訪日外国人をお店のファンにする!飲食店が知っておくべき「おもてなし」と「集客」の秘訣
【目次】
今、訪日外国人へのおもてなしが重要な理由
日本政府観光局の発表によると、訪日外国人観光客数は年々増加の一途をたどり、インバウンド市場は今や日本経済を支える重要な柱となっています*1。この流れの中で、「食」は外国人観光客が日本を訪れる最大の動機のひとつです。彼らの多くが、ガイドブックには載っていないような地元の飲食店で、本物の日本の味と文化を体験したいと強く願っています。
しかし、単に美味しい料理を提供するだけでは、期待を超える感動を与えることは難しいでしょう。
本当の価値は、食事そのものだけでなく、お店での滞在全体を通して感じられる「特別な体験」にあります。例えば、言葉の壁を越えて伝わる温かい歓迎、細やかな気配り、そして日本の食文化に触れる驚きや発見です。このような心に響くおもてなしは、単なる「食事」を「忘れられない思い出」へと昇華させます。
この「忘れられない思い出」こそが、お店の未来を左右する鍵です。
感動した観光客は、帰国後にSNSなどを通じてその体験を積極的に発信します。写真や動画、そして熱のこもった口コミは、お店のブランドイメージを高め、世界中の潜在顧客にリーチできる「最強の宣伝ツール」になります。
つまり、 一人ひとりのゲストを大切にすることが、持続的な集客とお店の成長が実現させるのです。
*1 出典:年別 訪日外客数, 出国日本人数の推移|JNTO(日本政府観光局)
顧客体験を向上させるおもてなしの3つのステップ
おもてなしは、来店時から始まるものではありません。外国人観光客がお店を知り、実際に訪れ、そして帰国した後も、彼らの心に残り続ける一連の体験です。この3つのステップに沿って、お客様が感動するおもてなしの秘訣を具体的に見ていきましょう。
ステップ1:来店前|情報提供と予約のスムーズ化
外国人観光客は、旅行計画の段階でスマートフォンを駆使して情報収集を行います。そのため、お店のオンライン情報を多言語で、そして魅力的に発信することが非常に重要です。
- 多言語対応のオンライン情報
- Googleマップでの情報充実
営業時間、定休日、住所、電話番号に加え、お店のメニューや写真、価格帯を多言語で掲載しましょう。ユーザーのレビューにも積極的に返信することで、お店の信頼度が向上します。 - Instagram、Facebookの活用
美しい料理の写真や動画を投稿し、キャプションを英語などの多言語で併記します。「#tokyofood」「#japanesefood」「#ramen」といったハッシュタグを効果的に使うことで、外国人ユーザーに発見されやすくなります。 - メニューの多言語化
メニューをただ翻訳するだけでなく、料理の写真を豊富に載せ、食材や調理法を簡潔に説明することで、言葉が分からなくてもどんな料理か直感的に理解できるようになります。
- Googleマップでの情報充実
- 予約システムの導入
- オンライン予約サイトの活用
「TableCheck」や「OpenTable」など、海外のユーザーが利用しやすいオンライン予約サイトに登録することで、電話予約のハードルを解消できます。 - SNSのDM活用
InstagramやFacebookのダイレクトメッセージ(DM)を通じて、簡単な予約を受け付ける方法も有効です。
- オンライン予約サイトの活用
ステップ2:来店時|心に残る接客とサービスの提供
お店に足を踏み入れた瞬間から、外国人観光客の体験が始まります。言葉が完璧でなくても、心からの歓迎の気持ちを伝えることが最も大切です。
- 多言語対応できる環境づくり
- 指差しシートや多言語メニューの活用
簡単な日本語と英語を併記した指差しシートは、注文をスムーズにするだけでなく、安心感を与えます。 - 簡単な英会話フレーズの準備
「いらっしゃいませ(Welcome)」や「美味しいですか?(Is it delicious?)」など、簡単な挨拶や声かけをスタッフ全員が使えるように準備しておきましょう。 - 翻訳アプリの活用
