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MEDIA インバウンドマーケティング総合研究所

飲食店のアレルギー表示を多言語対応する方法|英語表記の基本からピクトグラム・運用上の注意点まで

1分でわかるこの記事のポイント

  • アレルギー情報は伝わらなければ意味がない
  • 英語表記はカタカナや商品名ではなく、原材料の素材名で書く
  • ピクトグラムは万能ではない。表示できないアレルゲンがある点を押さえておく
  • 「Please ask staff」だけでは不十分。スタッフが答えられる体制とセットで機能する
  • 多言語対応は一度つくって終わりではなく、メニュー改訂のたびに更新が必要

インバウンド客から「これは何のアレルギーがありますか?」と聞かれ、うまく答えられなかった経験はないでしょうか。あるいは、英語メニューを作ってはみたものの、アレルギー情報はそのままにしていたり、日本語と同じ内容を機械翻訳で転記しただけだったり。そういう状態のままインバウンド客を受け入れている飲食店は、決して少なくないはずです。

アレルギーは、対応を誤れば命に関わる問題です。英語圏の旅行者をはじめ、多くの訪日外国人がアレルギー情報を予約・来店前に確認しようとしています。その情報が見当たらない、または不明確なままだと、信頼を損なうだけでなく、旅行者が安心して食事を楽しめる機会も失ってしまいます。

この記事では、多言語対応のアレルギー表示をこれから整備する方に向けて、英語表記の基本からピクトグラムの活用と注意点、運用上の落とし穴まで、一通り解説します。


特定原材料9品目と推奨20品目、まずここから把握する

特定原材料と特定原材料に準ずるもの、何が違うか

日本では食品表示法に基づき、加工食品に対してアレルゲンの表示が義務付けられています。飲食店での提供食品には、この表示義務は直接適用されません。ただし、アレルギー情報を提供していなかった、または誤った情報を伝えたことで健康被害が生じた場合、民事上の損害賠償責任を問われる可能性があります。義務の有無とは別に、正確な情報提供は事業者としてのリスク管理の一部です。

2026年4月1日の食品表示基準改正により、特定原材料(表示義務)は9品目となっています。

区分品目
特定原材料(表示義務・9品目)えび、かに、カシューナッツ、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)
特定原材料に準ずるもの(表示推奨・20品目)アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン、ピスタチオ

カシューナッツはこれまで推奨表示でしたが、アレルギー症例数の増加を踏まえて義務表示に格上げされました。2028年3月31日までは経過措置として従前の表示のままでも可とされていますが、対応は先送りにせず速やかに切り替えておくことをお勧めします。今回の改正でピスタチオが推奨表示の品目に新たに追加されています。

訪日外国人対応では、義務9品目に加え、推奨20品目についても可能な範囲で情報を提供できると、旅行者の信頼感につながります。

宗教的な食の制限も視野に入れる

ムスリムの旅行者(マレーシア・インドネシア・中東など)にとって、豚肉・アルコールが含まれているかどうかは重要な確認事項です。厳格なベジタリアン・ヴィーガンの旅行者は、肉・魚・乳製品・卵を避けていることも少なくありません。これらはアレルギーとは異なりますが、多言語対応の文脈では同じ場面で問われることが多く、あわせて整備を検討しておく価値はあります。


アレルゲンは英語でどう書くか

素材名を英語の一般名詞で書く

アレルゲンを英語で表記する際、日本語の商品名やカタカナをそのまま使うのは避けたほうがいいでしょう。旅行者には意味が伝わらないことがほとんどで、素材名を英語の一般名詞で書くのが基本です。

義務表示の9品目と推奨表示の20品目、それぞれの英語表記をまとめました。

日本語英語表記
小麦wheat
egg
乳(牛乳・乳製品)milk / dairy
えびshrimp / prawn
かにcrab
そばbuckwheat
落花生peanut
くるみwalnut
カシューナッツcashew nut
日本語英語表記
アーモンドalmond
あわびabalone
いかsquid
いくらsalmon roe
オレンジorange
キウイフルーツkiwi fruit
牛肉beef
ごまsesame
さけ(鮭)salmon
さば(鯖)mackerel
大豆soy / soybean
鶏肉chicken
バナナbanana
豚肉pork
まつたけmatsutake mushroom
ももpeach
やまいもJapanese yam
りんごapple
ピスタチオpistachio
ゼラチンgelatin

「ebi」「soba」のように日本語ローマ字表記のままでは旅行者に伝わりません。アレルゲンに関しては特に、国際的に通じる素材名を使うことが大切です。

メニューへの組み込み方、3つのパターン

メニューへの組み込み方には、いくつかのパターンがあります。

パターン1:品目ごとに含有アレルゲンを列挙する

Tempura Set

Contains: wheat, egg, shrimp

パターン2:記号または数字でアレルゲン一覧と対応させる

① wheat  ② egg  ③ dairy  ④ shrimp  ⑤ soy …

Tempura Set ①②④

紙面スペースが限られる場合は記号方式のほうがコンパクトに収まります。凡例が見当たらない場合に混乱が起きやすい点だけ注意が必要です。

パターン3:スタッフへの問い合わせ誘導

Please inform your server of any allergies before ordering.

