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MEDIA インバウンドマーケティング総合研究所

訪日客の情報収集、国によってどう違う?欧米豪・韓国・台湾・中国の集客導線を解説

インバウンド向けに情報発信を続けているのに、特定の国からの流入がなかなか増えない。そんな状況に心当たりがあれば、発信している媒体と、その国の旅行者が実際に使っている媒体がずれている可能性があります。
JNTO「日本の観光統計データ」(観光庁「インバウンド消費動向調査」をもとにJNTOが作成)の最新データを見ると、訪日旅行者が出発前に参照する情報源は、国によってかなり異なります。打ち手は、取りにいく市場によってまるごと変わってきます。

※本記事の数値はJNTO「日本の観光統計データ」(2026年4月30日更新)に掲載の、観光庁「インバウンド消費動向調査(2015〜2025年)」による集計値です。複数回答の構成比であり、各年の全国調査結果から算出されています。

1分でわかるこの記事のポイント

  • 同じSNS・動画サイトでも、国によって指すサービスがまったく違う。発信しているつもりでも届いていない市場がある
  • 欧米豪は英語コンテンツが前提。英国だけTripAdvisorへの対応が他より一段重要になる
  • 韓国向けの情報発信は、GoogleでもInstagramでもなくNaverブログが起点になる
  • 台湾の訪日旅行者の9割近くはリピーター。初めて日本に来る人向けのコンテンツは刺さりにくい
  • 全市場に効く施策はない

情報収集行動は国ではなくプラットフォーム構造で決まる

まず前提として理解しておきたいのは、訪日旅行者の情報収集行動を決めているのは、その国のインターネット環境とSNS普及状況だという点です。
日本から見るとSNS・動画サイト・ブログは別々のカテゴリに見えますが、国によっては一つのプラットフォームがこれらを兼ねていたり、まったく別のサービスが同じ役割を担っていたりします。訪日客全体の集計では、SNSが2019年の24.6%から2025年には43.3%に、動画サイトは14.9%から39.6%に拡大しています(※1)。ただしSNS・動画サイトが指す具体的なサービスは市場ごとに大きく異なります。以下、4市場のデータを見ていきます。

米国・英国・豪州:動画・SNSが並走、英国だけ口コミサイトが突出して高い

欧米豪3市場の2025年データを並べると、全体の傾向と英国の特異性が見えてきます(※1)。

動画サイト・SNSは3市場ともに2019年比で大幅に拡大している一方、口コミサイトは全体として低下傾向にあります。米国と豪州は動画が43%前後まで伸びており、この2市場では動画コンテンツの優先度が相対的に高いといえるでしょう。

英国は動画が29.7%と米豪より低い水準にとどまっており、代わりにTripAdvisorなどの口コミサイトが26.8%と3市場の中で最も高い数字を維持しています。2019年の39.5%から低下はしているものの、韓国(7.5%)・中国(6.4%)・台湾(7.8%)と比べると依然として大きな差があります。英国向けに集客するなら、TripAdvisorの英語口コミを積み上げることが他の欧米豪市場より一段重要な施策になるでしょう。

欧州その他:構造は英米豪と近いが、スペインに特徴あり

フランス・ドイツ・イタリアなど欧州各国の数値は、おおむね「動画サイト36〜46%・SNS36〜44%・口コミサイト23〜24%」に収まっており、米国・豪州と近い構造です(※1)。その中でスペインは動画サイト46.4%が欧州最高水準で、口コミサイトが14.2%と欧州の中では低め、かわりに個人ブログが27.0%と比較的高い点が特徴的です。

英語コンテンツの質と量が集客の前提

欧米豪の旅行者は日本語コンテンツを参照できないため、英語での発信量と質が露出に直結します。動画・SNS・口コミサイトのいずれも英語コンテンツが前提で、TripAdvisorやGoogleマップの英語情報が整備されているかどうかが、検討段階の比較対象に入れてもらえるかを左右します。

個人手配が主流、OTA整備が予約への入口

観光庁の調査では、欧米豪各国では観光目的の旅行者の9割以上が個人手配で訪日しています(※1)。OTAで航空券と宿泊を個別に手配し、体験はExpedia・Viator等で探すパターンが一般的です。公式サイトやOTAの情報が整っていることが、予約への前提条件になります。

