【2026年1月インバウンド動向】訪日客数4年ぶり減も韓国・欧米豪は過去最高!市場二極化への対策とは
2026年1月の訪日外客数は359万人となり、4年ぶりのマイナスを記録しました*1。「インバウンドバブル終了か?」と不安視する声もありますが、内訳を見れば韓国が初の単月110万人超え、欧米豪も過去最高を更新するなど、市場は明らかに「二極化」しています。
本記事では、総数減の主因である中国市場の動向と春節ズレの影響を分析しつつ、好調エリアを取り込むための具体的な集客対策を解説します。数字の表面的な増減に惑わされず、今狙うべきターゲットを明確にしましょう。
【目次】
*1 参照:訪日外客数(2026 年 1 月推計値)|JNTO(日本政府観光局)
全体概況:2026年1月の訪日外客数は359万人、4年ぶりのマイナスへ

出典:訪日外客数(2026 年 1 月推計値)|JNTO(日本政府観光局)
2026年1月の訪日外客数は3,597,500人となり、前年同月と比較して4.9%の減少となりました。2022年以降、急激な右肩上がりを続けてきたインバウンド市場において、前年を下回るのは実に4年ぶりのことです。一見すると市場の冷え込みを感じさせる数字ですが、実態は「構造的な不況」ではなく、特定の市場における一時的な要因が大きく影響しています。実際、全23市場のうち17市場で1月として過去最高を記録しており、日本旅行への需要そのものは世界的に極めて高い水準を維持しているのが今月の大きな特徴です。
総数は4.9%減も、中身は「17市場で過去最高」の活況
今月の総数がマイナスに転じた最大の要因は、昨年(2025年)は1月下旬だった旧正月(春節)が、今年は2月中旬にズレたことにあります。これにより、中華圏を中心とした大規模な休暇需要が次月へ持ち越しとなりました。
しかし、この特殊要因を除けば市場は極めて好調です。韓国、台湾、豪州では単月としての過去最高値を更新し、米国や東南アジア各国、欧州主要国を含む17市場で「1月としての過去最高」を塗り替えています。
観光立国推進基本計画*2が掲げる「地方誘客」や「消費額拡大」の観点からも、特定の時期や市場に依存しない多角的な成長が見て取れる結果となりました。
*2 参照:観光立国推進基本計画 | 観光政策・制度 | 観光庁
マイナスの主因は「中国市場の減速」と「春節のズレ」
統計を押し下げた決定的な要因は、中国市場の急減にあります。1月の訪日中国人数は385,300人で、前年同月比60.7%減という大幅なマイナスを記録しました。
これには前述の春節日程のズレに加え、中国政府による日本への渡航制限や注意喚起、それに伴う航空便の減便が重なったことが影響しています。
また、香港市場も同様に前年比17.9%減となっており、中華圏全体での需要が2月に後ろ倒しになった形です。インバウンド事業者にとっては、この「1月の空白」が一時的なものか、あるいは中国市場の構造的な変化なのかを冷静に見極める必要があります。
国・地域別トピック:韓国が驚異の110万人突破、欧米豪も絶好調

出典:訪日外客数(2026 年 1 月推計値)|JNTO(日本政府観光局)
市場全体がマイナスとなる中で、際立った存在感を示したのが韓国です。韓国からの訪日客数は1,176,000人(前年同月比21.6%増)に達し、JNTOの統計史上、全市場を通じて初めて単月で110万人を突破するという歴史的な快挙を成し遂げました。
この勢いは、単なる近距離旅行の人気に留まらず、日本各地への航空路線の拡充や、若年層を中心としたリピーターの増加が下支えしています。100万人を超える巨大市場が隣国に存在することは、日本の観光産業にとって極めて強固な基盤となっていることを改めて証明しました。
韓国:全市場初!単月で110万人を記録し過去最高へ
韓国市場の爆発的な成長には、複数の要因が絡み合っています。継続的な日本旅行ブームに加え、釜山〜福岡間をはじめとした地方路線の増便による座席供給量の拡大が、地方部への誘客を強力に後押ししました。
さらに、1月のスクールホリデー期間と円安による割安感が重なり、「手軽に行ける海外旅行先」としての地位を不動のものにしています。
事業者は、この「巨大なリピーター市場」に対し、定番ルートではない独自の体験型コンテンツや、地方の隠れた魅力を訴求することで、さらなる高付加価値化を狙う絶好のチャンスを迎えています。
欧米豪・台湾:スノーリゾート需要で過去最高を更新
欧米豪市場と台湾では、冬の日本ならではの「スノーシーズン需要」が過去最高の数値を牽引しました。
特に豪州は160,700人(14.6%増)で単月過去最高を更新。米国も207,800人(13.8%増)と1月として過去最高を記録しています。
これらは、シドニー〜新千歳間の復便やスクールホリデーの影響に加え、日本のパウダースノーを目的とした長期滞在・高消費客が確実に増加していることを示しています。
台湾も694,500人(17.0%増)で過去最高となっており、春節前であっても日本でのウィンタースポーツや冬の景観を求める層が厚いことが分かりました。
東南アジア:タイ・インドネシアなど17市場で1月として過去最高を記録
東南アジア市場も軒並み好調で、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどが1月としての過去最高を更新しました。