Our staff can provide detailed allergen information upon request.

このパターンは補足として機能しますが、これだけでは不十分です。スタッフが各メニューのアレルゲン情報を把握していること、英語での問い合わせに答えられる体制が整っていること——この2点がセットで必要です。


ピクトグラムは補助ツールと割り切って使う

ピクトグラムが活きる使い方

絵文字やアイコン形式のピクトグラムは、言語に依存しないため多言語対応の補助ツールとして活用されています。テーブルカード、メニュー表の余白、卓上POPなどに組み込みやすく、視覚的にわかりやすいという利点があります。

ピクトグラムだけでは伝わらないこと

ただし、ピクトグラムには無視できない限界もあります。

アレルゲン全品目に対応するアイコンが存在しない:特定原材料に準ずる20品目のすべてにアイコンが整備されているわけではなく、対応できないアレルゲンが出てくる場合があります。

アイコンの意味が共通認識になっていない:日本国内で使われているアイコンが、海外旅行者にとって見慣れたものとは限りません。「このマークが何を意味するか」が伝わっていないと、表示があっても見過ごされてしまいます。

詳細な情報が伝えられない:「ごく微量含む場合がある」「製造工程での混入リスク」など、ニュアンスのある情報はアイコンでは表現できません。

ピクトグラムは英語表記と組み合わせて補助的に使うのが現実的です。単独で対応を完結させようとすると、情報が伝わりきらないまま終わります。


多言語対応で陥りやすい3つの落とし穴

1. 機械翻訳をそのまま掲載する

機械翻訳の精度は年々上がっていますが、アレルギー情報に関しては「なんとなく読める」では不十分です。誤訳や不自然な表現があると、旅行者が情報を正確に読み取れないばかりか、「このお店の情報は信用していいのか」という疑念につながりかねません。

アレルギー表記に使う英語は語彙数が限られており、一度チェックしてしまえば繰り返し使えます。ネイティブスピーカーまたは専門の翻訳者に確認を取っておくことを勧めます。

2. 「Please ask staff」だけで終わらせる

問い合わせを促す文言を置くこと自体は有効ですが、スタッフが実際に答えられる準備がないと機能しません。各メニューのアレルゲン情報をまとめたシートをスタッフが参照できる状態にしておく、英語での基本的な応答フレーズを共有しておく——この2点がセットです。

「アレルゲンは含まれていません」「このメニューには〜が入っています」「確認して参ります」の3パターンくらいを英語で用意しておくだけでも、対応できる場面はぐっと広がります。

3. 一度つくって更新しない

メニューが変わればアレルゲン情報も変わります。季節メニューの追加、仕入れ先の変更、レシピの見直し。どのタイミングでアレルギー表示の更新が必要になるかを、運用ルールとして決めておきたいところです。

古い情報が残ったままのアレルゲン表示は、なかった場合と同じか、それ以上にリスクが高い状態です。


何から手をつけるか、優先順位の考え方

一度にすべてを整えようとすると手が止まりがちです。以下の順序で着手すると動きやすくなります。

ステップ1:自店のアレルゲン情報を整理する

まず既存メニューについて、特定原材料9品目が含まれているかどうかを品目ごとにまとめた一覧をつくります。このリストがあれば、英語表記・ピクトグラム対応・スタッフへの情報共有がいずれもスムーズになります。

ステップ2:英語でのアレルゲン一覧を用意する

ステップ1で整理した情報を英語化し、メニューへの組み込みを検討します。全品目対応が難しければ、集客上の主力メニューから着手するのが現実的です。

ステップ3:スタッフ向けの対応フレーズを整備する

問い合わせへの対応フレーズを英語で用意し、スタッフが参照できる状態にします。ラミネートしてレジ横に置くだけでも、現場での対応はかなり変わります。

ステップ4:メニュー改訂時の更新ルールを決める

多言語表記の更新を誰がいつ行うかを明確にしておきます。担当が曖昧なまま運用すると、気づいたときには古い情報が残り続けている事態になりがちです。


まとめ

アレルギー情報の多言語対応は、特別な設備を必要としない施策です。正確な素材名で英語表記を整え、スタッフが答えられる体制をつくり、更新の仕組みを組み込む。この3点を地道に積み上げることが、旅行者が安心して注文できる環境につながります。

インバウンド対応を強化しようとするとき、多言語メニューや予約システムに先に目が向きがちですが、アレルギー表示の整備はそれと同じ優先度で取り組んでおきたいところです。旅行者にとって「食の安全」に関わる情報は、体験の入口でもあります。


関連記事:訪日客向け英語LPの作り方|予約につながる構成・CTA・掲載情報を解説


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