【飲食店必見!】インバウンド客を呼び込む5つの集客テクニック─多言語対応から地域連携まで─
【目次】
インバウンド市場の現状と飲食店のチャンス
近年、訪日外国人観光客(インバウンド)は増加の一途をたどっており、日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2025年8月には単月で342.8万人を記録し、8月として過去最高を更新しています*1。これは、日本の飲食店にとって大きなビジネスチャンスです。
しかし、ただ待っているだけでは外国人観光客は来店してくれません。彼らが何を求めているのか、どのような情報を頼りに店を探しているのかを理解し、適切な対策を講じることが重要です。特に、「日本の本場の食事を体験したい」というニーズが高まっており、地域の特色を活かした飲食店が選ばれる傾向にあります。
このトレンドを追い風に変えるためには、外国人観光客に「見つけてもらい」「選んでもらう」ための工夫が必要です。本記事では、今日からすぐに始められる5つの集客テクニックをご紹介します。
*1 出典:訪日外客数(2025年8月推計値)|JNTO(日本政府観光局)
1. 外国語対応のメニューを作成する
外国人観光客を迎え入れる上で、最も基本的ながら非常に重要なのが、多言語に対応したメニューの準備です。言葉の壁は彼らの来店意欲を大きく左右するため、これを解消することが顧客満足度と売上アップの鍵となります。
多言語メニューの重要性と効果
外国人観光客にとって、飲食店で直面する最大の課題の一つが**「言葉の壁」です。日本語のメニューしかない場合、料理の内容や使われている食材がわからず、注文を躊躇したり、時には入店すら諦めたりすることもあります。このような機会損失を防ぐため、多言語メニューの導入は不可欠です。メニューを多言語化することで、お客様は安心して注文できるようになり、結果として客単価の向上や顧客満足度の向上にもつながります。
最低限用意すべき言語は、アジア圏からの観光客が多いことを考慮し、英語、中国語(簡体字)、韓国語です。さらに余裕があれば、タイ語やベトナム語、フランス語、スペイン語なども追加することで、より多くの観光客に対応できます。
QRコードメニューと写真で魅力を伝える
紙のメニューを多言語分用意するのはコストや手間がかかるものです。そこで有効なのが、QRコードを活用したWebメニューです。お客様が自身のスマートフォンでQRコードを読み取るだけで、メニューを母国語に自動翻訳して表示できます。これは非常に利便性が高く、常に最新のメニュー情報を提供できるというメリットもあります。
また、メニューの視覚的訴求力を高めることも重要です。料理の写真を豊富に掲載することで、言葉がわからなくても直感的に料理を選べるようになります。料理の魅力が最大限に伝わるよう、プロが撮影したような美しい写真を使用することが、注文率アップの鍵となります。さらに、メニュー名に加えて、使われている食材(例:和牛、新鮮な魚介など)や料理の調理法(例:天ぷら、すき焼きなど)を写真付きで説明することで、日本の食文化に対する関心も高まり、お客様の満足度をさらに向上させることができます。
2. SNSを活用し、視覚的な魅力を伝える
外国人観光客にとって、SNSは情報収集の主要なツールです。特に写真や動画で直感的に情報を伝えられるプラットフォームは、来店を促す上で非常に有効です。お店の雰囲気や料理の魅力を視覚的にアピールし、潜在顧客にリーチしましょう。
InstagramとTikTokでの情報発信:動画で「体験」を届ける
Instagramは「映え」を重視するユーザーが多く、料理や内装、お店の雰囲気を写真やリール動画で魅力的に伝えるのに最適です。特に外国人観光客は、旅行の思い出として美しい写真を撮りたいというニーズが高いため、このツールは必須です。
一方、TikTokはショート動画が中心で、よりダイナミックな情報発信が可能です。料理が完成するまでの過程や、スタッフの楽しそうな様子などを動画で投稿することで、お店の「ライブ感」や「ストーリー」を伝えられます。例えば、天ぷらを揚げる音や、寿司を握る職人の手元をアップで撮った動画は、外国人の興味を強く引きつけます。さらに、単に料理を見せるだけでなく、「日本の居酒屋でしか体験できないこと」や「日本の食事のマナー」といった文化的な側面も動画で伝えることで、より深い興味を喚起できます。
飲食店のSNS戦略についてはこちらの記事でも詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
SNSでインバウンド集客を成功させるには?Instagram・TikTok徹底活用術
ハッシュタグを戦略的に活用する:検索と発見の最適化
SNSでの情報発信を効果的に行うには、ハッシュタグの戦略的な活用が欠かせません。外国人観光客が検索で使うであろうキーワードを予測し、関連するハッシュタグを複数組み合わせることがポイントです。
【ハッシュタグの例】
- 料理名やジャンル: #sushi, #ramen, #izakaya
- 場所: #tokyofood, #shinjuku, #osaka
