【脱・失敗】飲食店オーナーのためのインバウンド集客完全ガイド｜落とし穴と回避策

なぜ今、インバウンド集客が必要なのか？

新型コロナウイルスの影響で一時期は途絶えていた訪日外国人観光客ですが、水際対策の緩和以降、急速な回復を見せています。観光庁が発表した「訪日外客数（2025年9月推計値）」によると、単月で300万人を超えるなど、コロナ禍前の水準を大きく上回る勢いです*1。
今後もこの増加傾向は続くと予想され、飲食店にとってインバウンド集客は、売上を伸ばすための重要な鍵となります。しかし、単に観光客が来店するのを待つだけでは不十分です。彼らを「リピーター」に変え、さらにはSNSなどを通じて日本の魅力を発信してもらうことが、持続的な成長には不可欠だからです。
では、なぜここまでインバウンド集客が重要なのでしょうか。その理由は大きく2つあります。

1. 日本食への関心の高まりと消費意欲の増加
近年、アニメや和食ブームの影響で日本文化への関心が高まり、それに伴い日本食を体験したいという訪日客が増えています。特に、ミシュランガイドに掲載されるような高級店だけでなく、居酒屋やラーメン店、カフェなど、日本の日常の食文化を体験したいというニーズが拡大しています。また、訪日客の一人当たりの旅行支出は年々増加しており、特に飲食費は重要な消費項目です。彼らは「美味しい食事」に対して高い消費意欲を持っています。

2. 口コミによる二次的な集客効果
インバウンド客は、旅行中に体験した「良いお店」や「美味しい料理」を、SNS（Instagram, TikTokなど）や旅行サイト（TripAdvisorなど）を通じて積極的に情報発信します。彼らの発信は、世界中の潜在的な旅行者にとって、信頼性の高い情報源となり、次の訪日客を呼び込む二次的な集客効果を生み出します。つまり、一人の訪日客を満足させることは、その背景にいる多くの「未来の常連客」にアプローチすることに繋がるのです。
この記事では、インバウンド集客で飲食店が陥りがちな「落とし穴」と、それを回避するための具体的な「解決策」をご紹介します。

*1 出典：訪日外客数（2025年9月推計値）｜JNTO（日本政府観光局）

落とし穴1：言葉の壁と情報不足

インバウンド集客において、最初に直面する大きな課題は「言葉の壁」です。日本語のメニューしかない場合、訪日客は料理の内容を正確に理解できず、注文に戸惑ってしまいます。このコミュニケーション不足は、単に注文の機会を逃すだけでなく、食物アレルギーや宗教上の理由で食べられない食材があるお客様にとって、安心して食事を楽しめないという深刻な問題を引き起こします。結果として、お客様に不信感を与え、二度と来店してもらえなくなるリスクが高まります。
この問題を解決するためには、メニューの多言語化が不可欠です。特に、訪日客の多い英語、中国語（簡体字）、韓国語のメニューは必ず準備しましょう。さらに重要なのは、単なる翻訳にとどまらず、料理の魅力を伝える高画質な写真を添えることです。言葉がわからなくても、見た目で料理を直感的に判断できるようにすることで、お客様の注文に対する不安を大きく軽減できます。メニュー作成に自信がない場合は、多言語対応に特化した専門の翻訳サービスや、メニュー作成ツールを活用するのが賢明です。

多言語メニュー作成については、こちらの記事でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
【保存版】インバウンドで失敗しない！多言語メニュー作成10のポイントとおすすめツール

加えて、スタッフとお客様のコミュニケーションを円滑にするための工夫も重要です。最近のスマートフォンアプリには、リアルタイムで音声を翻訳してくれる高性能なツールが多数あります。こうしたツールを導入することで、複雑な質問にも対応できるようになります。また、基本的な接客フレーズをまとめた「指差し会話シート」を用意しておけば、緊急時にもスムーズな対応が可能です。お客様が安心して過ごせる環境を整えることが、リピーター獲得の第一歩となります。

落とし穴2：文化や習慣への配慮不足

飲食店が陥りがちなもう一つの大きな落とし穴が、文化や習慣への配慮不足です。特に、宗教上の理由で特定の食材を食べられないお客様への対応は、インバウンド集客を成功させる上で不可欠な要素となります。例えば、イスラム教徒（ムスリム）の方々は豚肉やアルコールを口にしませんし、ヒンドゥー教徒は牛肉を食べません。これらの情報がメニューに明記されていない場合、お客様は安心して食事を楽しめず、最悪の場合、健康上の問題を引き起こす可能性も否定できません。
この問題を回避するためには、メニューやウェブサイトでアレルギー情報やベジタリアン、ヴィーガン、ハラール対応について分かりやすく明記することが重要です。また、単に「ハラール対応」と表示するだけでなく、どのような食材を使用していないのか（例：豚肉、アルコール不使用など）を具体的に記載することで、お客様からの信頼を得ることができます。
さらに、食事の習慣についても理解を深めることが求められます。例えば、欧米や中東では、食事をシェアする習慣が一般的です。大皿料理をシェアしやすいような盛り付けや、取り皿の用意など、ちょっとした工夫がお客様の満足度を高めます。また、文化によっては、食事の時間が日本と異なる場合があります。宗教上の儀式や生活リズムに合わせて、柔軟に対応できる体制を整えておくことも、質の高いサービスに繋がります。

