外国人観光客が殺到!最新トレンドから見る飲食店のためのインバウンド集客戦略を解説
【目次】
外国人観光客数の最新トレンドと行動様式
日本を訪れる外国人観光客は増加の一途をたどり、彼らの行動様式やニーズも多様化しています。ここからは、最新データから見る訪日客のトレンド、彼らが何を求め、どのように情報を得ているのかを詳しく解説します。
直近の外国人観光客数の推移と回復状況
2024年の年間データによると、日本の外国人観光客数は過去最高となる年間約3,600万人に達しました。これは、コロナ禍前の2019年の約3,188万人を大きく上回るもので、観光需要が完全に回復したことを示しています。この驚異的な回復は、以下のような複数の要因によって後押しされました*1。
- 歴史的な円安の進行
日本の円安は、外国人観光客にとって日本の旅行費用を相対的に安価にし、ショッピングや食事、宿泊といった消費活動を活発にさせました。高級な食体験や高品質な日本製品への需要が高まり、「買い物」と「食」を目的とした高単価な旅行者層の増加に繋がっています*2。 - アジア圏を中心とした渡航制限の撤廃
特に中国や韓国、台湾といった東アジアからの渡航制限が完全に撤廃されたことで、地理的な近さを活かした短期間の旅行者が急増しました。これにより、訪日客数全体の数字が大きく押し上げられています。 - 日本への関心の高まり
コロナ禍の間も、SNSや動画プラットフォームを通じて日本の文化やアニメ、食への関心は世界的に高まり続けていました。渡航が可能になったことで、これらの潜在的な需要が一気に顕在化したと言えます。
*1 出典:JNTO 2024年12月および年間推計値 報道発表資料
*2 出典:訪日外国人の消費動向 2024年 年次報告書 |観光庁 P4.【図表】国籍・地域別にみる訪日外国人1人当たり旅行支出と旅行消費額
どの国・地域の観光客が増えているか?
日本のインバウンド市場を牽引しているのは、地理的に近い韓国、台湾、中国などの東アジアからの観光客です。特に韓国からの訪日観光客は、2024年通年で約845万人と圧倒的な割合を占めており、地方都市でもその姿を多く見かけるようになりました*3。また、台湾、中国からの観光客も、団体旅行の再開や個人の自由な旅行が活発化し、大きな伸びを見せています。
一方で、注目すべきはアメリカ、オーストラリア、ヨーロッパからの観光客の動向です。これらの国・地域からの訪日客は、人数こそ東アジアに比べて少ないものの、一人当たりの旅行消費額が非常に高い(*1)という特徴があります。彼らは長期滞在の傾向が強く、日本の伝統文化や地方の自然体験、質の高い食体験に大きな関心を持っています。そのため、高単価なコース料理や、特定の食材にこだわった専門店などは、これらの観光客をターゲットとすることで大きな収益アップが見込めます。
*3 出典:2024年 国籍別 / 目的別 訪日外客数 (確定値)
訪日客が「日本」に求めるものとは?