- ターゲット層: #japantrip, #japantravel, #visitjapan, #japaneats
- ユニークな体験: #japaneseculture, #foodie, #japanesefood
これらのハッシュタグを組み合わせることで、より多くの外国人ユーザーの目に留まりやすくなります。また、観光客が投稿した写真や動画をリポストしたり、コメントを返したりすることで、お店のコミュニティを形成し、ファンを増やすこともできます。
3. Googleビジネスプロフィールを充実させる
Googleビジネスプロフィールは、Googleマップ上に表示されるお店の情報ページです。外国人観光客の多くがこのツールを使ってお店を探すため、営業時間やメニュー、口コミなどの情報を正確かつ魅力的に発信することで、効果的な集客につなげることができます。
最新情報の更新と多言語での情報提供
外国人観光客の多くは、飲食店をGoogleマップで探します。そのため、Googleビジネスプロフィールは、お店の「顔」として最も重要な情報源の一つです。プロフィールを常に最新の状態に保ち、正確な情報を提供することが、来店を促す第一歩となります。
まず、お店の営業時間、住所、電話番号、ウェブサイトのURL、そして多言語対応メニューの有無などを正確に記載しましょう。特に、年末年始や祝日の営業時間は、通常の営業時間とは異なる場合が多いため、必ず最新の情報に更新することが重要です。
さらに、プロフィールの情報を多言語で提供することも有効です。Googleビジネスプロフィールには、英語や中国語など、複数の言語で情報を登録する機能があります。これにより、より多くの外国人観光客に情報が届くようになり、信頼性も高まります。
口コミへの返信で信頼性を高める
Googleビジネスプロフィールの口コミは、お店の信頼性を判断する上で非常に重要な要素です。良い口コミには感謝の気持ちを伝え、悪い口コミには真摯に対応することで、お店の誠実な姿勢をアピールできます。これは、「観光客を歓迎している」というお店の姿勢を明確に示す上で、非常に重要なコミュニケーション手段です。
外国人観光客は、日本語でのやり取りに不安を感じていることが多いため、英語での返信を心がけましょう。これにより、口コミ投稿者だけでなく、返信を読んだ他の外国人ユーザーにも安心感を与えられます。
【口コミ返信の具体的なポイント】
- 感謝の言葉を最初に伝える
「Thank you for your visit and kind feedback!」のように、感謝の気持ちをストレートに表現します。 - 具体的に言及する
「お料理の〇〇を気に入っていただき、ありがとうございます」のように、口コミの内容に触れることで、定型文ではない丁寧な対応であることを示します。 - 改善点への言及
「メニューが分かりにくかった」という指摘には、「ご不便をおかけして申し訳ございません。現在、多言語メニューを準備しております」のように、前向きな姿勢と具体的な改善策を伝えます。 - 再来店を促す
「また日本にお越しの際は、ぜひお立ち寄りください」といったメッセージで、再来店を促し、ファン化を狙いましょう。
口コミは、お店の「おもてなし」の姿勢を示す場です。積極的かつ丁寧に対応することで、新規顧客の獲得だけでなく、リピーターの増加にもつながります。
4. 決済手段を多様化する
現金以外の決済方法を増やすことは、外国人観光客の利便性を飛躍的に高めるだけでなく、機会損失を防ぎ、客単価を向上させる効果があります。 日本は依然として現金社会の側面が強いですが、多くの国ではクレジットカードやモバイル決済が主流です。彼らが慣れ親しんだ方法で支払えるようにすることで、安心して食事を楽しんでもらえます。
クレジットカード、QRコード決済、電子マネーへの対応
インバウンド客対応において、最低限導入すべき決済手段は以下の通りです。
- クレジットカード
Visa、Mastercard、JCB、American Expressなど、主要なブランドに対応しましょう。特に欧米からの観光客はクレジットカードをメインに利用します。 - QRコード決済
Alipay、WeChat Payは、中国からの観光客に必須です。また、韓国や東南アジアからの観光客が多い場合は、各国の主要なQRコード決済にも対応を検討すると良いでしょう。 - 電子マネー
SuicaやPASMOといった交通系電子マネーは、日本国内で幅広く利用されており、外国人観光客にも認知度が高いです。
これらの決済手段を導入する際は、キャッシュレス決済端末を店内に分かりやすく表示し、「Visa」「PayPay」「Alipay」といったロゴマークを店頭に掲示することで、外国人観光客に安心して入店してもらえるようになります。
現金以外の選択肢を増やすメリット
多種多様な決済手段に対応することは、単なる利便性向上に留まらず、ビジネスの成長に直結する様々なメリットをもたらします。
- 機会損失の徹底的な排除