韓国:個人ブログ43%・SNS47%・動画44%——三つ巴のまま伸びている

訪日客数で最大市場の韓国は、情報収集の構造が他の市場とは明確に異なります。
2025年のデータでは、個人ブログが42.9%、SNSが47.1%、動画サイトが43.8%と、三つの主要チャネルが40%台で並んでいます(※1)。2019年時点では個人ブログが43.7%でトップだったのに対し、動画サイトが9.9%にとどまっていたことを考えると、動画サイトの伸びが著しいことがわかります。

個人ブログ=Naverブログが起点

個人ブログが今も43%近くを維持している背景には、韓国の検索エンジン事情があります。韓国ではGoogleではなくNaverが検索エンジン市場の6割超を占めており、Naverブログが検索結果に強く反映される仕様になっています。旅行者が日本の観光スポットや飲食店をNaverで検索したとき、韓国語で書かれたNaverブログ記事が上位に表示されます。NaverはGoogleと異なり韓国語コンテンツを強く優先するアルゴリズムを採用しているため、日本語や英語のコンテンツは上位に表示されにくく、韓国語コンテンツの有無が露出量に直結します。

SNS・動画は若年層を中心に急伸

SNS(47.1%)と動画サイト(43.8%)の伸びは、20〜30代を中心としたInstagram・YouTube・TikTok利用の拡大が背景にあります(※1)。インフルエンサーが紹介した飲食店や体験スポットへの関心が高く、ビジュアルと感想が一体になったコンテンツとの親和性が高い市場です。
なお、TripAdvisorなどの口コミサイトは韓国では2025年時点でも7.5%と低水準を維持しており、米国・英国・豪州との比較では大きな差があります(※1)。

予約チャネルと旅行スタイル

旅行予約にはInterpark Tripleなど韓国系OTAが利用されることも多く、Booking.comなど国際系OTAと並行して掲載することが基本になるでしょう。滞在日数は2024年の平均で2.8泊と他市場より短く(※1)、リピーターが多いため地方限定やグルメ特化など行動パターンが具体化されやすい市場でもあります。

台湾:動画サイト46%がトップ、SNSも43%に急伸

台湾は動画サイトへの依存が今回取り上げた市場の中で最も高い市場です。
2025年のデータでは動画サイトが45.5%で首位に立ち、SNSも42.7%と急伸しています。2019年時点では動画サイト14.1%、SNS20.7%だったことを考えると、いずれも3倍前後の伸びで、特に動画化の速度が際立ちます(※1)。

使われているのはYouTubeとInstagram

台湾は中国語圏ではありますが、中国本土のプラットフォーム(抖音・小紅書など)は使われず、YouTube・Instagram・TikTokなど国際的なサービスが情報収集の主役です。この点は同じ中国語話者でも中国本土とはまったく異なります。
個人ブログ(29.0%)は2019年の34.0%から緩やかに低下していますが、ブログ文化自体は残っており、深い体験情報を求めるリピーター層が参照するチャネルとして機能しています(※1)。

リピーターが多く、深い情報を求める

JNTO「日本の観光統計データ」(2025年)によると、台湾人の観光・レジャー目的の訪日旅行者のうち、2回目以上のリピーターが87.8%を占めており、6回目以上の経験豊富な層だけでも42.2%に達しています(※1)。2回目以降の訪問者が多い市場では東京・大阪のメジャースポットよりも、地方の体験コンテンツや季節限定の情報への関心が高まりがちです。コンテンツ設計の際は、初訪問者向けの総合案内よりも、具体的な体験価値や地域の固有性を前面に出すほうが響きやすいでしょう。

中国:SNS49%が突出、動画サイトは24%と全体平均より低い

中国市場の情報収集で理解しておくべき最大の特徴は、プラットフォームが中国製サービスで完結しているという点です。
2025年のデータでは、SNSが49.4%と全市場中最高値を記録しています。一方、動画サイトは24.4%と、全体平均(39.6%)や他の市場より低水準にとどまっています(※1)。

