります。具体的にはGoogleマップでのMEO対策が不可欠であり、英語や中国語などの主要言語で店舗情報を正しく登録するだけでなく、外国人ユーザーによる写真付きのポジティブなレビューを積極的に増やす施策を講じましょう。
また、InstagramやRED(小紅書)などのSNSを通じて、思わず共有したくなるようなフォトジェニックな内外装やメニューを発信し続けることで、世界中の潜在客に「画面で見つけたあの場所へ直接行きたい」という強い動機付けを生み出し、場所の制約を超えた集客が可能になります。
送迎サービスの導入やアクセスの詳細図解
「行きにくい」という心理的ハードルは、交通手段の提供や情報発信の工夫によって解消できます。最寄り駅からの無料送迎シャトルバスの運行や、近隣のタクシー会社と提携した訪日客専用の「定額送迎プラン」を導入するなど、迷わず確実に店舗へ到着できる手段を用意しましょう。
また、アクセスの案内についても、文字情報だけではなく、駅から店までの道のりを実際に歩いて撮影した「ルート案内動画」や、目印となる建物を写真で示した多言語対応のアクセスマップをWEBサイトや予約確認メールに添付します。
外国人が最も不安に感じる「不慣れな土地で迷うことへの恐怖」を丁寧に取り除くことが、最終的な来店率の向上に直結します。
インフルエンサー・ガイドとの提携
自社単独での発信力に頼るだけでなく、すでに特定の外国人コミュニティから強い信頼を得ている「プロフェッショナル」の力を借りる戦略も非常に有効です。特定のテーマ(日本酒、伝統工芸、サイクリングなど)に特化したツアーオペレーターや個人ガイドに対し、自社の体験価値を直接プレゼンテーションし、彼らが企画する観光ルートの公式な立ち寄り先として組み込んでもらえるよう働きかけましょう。
同時に、フォロワー数以上に特定の国や嗜好を持つ層に強い影響力を持つマイクロインフルエンサーを招待し、彼らの独自の視点でリアルな体験を多言語で発信してもらうことで、「知る人ぞ知る穴場スポット」としての認知を急速に広めることができます。
まとめ:自社の立地を活かしたインバウンド戦略を
インバウンド集客の成否を分けるのは、単なる物理的な条件ではなく、その立地の特性を正確に把握し、訪日客のニーズに適応させる戦略の有無にあります。 まずは自社の立地を客観的に評価してみましょう。
もし「向いていない立地」に該当したとしても、それは決して諦める理由ではなく、「特定のターゲットを絞り込み、独自の価値を磨くべき」という重要なサインです。
物理的な不利をデジタル上の発信力や体験型コンテンツで補うことで、世界中からファンを呼び込むことは十分に可能です。まずは現状のポテンシャルを冷静に見極め、自社の強みを最大化させる独自の戦略を構築することから始めましょう。