外国人観光客の中には、「手持ちの現金が足りない」という理由で入店を諦める人が少なくありません。また、高額な日本食を現金だけで支払うことに抵抗を感じる人もいます。多様な決済手段を用意することで、これらの「取りこぼし」をなくし、来店機会と売上を最大化できます。 - 顧客単価の向上と消費意欲の喚起
キャッシュレス決済は、心理的なハードルを下げ、お客様がより気軽に注文できるようにします。手元の現金を気にすることなく、追加のドリンクやデザートを頼みやすくなるため、結果として客単価の向上につながります。 - 会計業務の効率化とスタッフの負担軽減
キャッシュレス決済は、現金授受の手間を省き、会計処理を迅速化します。特に混雑時には、この効率化が大きな助けとなり、スタッフはより「おもてなし」に集中できるようになります。また、現金管理や両替の手間も減り、業務負担が軽減されます。 - 衛生面・セキュリティ面での安心感
非接触での決済は、お客様とスタッフ双方に衛生面での安心感を提供します。また、現金の盗難リスクを減らし、セキュリティの強化にもつながります。 - データ活用によるマーケティング施策の強化
QRコード決済やクレジットカード決済では、顧客の購買データを蓄積することができます。これにより、人気メニューの分析や、客層に合わせたプロモーション施策の検討が可能になります。
5. 宿泊施設や観光施設と連携する
地域全体で連携してインバウンド集客に取り組むことで、相乗効果を生み出し、個々の店舗だけでは到達できない集客力を実現できます。
地域全体でインバウンド客を呼び込む
インバウンド集客は、自店舗だけで完結させるのではなく、地域全体で取り組むことで相乗効果を生み出せます。宿泊施設や観光案内所、他の飲食店などと連携し、「この地域全体が外国人観光客を歓迎している」という雰囲気を醸成することが重要です。
これは、個々の店舗が単独で広告を打つよりも、はるかに高い効果をもたらします。例えば、ある観光施設で「この地域の飲食店マップ」を配布していれば、観光客は安心して複数の店を訪れることができます。また、地域の観光客向けイベント情報に自店舗の情報も載せてもらうことで、集客の機会を増やせます。
相互紹介による集客効果
信頼性の高い情報源である宿泊施設や観光施設と連携し、相互に顧客を紹介し合うことで、集客効果を飛躍的に高めることができます。これは、単なる広告費用をかけるよりも高い費用対効果を期待できる戦略的なマーケティング手法です。
具体的な連携例には次のようなものがあります。
- ホテル・旅館との提携
- 客室に自店のクーポン付きパンフレットやオリジナルマップを設置してもらうことは基本中の基本です。さらに踏み込むなら、客室のタブレット端末やテレビ画面に表示される情報に、店舗情報を載せてもらう交渉をしましょう。
- フロントやコンシェルジュに口頭でおすすめしてもらうための関係構築が最も重要です。提携先スタッフ向けの試食会や、店舗ツアーを定期的に開催し、お店の魅力やこだわりを直接伝えましょう。スタッフがお店のファンになってくれれば、彼らは自信をもってお客様に推薦してくれます。
- 観光案内所との連携
- 多言語対応の観光パンフレットに掲載してもらうことはもちろん、「今週末のイベント情報」や「期間限定のおすすめ店」といった、口頭での情報交換を密に行いましょう。観光案内所のスタッフは、観光客の質問に答えるプロです。最新の情報を提供することで、彼らからの信頼を得て、優先的に紹介してもらえるようになります。
- 体験施設・アクティビティ事業者とのコラボ
- 着物体験、茶道体験、陶芸体験など、日本の文化を体験できる施設と提携し、「体験の後は日本の美味しい食事がしたい」というニーズを直接捉える戦略です。施設側で「着物体験+食事」のセットプランを販売したり、体験客に割引券を配布したりすることで、文化体験と食事をシームレスにつなぎ、顧客満足度を高めることができます。
- 他の飲食店との協力
- 近くの異なるジャンルの飲食店(例:昼はカフェ、夜は居酒屋)と協力して、相互に顧客を紹介し合う仕組みを構築しましょう。例えば、「このカードを持って〇〇(提携店名)に行くとドリンク1杯無料」といった共同キャンペーンは、地域全体の賑わいにもつながります。これは、「この地域には美味しいお店がたくさんある」という印象を観光客に与える効果もあります。
これらの連携は、単なる集客に留まらず、観光客の滞在満足度を向上させ、「また日本に来たい」というリピーターの創出にもつながります。
まとめ:小さな一歩から始めるインバウンド集客
本記事では、外国人観光客を呼び込むための5つの重要な集客テクニックをご紹介しました。「多言語メニュー」「SNS」「Googleビジネスプロフィール」「多様な決済手段」「地域連携」は、どれもすぐに実践できるものばかりです。
一見すると大きな手間やコストがかかるように思えるかもしれませんが、まずはできることから一歩ずつ始めることが成功への近道です。
例えば、料理の写真を撮ってSNSに投稿したり、Googleビジネスプロフィールの情報を更新したりといった、小さな工夫からでも大きな変化は生まれます。
インバウンド市場は今後も拡大が予測される成長分野です。外国人観光客を歓迎し、日本の食文化を伝える「おもてなし」の心で、未来の顧客を獲得していきましょう。