訪日外国人にとって、「食」は旅行の最大の目的の一つです。彼らが求めるのは、単なる食事ではなく「日本ならではの体験」です。これは、単に美味しいものを食べるという行為を超え、日本の文化や歴史、生活様式を深く体験したいという欲求に基づいています。具体的には、以下のような食体験が人気を集めています。
- 伝統的な食文化の体験
寿司、天ぷら、蕎麦といった伝統的な和食はもちろん、茶道や懐石料理といった格式高い食文化への関心も高まっています。特に、目の前で職人が調理する様子を見ることができるカウンター席は、「ライブパフォーマンス」として人気が高く、料理そのものだけでなく、職人の技や食材へのこだわりを五感で楽しむことができます。 - 地域の食とローカル体験
都市部だけでなく、地方に足を運び、そこでしか味わえない郷土料理や地元の食材を使った料理を求める観光客が増加しています。地元の人が集う居酒屋での食事や、漁港の近くで新鮮な魚介類を味わう体験は、日本の日常に触れる貴重な機会となります。また、B級グルメ(例:たこ焼き、お好み焼き、ラーメン)の食べ歩きも、手軽に日本の食文化を楽しめるアクティビティとして人気です。 - 食の多様性への配慮
訪日観光客の多様化に伴い、食のニーズも細分化しています。アレルギーを持つ人、ベジタリアン、ビーガン、ハラルといった宗教上の理由や健康上の理由から特定の食材を避ける人々のために、代替メニューや専用のメニューを準備することは、集客の重要な鍵となります。これらの配慮は、飲食店への信頼感を高め、口コミを通じてさらなる集客に繋がります。
訪日客が参考にしている情報源
外国人観光客が旅行の計画を立てる際、そして滞在中に情報を得るために、非常に重要な役割を担っているのがデジタルプラットフォームです。彼らは、単に店舗を探すだけでなく、その雰囲気や他の利用者のリアルな声を知るために、以下のツールを積極的に活用しています。
1. SNS(Instagram、TikTok、YouTube)
特に若い世代や欧米からの観光客に顕著なのが、InstagramやTikTokといったビジュアル重視のSNSの利用です。彼らは「#japantravel」「#tokyofood」「#kyotoeats」のようなハッシュタグを使って、魅力的な料理の写真や動画を検索し、行きたいお店のリストを作成します。YouTubeでは、日本の食体験や旅行記をまとめた動画が人気で、店の雰囲気や料理の音、店員の対応まで、より詳細な情報を得ています。
2. 口コミサイト・地図アプリ
来店後、多くの外国人観光客はGoogleマップ、TripAdvisor、Yelpといった口コミサイトにレビューを投稿します。これらのサイトは、旅行者にとって信頼性の高い情報源となっており、次の旅行者がお店を選ぶ際の決定打となります。
特に重視されるのは、写真付きのレビューや多言語での評価、料理の点数などです。
3. 旅行ブログと専門サイト
特定のテーマ(例:ヴィーガン・ベジタリアン、ラーメン、寿司など)に特化した旅行ブログや専門サイトも、熱心なファン層を持つ訪日客にとって重要な情報源です。これらのサイトは、よりニッチで専門的な情報を求めている層に響きやすい傾向があります。
飲食店が今すぐ取り組むべき集客対策【オンライン編】
インバウンド集客を成功させるためには、彼らが情報収集に利用するオンラインツールを最大限に活用することが不可欠です。以下に、すぐに実践できる具体的な対策を項目ごとに解説します。
1. Webサイト・SNSの多言語対応
外国人観光客にとって、WebサイトやSNSは店舗の「顔」です。第一印象を良くし、安心して来店してもらうためには、多言語での情報提供が欠かせません。
- Webサイトの多言語化とSEO対策
公式サイトに英語、中国語(簡体字)、韓国語など主要な言語のページを用意しましょう。料理の魅力や店のこだわりを丁寧に翻訳するだけでなく、外国人観光客が検索しそうなキーワード(例: “ramen Shinjuku Halal”, “sushi bar Kyoto”)を意識したページ構成にすることで、検索エンジンからの流入を増やせます。翻訳ツールに頼るだけでなく、専門の翻訳サービスを利用して自然な表現にすることも重要です。 - InstagramとTikTokの活用