特にインドネシア(17.0%増)やタイ(18.9%増)の伸びが顕著です。
これには、航空座席数の増加やイスラム教の断食期間(ラマダン)前の旅行需要、そして「雪」をキーワードにしたプロモーションが功を奏しています。
例えばフィリピンでは、マニラ〜新千歳間の増便が北海道へのアクセスを改善し、雪体験を求める層を確実に取り込みました。東南アジア市場は、気候の差を活かした「季節性の訴求」が非常に有効なターゲットと言えます。
なぜ明暗が分かれたのか?2026年市場の「二極化」を分析
2026年1月の統計結果は、今後のインバウンド戦略を練る上で極めて重要な「市場の二極化」を浮き彫りにしました。総数が減少した一方で、17市場が過去最高を更新しているという事実は、日本観光の魅力が衰退したのではなく、外部環境リスクに左右されやすい市場と、目的意識を持って訪日する底堅い市場の差が明確になったことを意味しています。
この二極化の背景にある要因を正しく理解することは、不安定な世界情勢の中で持続可能な観光経営を行うための必須条件となります。
政治・経済リスクへの感応度の違い
今回の調査で最も顕著だったのは、市場ごとのリスク感応度です。大幅に減少した中国市場(60.7%減)は、春節の日程という暦の要因以上に、政府による渡航注意喚起や航空路線の調整といった政治的な要因に強く影響を受ける性質が改めて浮き彫りになりました。
これに対し、個人旅行(FIT)が主流の韓国や欧米豪は、日中関係の変動などの外部ノイズに左右されず、自身の旅行目的を優先して動いています。
特にドイツ(43.7%増)やイタリア(36.5%増)といった欧州市場の力強い伸びは、日本というデスティネーションが「トレンド」から「定番の高品質な旅行先」へと成熟し、政治・経済リスクを克服しつつある証拠といえます。
「モノ消費」から「コト消費」への完全移行
もう一つの要因は、旅行者の目的が「買い物」から「体験」へと完全にシフトしたことです。
かつての中華圏主導の「爆買い(モノ消費)」に依存したビジネスモデルは、今月のような春節のズレや政治的要因に直撃を受けます。しかし、今月過去最高を記録した豪州や米国、欧州各国、そして台湾の旅行者の多くは、日本の冬にしかない「スノー体験」や「地方の温泉文化」といったコト消費を目的としています。
豪州(14.6%増)や米国(13.8%増)の好調さは、まさに「日本の冬」という体験価値が世界に定着した結果です。
事業者は、特定の国による大量消費を待つのではなく、ターゲットに合わせた独自の体験価値を磨き上げることが、安定収益の鍵となります。
インバウンド事業者が今すぐやるべき2つの対策
1月の統計データから、観光事業者が今後取るべきアクションは明確です。特定の市場に過度に依存するリスクを回避し、好調な市場のニーズを的確に捉える機動力が必要とされています。総数がマイナスとなった今こそ、攻めの姿勢で戦略を再構築するタイミングです。
①リスク分散:中国「一本足打法」からの脱却
中国市場は依然としてポテンシャルが大きいものの、今月の激減(60.7%減)が示す通り、極めて不確実性が高い市場です。今後は中国だけに頼る「一本足打法」を脱却し、ポートフォリオ戦略を導入することが不可欠です。
今月過去最高を記録したメキシコ(64.0%増)やロシア(98.7%増)、中東地域(47.4%増)といった新興市場や、底堅い欧米豪・韓国を組み合わせ、リスクを分散させる体制を整えましょう。
各国の言語や文化に合わせたプロモーションを同時並行で行い、特定の市場が落ち込んでも他の市場が補完し合える柔軟な集客構造を構築することが、2026年以降の勝ち筋となります。
②「雪」と「桜」の端境期対策
1月に好調だった豪州や欧米豪のスノーシーズン需要は、2月後半から3月にかけて徐々に落ち着きを見せます。その後には3月下旬からの「桜(お花見)」という巨大なピークが控えていますが、その間の「端境期(はざかいき)」をいかに埋めるかが収益の最大化に繋がります。
現在好調な韓国や台湾のリピーター層は、日本の四季に非常に敏感です。「雪が残る風景と、いち早く咲く早咲きの桜」や「冬の名残の味覚」など、この時期ならではの限定的なストーリーを今すぐ発信し始めましょう。
また、17市場で過去最高を記録した追い風を活かし、スノーリゾートから都市部や温泉地への周遊プランを提案し、滞在期間の延長を促すことが有効です。
まとめ:数字の増減に一喜一憂せず「ターゲット」を見極めよ
2026年1月の訪日外客数は全体でマイナスという結果になりましたが、その内実を紐解けば、韓国の単月110万人突破や17市場での過去最高更新という、非常にポジティブなエネルギーに満ちています。中国市場の停滞は一時的な調整局面であり、世界的な日本旅行熱が冷めたわけではありません。
今後のインバウンド経営においては、全体の総数というマクロな数字に一喜一憂するのではなく、「自社のサービスはどの国の、どんな層に刺さっているのか」というミクロな視点がより重要になります。外部環境の変化に強い多角的な集客戦略を立て、好調な市場への投資を加速させることで、2026年という「二極化」の時代をチャンスに変えていきましょう。
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