複雑な質問には、スマートフォンやタブレットの翻訳アプリを積極的に使いましょう。対面での会話に特化した翻訳アプリも増えており、スムーズなコミュニケーションを助けます。
- 指差しシートや多言語メニューの活用
- 食事を楽しませる工夫
- 食文化の簡単な紹介
「お箸はこうやって使うんですよ」と身振り手振りで伝えたり、「この料理は味噌と出汁がポイントなんです」と簡単な説明を加えたりすることで、より深く日本の食文化を体験してもらえます。 - 宗教・アレルギーへの配慮
来店時にアレルギーの有無を確認したり、ハラールやベジタリアンに対応できるメニューがあれば、事前にオンラインで明示しておくと安心です。
- 食文化の簡単な紹介
- 心地よい空間の提供
- BGMと照明
落ち着いたBGMや、料理が美しく見える照明は、居心地の良さを高めます。 - 清潔感
特にトイレは、清掃が行き届いているか、使い方が多言語で説明されているかなど、細部まで配慮することで、お店全体の印象が向上します。
- BGMと照明
ステップ3:退店後|感謝と再来店を促すアクション
お店を出た後も、おもてなしは続きます。小さな気遣いが、次の来店や口コミにつながる大きな力になります。
- 感謝の気持ちを伝える
- 感謝の言葉と笑顔
「Thank you!」と笑顔で元気にお見送りをしましょう。もし可能であれば、「またお越しください(Please come again!)」と一言添えるだけで、心温まる印象を残せます。
- 感謝の言葉と笑顔
- 再来店につながるアクション
- SNSでのタグ付けを促す
「#〇〇(お店の名前)」のハッシュタグを付けて投稿してもらえるよう、店内に掲示したり、伝票に記載したりするのも良いアイデアです。 - 次回使えるクーポンや記念品
次回使える割引券や、お店のロゴ入りポストカードを渡すことで、再来店のきっかけを作ります。これは、単なる販促ではなく、お店での体験を思い出してもらうきっかけにもなります。
- SNSでのタグ付けを促す
小規模な飲食店でもできる!3つのおもてなし
完璧な多言語対応や大々的なプロモーションは、費用や人手の問題から難しいと感じるかもしれません。しかし、小規模な飲食店でもすぐに実践でき、大きな効果を生むおもてなしの基本が3つあります。それは、「多言語メニューの作成」「SNSでの情報発信」「スタッフ教育」です。これらの取り組みは、お客様とのコミュニケーションを円滑にし、お店の魅力を効果的に伝えるための基盤となります。
多言語メニューを作成する
多言語メニューの作成は、専門業者に依頼しなくても、今や無料かつ手軽にできるツールが多数あります。重要なのは、「翻訳するだけ」ではなく、「伝える」ことに焦点を当てることです。多言語メニューを作成するときは、直訳に頼らず、料理をイメージしやすい簡単な説明を加えて、適切な単語を選びましょう。
「ラーメン」や「寿司」など、世界共通語になっている単語はそのまま使うのがベターです。
また、料理全体が美しく、特徴が分かる高品質な写真の掲載も欠かせません。
辛さやアレルギーなど、特に注意が必要な情報にはアイコンを付けるなど、ビジュアルで訴える工夫も有効です。
さらに、「この料理は、熱いうちに食べてください」といった食べ方や文化的背景を添える一言は、単なる料理の説明を超えた、付加価値の高いおもてなしとなります。
積極的にSNSで情報を発信する
SNSは、お店の魅力を伝え、ファンを増やすための強力なツールです。外国人観光客にリーチし、お店のブランドイメージを高めるには、投稿の質と頻度が重要になります。自店のターゲットとなる国や地域で広く使われているSNSを把握し、そこに集中して発信することが重要です。
例えば、欧米圏はInstagramやFacebook、中華圏はWeiboやXiaohongshu、韓国はNaver Blogなどが影響力を持っています。
投稿内容では、料理の仕込み風景や食材の産地など、普段見られない「舞台裏」を見せたり、料理の「ストーリー」を添えたりする工夫が効果的です。
また、お客様がお店について投稿した写真や動画を、承諾を得てリポスト(再投稿)することで、お店のファンコミュニティを形成し、信頼性を高めることができます。