落とし穴3：オンラインでの存在感がない

インバウンド集客を成功させるためには、実店舗での接客はもちろん、「オンラインでの存在感」を確立することが非常に重要です。多くの訪日客は、旅行前に、または旅行中にスマートフォンを使ってお店をリサーチします。その際、GoogleマップやSNSの情報が古かったり、そもそも情報がなかったりすると、せっかくの集客のチャンスを逃してしまいます。
この問題を解決する最も効果的な方法は、「Googleビジネスプロフィール」を徹底的に活用することです。営業時間、正確な住所、電話番号、そしてメニューや料理の高画質な写真を最新の状態に保ちましょう。訪日客は、Googleマップで「近くのレストラン」を検索することが多いため、プロフィール情報が充実しているだけで、発見される機会が格段に増えます。さらに、寄せられた口コミには積極的に返信し、お客様とのコミュニケーションを図ることで、お店の信頼性を高めることができます。
また、InstagramやTikTokといったSNSでの情報発信も欠かせません。これらのプラットフォームは、言葉の壁を越えて視覚的に魅力を伝えられる強力なツールです。外国人観光客が興味を持つであろう日本の雰囲気、季節限定のメニュー、活気ある店内の様子などを積極的に投稿しましょう。魅力的なビジュアルは、訪日客の「この店に行ってみたい！」という気持ちを強く刺激します。
最後に、訪日客に人気の予約サイトへの登録も忘れてはいけません。多くの旅行者は、言葉の不安なくスムーズに予約を完了させるために、TripAdvisorやOpenTableといったサイトを利用します。これらのサイトに登録し、正確な空席情報や予約システムを整備することで、お客様は安心して来店計画を立てることができ、予約に繋がる確率が高まります。オンラインでの存在感を高めることは、オフラインでの集客を最大化するための重要な戦略です。

落とし穴4：店舗での体験が期待外れ

インバウンド客が来店したとしても、その「店舗での体験」が期待外れだと感じてしまうと、再来店はもちろん、口コミによる二次的な集客効果も期待できません。最も陥りがちな落とし穴の一つが、決済方法の少なさです。キャッシュレス化が進む中、海外ではクレジットカードやQRコード決済、電子マネーが主流となっています。現金しか使えないお店は、お客様に不便を強いることになり、せっかくの機会を逃してしまいます。この問題を回避するためには、クレジットカード、主要なQRコード決済（WeChat Pay、Alipayなど）、Apple PayやGoogle Payといった電子マネーなど、多様な決済方法を導入することが不可欠です。

また、訪日客は日本の店舗で、Wi-Fi環境が整っていることを期待しています。旅行中の通信量を気にしているお客様にとって、無料Wi-Fiの提供は大きなメリットとなります。Wi-FiのSSIDとパスワードをわかりやすい場所に掲示することで、お客様はストレスなくインターネットを利用でき、SNSへの投稿も促すことができます。

さらに、お店独自の「外国人観光客向けサービス」を提供することも、顧客満足度を高める上で有効です。例えば、免税手続きの代行サービスを導入したり、日本らしいお土産品を販売したりするのも良いでしょう。特別なサービスは、お客様に「このお店は自分たちのことを歓迎してくれている」という好印象を与え、忘れられない体験として記憶に残ります。キャッシュレス決済の導入、無料Wi-Fiの提供、そして外国人向けサービスの提供は、訪日客の「期待を超える体験」を提供し、リピーターへと繋げるための重要なステップです。

まとめ：インバウンド集客成功への第一歩

インバウンド集客の成功は、特別な施策だけにあるわけではありません。
まずは多言語メニューの整備や多様な決済方法の導入、SNSでの積極的な情報発信など、お客様が安心して楽しめる環境を一つずつ着実に整えていくことが何よりも重要です。
このような小さな努力の積み重ねが、訪日客の満足度を飛躍的に高め、やがて強力な口コミとなってお店の評判を広げ、未来の常連客へと繋がっていきます。
この記事を参考に、今すぐできることから始めて、インバウンド集客を成功させていきましょう。