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MEDIA インバウンドマーケティング総合研究所

外国人向け価格(二重価格)は違法?インバウンド対策で炎上・トラブルを防ぐ導入ガイド

インバウンド需要の急速な拡大に伴い、観光地や飲食店で「外国人向け価格(二重価格)」を設定する動きが広がっています。しかし、「これって違法ではないの?」「差別だと批判されないか?」と不安を感じる事業者の方も多いはずです。
本記事では、二重価格の法的な考え方や景品表示法上の注意点を専門的な視点で解説します。さらに、SNSでの炎上や客離れといったトラブルを避けつつ、収益を最大化するための具体的な導入方法や「居住者割引」などの成功事例も紹介します。

外国人向け価格(二重価格)の設定は違法なのか?

インバウンド需要の急速な回復に伴い、観光地などで「外国人価格」を設定する動きが加速しています。まず、多くの事業者が最も懸念する「法的な違法性」について詳しく解説します。

結論:日本国内での二重価格は「原則として違法ではない」

結論から申し上げますと、日本国内において日本人と外国人で異なる価格を設定する「二重価格」は、原則として違法ではありません。
日本の経済活動は「自由価格制度」を基本としています。事業者は、自身の提供するサービスや商品に対して、独自の判断で価格を決定する権利(価格決定の自由)を持っています。これは憲法で保障された経済活動の自由や、独占禁止法などの考え方に基づいています。
「人種や国籍による差別ではないか」という議論もありますが、例えば「多言語対応のためのコスト」「外国人向けの特別なメニュー構成」「文化保護のための追加費用」といった合理的な理由がある場合、価格差をつけること自体が法的な罰則対象になる可能性は極めて低いと言えます。

注意すべき法的リスク(景品表示法など)

「原則として合法」ではありますが、どのような方法でも許されるわけではありません。特に注意すべきは、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)への抵触です。
以下のケースでは、法的なトラブルに発展する恐れがあります。

  • 「有利誤認」を招く表示
    店頭の目立つ場所には安い価格(国内客向け)のみを表示し、会計時に外国人であることを理由に予告なく高い価格を請求する行為。

  • 不透明な価格体系
    同じ商品・サービスであるにもかかわらず、その場の恣意的な判断で価格を変動させ、消費者に正しく伝えない場合。

景品表示法は、消費者が適切な判断を下せるよう「正しい情報提供」を求める法律です。トラブルを避けるためには、「誰に対して、いくらで提供するのか」を事前に、かつ明確に提示していることが最低条件となります。

消費者庁の考え方と過去の事例

消費者庁は、価格表示に関して「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方(価格表示ガイドライン)」を公表しています。この中では、事業者がどのような価格設定を行うかは「事業者の任意」であることが明記されています。

価格設定は事業者の自由

消費者庁のガイドラインや過去の見解をまとめると、以下の点が重要になります。

  1. 価格決定の任意性
    事業者がサービス内容やコスト、需要に応じて複数の価格帯を設定すること自体は、経済活動の自由として尊重されます。

  2. 情報の透明性
    最も重視されるのは、「消費者が誤認しないこと」です。特定の顧客(外国人や地元住民など)にのみ適用される価格がある場合、その条件を明示せずに「安い価格だけ」を強調して表示することは、有利誤認として不当表示に該当する恐れがあります。

過去の議論と現在の流れ

過去には、「外国人向け価格」という直接的な表現ではありませんが、地域住民への割引や会員・非会員での価格差が議論されてきました。いずれも、「条件が明確であり、消費者が納得して選択できる状態」であれば、法的な問題はないとされています。
近年のインバウンド増加に伴い、河野太郎デジタル大臣(当時)も記者会見などで「二重価格そのものは違法ではない」という趣旨の発言をしており、適切な情報開示を前提とした価格差の設定は、国としても容認する方向にあります。

参照:消費者庁公式ページ 二重価格表示(景品表示法関連ガイドライン)

なぜトラブルや「炎上」が起きるのか?主なリスク要因

二重価格は法的に認められていますが、実務においてはSNSでの炎上や深刻なクレームに発展するリスクを孕んでいます。なぜトラブルが起きるのか、その背景を整理しましょう。

「差別されている」という感情的な反発

最も大きなリスクは、外国人客が「外国人だから高い」と知った際に抱く「不当な差別」への怒りです。

  • ネガティブな印象
    同条件のサービスで国籍のみを理由に価格を上げると、観光客は「利用されている」「カモにされている」と感じ、日本旅行全体の満足度を著しく下げてしまいます。

  • 言葉の選択ミス
    「Tourist Price」や「Foreigner Price」といった直接的な表現は、排他的な印象を与えやすいため注意が必要です。

価格表示の不透明性による不信感

トラブルの現場で最も多いのが、「会計時に初めて価格差を知る」というケースです。

  • サプライズ・ペナルティ
    楽しく食事をした後に、メニュー表にない追加料金や「外国人料金」を突きつけられることは、客にとって裏切りに近い体験となります。

  • 不親切なメニュー
    英語メニューと日本語メニューで価格が異なり、その説明がどこにもない場合、不信感は決定的なものになります。

SNSでの拡散とブランドイメージの低下

現代では、スマートフォンのカメラ一つで瞬時に全世界へ情報が拡散されます。

  • 「ぼったくり」のレッテル
    悪意のある投稿でなくとも、「この店は価格が不透明だ」という口コミがGoogleマップやTripAdvisorに投稿されると、客足に長期的な悪影響を及ぼします。