投稿のキャプションは、日本語だけでなく、英語を併記しましょう。
スタッフ教育
完璧な英語力は必要ありません。大切なのは「伝えよう」という気持ちです。朝礼で「いらっしゃいませ(Welcome)」や「美味しかったですか?(Is it delicious?)」など、その日使う簡単なフレーズを全員で声に出して練習するだけでも、お客様とのコミュニケーションが円滑になります。
また、どのスタッフでも指差しシートを使って注文が取れるようにマニュアル化することで、言葉の壁を感じさせない工夫が重要です。
さらに、外国人観光客への接客で上手くいったこと、喜んでもらえたエピソードなどをスタッフ間で共有し、成功体験を積むことで、モチベーションを高め合い、より良い接客へとつながります。
おもてなし力向上に使える無料ツール・アプリ4選
ここからは、お店のおもてなし力を手軽に向上させるための、無料で使える便利なツールやアプリを4つご紹介します。
Google 翻訳

Google 翻訳は、お客様との円滑なコミュニケーションをサポートする強力なツールです。スマートフォンやタブレットにインストールしておけば、テキストや手書き文字の翻訳はもちろん、カメラで写したメニューをリアルタイムで翻訳したり、音声での会話を自動で通訳したりすることも可能です。言葉の壁を感じた際にすぐに活用でき、お客様に安心感とスムーズなサービスを提供できます。
https://translate.google.com/
Canva (キャンバ)

Canvaは、デザインの専門知識がなくても魅力的なビジュアルコンテンツを簡単に作成できるグラフィックデザインツールです。豊富なテンプレートや写真、イラストを活用して、メニューやポスター、SNS投稿画像をおしゃれに仕上げることができます。
多言語対応したメニューも、視覚的に訴えるデザインで作成することで、料理の魅力を最大限に引き出し、お客様の期待を高めます。
Google ビジネス プロフィール
Google ビジネス プロフィールは、お店の情報をGoogle マップ上で無料で管理・発信できるサービスで、外国人観光客への情報提供に欠かせません。営業時間やメニュー、価格帯、写真などの基本情報を多言語で充実させることで、「ramen tokyo」「sushi near me」といった検索キーワードで外国人ユーザーに発見されやすくなります。また、お客様からのレビューに丁寧に返信することで、お店の信頼度を向上させ、来店を促すことができます。
おもてなしガイド for Business
ヤマハが提供するこの無料アプリは、日本語を多言語に翻訳し、音声で再生する機能が特徴です。事前に登録されている「いらっしゃいませ」「こちらへどうぞ」といった定型文をタップするだけで、正確な発音で多言語での音声再生が可能です。さらに、日本語での発音をカタカナで表示してくれるため、スタッフが発音の練習をするのにも役立ち、スムーズな接客をサポートします。
「おもてなしガイド for Biz」をApp Storeで
おもてなしガイド for Biz – Apps on Google Play
まとめ:心を込めた「おもてなし」が、未来の顧客を生み出す
外国人観光客に「また来たい」と思わせる秘訣は、特別な設備や完璧な英会話力ではありません。最も大切なのは、一人ひとりのゲストを大切に思う「心からのおもてなし」です。多言語メニューやSNSでの発信といった情報提供の工夫から、お店にいる間も、そして帰国した後も心に残るような温かいコミュニケーションを心がけましょう。これらが積み重なることで、単なる「顧客」は「お店のファン」となり、国境を越えた「再来客」や「口コミ」を生み出す強力な味方へと変わっていきます。
最初は慣れないかもしれませんが、外国人観光客への対応を特別なことと捉える必要はありません。すべてのお客様に丁寧に対応することこそが「おもてなしの基本」です。ぜひ基本を大切に、この記事で紹介したノウハウをできることから一つずつ実践してみてください。