Instagramは「視覚的なメニューブック」として、TikTokは「体験を伝える動画ツール」として強力な集客ツールです。料理の美しい写真や動画を定期的に投稿し、多言語のハッシュタグ(例: #japantrip #tokyofoodie #sushilover)を効果的に使用しましょう。特に、調理風景や店内の賑わい、笑顔のスタッフなど、「日本の食文化を体験する楽しさ」が伝わるコンテンツは反響が大きいです。 - Googleビジネスプロフィールの充実
多くの外国人観光客はGoogleマップを使って飲食店を探します。Googleビジネスプロフィールの情報を常に最新に保ち、営業時間、定休日、連絡先、そして特にメニューを多言語で掲載しましょう。高画質の写真を豊富にアップロードすることも重要です。また、寄せられた口コミには積極的に、そして多言語で返信することで、顧客とのエンゲージメントを高め、信頼感を築くことができます。
2. オンライン予約・決済システムの導入
言語の壁を感じずにスムーズな予約・決済ができる環境は、外国人観光客の利便性を大きく高めます。
- 予約システムの導入と活用
WebサイトやSNSから直接予約できるシステムを導入しましょう。特に、海外のユーザーが使い慣れている予約サイト(例: TableCheck、OMAKASE、OpenTableなど)への登録は、集客の窓口を広げるために有効です。予約時にアレルギーやベジタリアン対応の有無を確認できる機能を設けることで、来店時のトラブルを未然に防ぎ、顧客満足度を向上させることができます。 - キャッシュレス決済の多様化
現金を持たない外国人観光客が増えているため、クレジットカード(Visa、Mastercardなど)だけでなく、QRコード決済(Alipay、WeChat Pay)や電子マネーへの対応は必須です。主要な決済サービスを網羅することで、決済時の機会損失を防ぎ、スムーズなサービス提供が可能になります。導入時には、どの決済サービスに対応しているかを店内や公式サイトに明確に表示しておきましょう。
飲食店が今すぐ取り組むべき集客対策【店舗運営・サービス編】
店舗でのサービスやオペレーションを改善することは、オンラインでの集客を成功させるための土台となります。顧客満足度を高め、良い口コミに繋げるための具体的な方法を解説します。
1. 多言語メニューと写真メニューの準備
外国人観光客が安心して注文できる環境を整えることは、顧客満足度を向上させる上で最も重要です。
- 写真メニューの作成
言葉の壁を乗り越える最も効果的な方法は、写真やイラストを多用したメニューブックを作成することです。料理名の下に英語、中国語、韓国語などで料理の概要を記載し、主要な食材(例: Chicken, Pork, Beef, Shrimp)や調理法(例: Fried, Grilled, Steamed)を明記することで、アレルギーや宗教上の理由を持つ顧客でも安心して注文できます。メニューにQRコードを付けて、スマートフォンで多言語のメニューにアクセスできるようにするのも良い方法です。 - 食材・アレルゲンの明記
ベジタリアン、ビーガン、ハラール対応のメニューがある場合は、メニューに専用のアイコンやマークを表示しましょう。例えば、葉っぱのアイコンはベジタリアン、Vマークはヴィーガンといったように、国際的に理解されやすい記号を利用することで、顧客は直感的にメニューを選べます。
2. Wi-Fi環境の整備と店内案内
Wi-Fiは、外国人観光客にとって生命線とも言える重要なインフラです。彼らはWi-Fiを使って地図を確認したり、SNSに投稿したり、翻訳アプリを使ったりします。
- 無料で利用できるWi-Fiの提供
店内で誰でも無料で利用できるWi-Fi環境を整備しましょう。Wi-Fiルーターと光回線の契約だけで簡単に導入できます。 - SSIDとパスワードの分かりやすい掲示
Wi-FiのSSIDとパスワードは、メニューブックやテーブル、レジ横など、目につきやすい場所に多言語で掲示してください。A4サイズのPOPを作成するだけでも、顧客はストレスなくWi-Fiを利用できます。
3. 英語対応が可能なスタッフの育成
すべてのスタッフが流暢に話す必要はありません。基本的なコミュニケーションが取れるだけでも、顧客は大きな安心感を得られます。