SNSの中身はWeChat・小紅書・微博

SNS(WeChat等)の構成比49.4%という数字が示すSNSは、FacebookやInstagramではなく、WeChat(微信)・小紅書(RED)・微博(Weibo)です。
特に近年存在感を高めているのが小紅書で、口コミとビジュアルが融合した口コミ型検索エンジンとして定着しており、旅行前の行き先選びで参照する層が増えています。月間アクティブユーザーは3億人を超え(千瓜数据調査、2024年)、日本関連コンテンツも急増しています(※2)。
動画サイトの構成比が全体平均を下回る理由の一つは、YouTube・TikTokが中国本土では使えないためです。中国版TikTokの抖音(Douyin)が若年層に影響力を持ちますが、この動画サイトカテゴリへの計上方法は調査設計上の解釈にも左右されます。

旅行予約はTrip.comが主流

予約チャネルとして最もシェアが高いとされるのがTrip.com(旧Ctrip)です。日本のOTAや宿泊施設の公式サイトに直接アクセスするケースは欧米圏より少なく、中国系OTAへの掲載が集客の入口になりやすい市場です。

現状と中長期の位置づけ

2026年1〜3月の訪日中国人数は前年比で大幅なマイナスが続いており(1月60.7%減、2月45.2%減、3月55.9%減)、渡航注意喚起と航空便の減便が影響しています。プラットフォームの仕様と規制も独自のため、中国市場向けの施策は中長期で設計する市場として位置づけるほうが現実的でしょう。

市場別データを集客導線設計に活かす3つの視点

1. ブログ型か動画・SNS型かで情報発信の形が変わる

欧米豪向けには動画・SNS・口コミサイトのいずれも英語コンテンツが前提で、英国ではTripAdvisorの対応が特に重要です。韓国向けにはNaverブログへの露出が今も有効で、台湾向けにはYouTubeや動画コンテンツが特に重要です。中国は独自プラットフォームへの対応が前提になります。全市場共通でInstagramを運用する方針は効率が悪く、主力市場に合わせたチャネル選択が現実的です。

2. 情報収集と予約のチャネルが一致しないことを前提に動く

情報収集はSNS・動画、予約はOTAという分離は多くの市場で共通しています。SNSで関心を持ってもらった旅行者がOTAで検索したときに見つかるかどうか、公式サイトに来た際に予約まで至れるかどうかは別の問題です。情報発信と予約導線をセットで整えておくことが、集客の全体設計として必要になります。

3. 口コミサイトの重要度は市場ごとに大きく違う

米国や豪州では口コミサイトが19〜23%、英国では26.8%と欧米豪の中で最も高く、欧州各国でも20%前後の水準です。一方、韓国・中国・台湾では5〜8%台にとどまります。欧米豪向けの集客に注力するなら、TripAdvisorやGoogleマップへの英語口コミ対応は優先度が高い施策で、特に英国では一段重要といえるでしょう。

まとめ

各市場の最新データを並べると、同じ外国人旅行者でも情報収集の構造がまったく異なることが数字で確認できます。動画・SNSが40%超で口コミサイトも残る米国・豪州、口コミサイトが26.8%と突出して高い英国、個人ブログが今も43%を維持する韓国、動画サイトが46%でトップの台湾、SNSが49%に達する中国。それぞれ対応すべきチャネルが異なります。

まずは自社が取りにいきたい市場を一つ決め、そこでのデータと照合してみてください。使い慣れたSNSで発信するから、ターゲット市場の旅行者が実際に使っているチャネルで発信するへの切り替えが、集客導線改善の起点になるはずです。

※参照:

※1:JNTO「日本の観光統計データ」掲載、観光庁「インバウンド消費動向調査(2015〜2025年)」よりJNTO作成。データ更新日:2026年4月30日。韓国の平均滞在日数(2024年)・台湾の訪問回数別構成比(2025年)・各国の旅行形態別構成比(2025年)を含む。https://statistics.jnto.go.jp/
※2:小紅書MAUは千瓜数据(Qiangua)調査(2024年)による。日本関連コンテンツの動向については各種業界レポートで報告されている。

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