  • メディアの過熱
    ひとたび炎上すると、テレビやネットニュースが取り上げ、店舗だけでなく地域全体のイメージダウンに繋がるリスクもあります。

トラブルを回避する!賢いインバウンド価格の設定方法

炎上リスクを抑えつつ、適切な収益を確保するためには「伝え方の工夫」と「納得感の醸成」が不可欠です。

「値上げ」ではなく「地元住民・国内向け割引」という見せ方

最も効果的なのは、心理学で言われる「フレーミング効果」の活用です。

  • ポジティブな表現
    「外国人価格を上げる」のではなく、「居住者には割引を適用する(Resident Discount)」という形をとります。

  • 国際基準の導入
    タイやハワイ、ヨーロッパの主要観光施設でも、「一般価格」と「居住者割引」の併用は一般的です。これにより、外国人客から見れば「自分が高い」のではなく「地元の人が優遇されているだけ」という納得感を得やすくなります。

付加価値(サービス内容)を明確に分ける

「同じ商品で価格が違う」という状態を避け、提供価値そのものを差別化します。

  • インバウンド専用コース
    英語対応、日本文化の解説シート、Wi-Fi利用、自撮りサポートなど、訪日客が求めるサービスをパッケージ化し、「体験価値」として高価格を設定します。

  • コストの可視化
    多言語対応スタッフの配置やキャッシュレス決済の手数料など、運営にかかる追加コストを価格の根拠としてスタッフが説明できるようにしておきます。

価格表記を完全にオープンにする(多言語対応)

情報の透明性は、信頼関係の基本です。

  • 店頭掲示の徹底
    入店前に「誰がいくらなのか」が明確にわかるように掲示します。

  • 多言語での理由説明
    「なぜこの価格なのか(文化保護のため、多言語サポートのため等)」を英語や中国語で一筆添えるだけで、外国人客の心理的障壁は大きく下がります。

【事例紹介】二重価格を導入して成功・話題になったケース

日本国内でも、二重価格やインバウンド向けの強気な価格設定を行い、結果として成功を収めている事例がいくつかあります。

豊洲の「インバウンド丼」から学ぶこと

2024年にオープンした「豊洲 千客万来」では、1杯数千円から1万円近くする海鮮丼、通称「インバウンド丼」が大きな話題となりました。

  • 高単価でも満足度が高い理由
    ターゲットを明確に「海外富裕層」に絞り、日本の豊洲という「場所の希少性」と「最高級の食材」という体験価値を提供しました。

  • 円安の影響
    海外からの観光客にとって、数千円の食事は自国通貨に換算すれば決して法外ではなく、むしろ「この品質なら安い」と感じるケースも多いのです。

地域の文化保護・維持費としての「入山料・拝観料」

兵庫県の姫路城では、外国人観光客向けの入城料を大幅に引き上げる検討がなされており、大きな議論を呼びました。

  • オーバーツーリズム対策
    観光客の急増による文化財の損傷や混雑を防ぐため、「適正な入場制限」と「維持管理コストの確保」を目的としています。

  • 公共性と納得感
    「日本の宝を次世代に残すための費用」として価格差を説明することで、単なる営利目的ではないという正当性を伝えやすくなります。

導入前にチェック!トラブル防止のためのチェックリスト

二重価格を導入する際は、以下のチェックリストを活用して、不備がないか確認しましょう。

  • 価格設定の根拠を言語化できているか?
    単に「外国人だから」ではなく、多言語対応コスト、特別な食材、体験サービスの付加など、価格差の正当な理由をスタッフが説明できる状態にしてください。

  • 多言語による価格掲示が「入店前」に見えるか?
    会計時のトラブルを避けるため、店頭や入り口のメニュー表で、日本語以外でも条件(居住者割引の有無など)を明記してください。

  • 日本人客・外国人客の双方が「納得できる見せ方」か?
    「外国人=高い」ではなく、「居住者証明があれば割引」というフレーミング(伝え方)になっているか確認しましょう。

  • 店内でのオペレーションは混乱しないか?
    身分証の確認方法やレジでの打ち込みなど、現場スタッフが迷わず対応できるシンプルなルールを策定してください。

まとめ:「二重価格」を超えた価値提供が重要

外国人向け価格(二重価格)の設定は、法的に認められた正当な経済活動ですが、成功の鍵は「情報の透明性」と「伝え方の工夫」にあります。単に価格を分けるのではなく、「居住者割引」というポジティブな表現を採用したり、多言語サポートなどの付加価値を明確にしたりすることで、外国人客の納得感を醸成することが可能です。
適切な価格設定は、地域住民の生活を守りつつ、質の高いサービスを持続させるための重要な戦略です。
目先の利益だけでなく、三方が納得できる「価値の提供」を意識し、持続可能なインバウンドビジネスを目指しましょう。

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