- 最低限の接客フレーズの共有
「いらっしゃいませ(Welcome)」、「ご注文はお決まりですか?(Are you ready to order?)」、「お会計はご一緒ですか?(Together or separate?)」など、接客でよく使うフレーズをスタッフ全員で共有し、練習しておきましょう。 - 翻訳アプリの活用
複雑なコミュニケーションが必要な場合は、DeepLやGoogle翻訳といった翻訳アプリを積極的に活用しましょう。スマートフォンを指差しながら対話することで、お互いの意思疎通が円滑になり、コミュニケーションのストレスを軽減できます。
接客に役立つ翻訳アプリや翻訳ツールはこちらの記事で紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。
訪日外国人の「言葉の壁」を解消する!無料翻訳アプリ・多言語対応ツールの活用法
集客を加速させるための外部連携戦略
オンラインでの情報発信に加え、外部のパートナーと連携することで、より広範囲の外国人観光客にアプローチし、集客効果を飛躍的に高めることができます。
1. 旅行会社・ホテルとの連携
多くの外国人観光客は、旅行会社が企画するパッケージツアーや、宿泊するホテルが提供する情報をもとに飲食店を決めます。これらのチャネルを戦略的に活用しましょう。
- 近隣のホテル・ゲストハウスへの営業
周辺のホテルやゲストハウスに、自店の魅力をまとめた多言語対応のパンフレットやチラシを置いてもらいましょう。パンフレットには、料理の魅力的な写真、場所、営業時間、対応可能な言語、決済方法などを分かりやすく記載します。ホテルによっては、フロントスタッフに直接お店を紹介してもらうよう依頼することも可能です。 - 旅行会社のツアーへの組み込み
旅行会社が企画する「食」をテーマにしたツアーや、地域文化体験ツアーの食事場所として、自店を選んでもらえるようアプローチしましょう。旅行会社の担当者は、顧客のニーズに合わせたユニークな体験を求めています。例えば、「江戸時代から続く老舗の味」や「旬の食材を使った創作料理」といった明確なコンセプトを提示することで、他店との差別化を図ることができます。
2. インフルエンサーとの協業
SNSを主な情報源とする外国人観光客にとって、インフルエンサーの推奨は絶大な影響力を持っています。
- ターゲット層に合わせたインフルエンサー選定
まず、自店がターゲットとしたい国の観光客(例:アメリカ、台湾、タイなど)や、食のジャンル(例:ラーメン、寿司、ヴィーガン料理など)に特化したインフルエンサーをSNSで探します。単にフォロワー数が多いだけでなく、エンゲージメント率が高く、質の高いコンテンツを作成しているインフルエンサーを選びましょう。 - 体験型PRの提案
単に「宣伝してください」と依頼するのではなく、「料理体験」や「店主との交流」といった特別な体験を提案しましょう。例えば、インフルエンサーに料理の作り方を教えたり、こだわりの食材について熱く語ったりする様子を動画にしてもらうことで、単なる広告ではない、よりリアルで魅力的なコンテンツが生まれます。PR投稿の際には、「#PR」「#ad」などの表記を忘れずにしてもらうよう依頼し、透明性を確保しましょう。
インフルエンサーを活用したプロモーション施策については、こちらの記事でも解説しています。
飲食店インフルエンサーPRの新潮流!「定額制」で始めるインバウンド集客
まとめ:外国人観光客集客の戦略を考えてみよう
これまで見てきたように、外国人観光客の集客にはオンラインと店舗運営の両面からの戦略的な取り組みが不可欠です。
しかし、すべての対策を一度に実行する必要はありません。まずは多言語メニューやWi-Fi整備といった、すぐに始められる小さな改善から着手することが重要です。
これらの小さな一歩が、やがて大きな成果に繋がります。
最も大切なのは、長期的な視点に立ち、心からのおもてなしを継続すること。外国人観光客は単なる食事だけでなく、その背景にある文化や温かいサービスを求めています。彼らのニーズを理解し、言語の壁を越えたコミュニケーションを築くことで、単なる一見客ではなく、再来店してくれるファンへと変わります。
日本の「食」と「おもてなし」の価値を世界に伝え、持続的なインバウンド集客を実現しましょう。