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MEDIA インバウンドマーケティング総合研究所

【2026年4月インバウンド動向】マイナス5.5%の中身——「減った」のか「ずれた」のか。前年同月比マイナスも2026年単月最高を更新

2026年4月の訪日外客数は3,692,200人となり、前年同月比5.5%減となりました(JNTO推計値)。ただし、このマイナスの中身を読むと、事情はやや異なります。今年はイースター休暇が例年より早く3月下旬に集中したため、通常なら4月に入るはずの欧米・東南アジアの需要が前月に前倒しになった構造的な要因が大きく、観光需要そのものが落ちているわけではありません。実際、3月に続いて2026年の月間最高を更新しており、1〜4月累計は前年比0.5%減の14,375,800人と、ほぼ横ばいで推移しています。

※本記事の数値はJNTO発表の推計値・暫定値です。数値は今後修正される場合があります。

1分でわかる4月のポイント

  • 前年比5.5%減の主因は中国の56.8%減とイースター休暇の前倒し。需要が消えたわけではない
  • 中国を除く市場は韓国・台湾・フランスなど9市場が過去最高。実態は悪くない
  • ただし中国の減少が年間を通じて続けば、通年での前年比は厳しくなる
  • 6〜8月の夏季需要期が、2026年通年の帰趨を左右する

全体概況:前年比マイナスの裏にある2つの構造要因

4月の前年比マイナスを読み解く際に押さえておきたいのが、2つの構造要因です。
1つ目は、イースター休暇の期ずれです。2026年のイースターは4月上旬でしたが、スクールホリデーが3月下旬に集中した国・地域が多く、欧米豪や一部の東南アジア市場では4月より3月に訪日需要のピークが来ました。3月が過去最高を更新した裏返しとして、4月の数字が相対的に押し下げられています。
2つ目は、中国市場の継続的な落ち込みです。4月の中国は前年比56.8%減の330,700人で、1〜4月累計でも前年同期比55.1%減(約173万人減)と大幅な差が生じています。渡航注意喚起と航空便の減便という要因が続いており、1〜3月と同様の構図が4月も変わっていません。

この2つの影響を除いて考えると、インバウンド全体の基調は引き続き底堅いといえるでしょう。9市場が4月として過去最高を記録していることが、それをよく示しています。

国・地域別動向

東アジア:韓国・台湾が4月最高更新、中国の落ち込みは加速

韓国(878,600人、前年比21.7%増)と台湾(643,500人、同19.7%増)はいずれも4月として過去最高を記録しました。韓国では釜山〜下地島間の新規就航や仁川〜成田・仙台間の増便が寄与しています。台湾は台北桃園〜福岡・富山間の路線拡充と4連休が重なり、着実に積み上がっています。
1〜4月累計は韓国が3,936,700人(同22.0%増)、台湾が2,685,000人(同24.2%増)と、東アジアの主力2市場として安定した伸びが続いています。
香港(226,000人、同14.3%減)は航空座席数の減少に加え、イースター需要が3月下旬に先行したことが響きました。
中国(330,700人、同56.8%減)は、渡航注意喚起が継続しているうえ、訪日需要が落ち着く時期という季節性も重なり、前年を大きく下回りました。1〜4月累計は1,404,300人にとどまっており、前年同期比55.1%減という数字は3月末時点の54.6%減からさらに悪化しています。

東南アジア:断食明け需要が3月に前倒し、それでも底堅さは維持

マレーシア(60,400人、前年比18.1%増)、ベトナム(76,000人、同18.6%増)、インド(41,900人、同12.2%増)がそれぞれ4月として過去最高を記録しました。シンガポール(62,900人、同4.8%増)も過去最高で、東南アジア全体として訪日需要の底上げが続いています。

断食明け休暇が3月中旬に前倒しになったインドネシアとマレーシアの一部は、その影響を差し引きながらも前年を上回っています。フィリピン(88,400人、同2.8%減)はスクールホリデー効果があったものの、イースター需要の3月集中が響いてわずかに前年を下回りました。
インドは1〜4月累計が117,700人(同18.3%増)と着実に伸びており、デリー〜羽田・成田間の路線拡充効果が数字に表れています。

豪州・北米:イースター前倒しで軒並み前年割れ、米国のみが過去最高

豪州(102,500人、前年比11.1%減)、カナダ(70,300人、同3.2%減)は、イースター休暇が3月下旬に集中したことの直接的な影響を受けました。メキシコ(21,200人、同2.7%減)も同様の構図です。
米国(330,000人、同0.8%増)は、イースター需要の前倒しがあったにもかかわらず、継続的な訪日人気に支えられて4月として過去最高をわずかに更新しています。1〜4月累計は1,133,400人(同8.5%増)と堅調です。メキシコは単月では前年をわずかに下回りましたが、1〜4月累計では76,600人(同35.5%増)と引き続き高い伸び率を維持しています。

欧州:フランスが単月過去最高、他は軒並みイースター前倒しの影響

フランス(59,200人、前年比3.7%増)はスクールホリデーを利用した需要が4月にも一定残り、単月として過去最高を記録しました。ロシア(25,800人、同11.4%増)も4月として過去最高で、クルーズ船の寄港や経由便の多様化が寄与しています。
それ以外の欧州市場は、イースター需要の3月下旬集中の影響を受けて軒並み前年割れでした。英国(59,900人、同13.8%減)、ドイツ(48,500人、同15.2%減)、イタリア(30,000人、同34.2%減)、スペイン(19,000人、同21.6%減)、北欧地域(19,900人、同12.6%減)はいずれも需要そのものが消えたわけではなく、3月への前倒しという構造的な要因によるものでしょう。ウクライナ情勢に伴う飛行ルート変更によるフライト時間の増加が、欧州全体の懸念材料として引き続き残っています。

中東地域:航空便の運休・減便が下押し

中東地域は22,300人(前年比21.4%減)。中東情勢に伴う航空便の運休・減便が影響しており、1〜4月累計は66,500人(同11.5%減)と前年を下回っています。

インバウンド事業者が読み取るべき3つの示唆

1. 前年比は「何と比べているか」を意識する

イースターが3月下旬に集中した年と4月上旬にある年を前年比で比べると、暦の違いだけで数字が大きく動きます。今月がその典型で、3月が過去最高を出した裏返しとして4月が押し下げられています。

事業計画や施策評価に月次の前年比を使う場合、イースターのような移動祝日が絡む月は補正なしに比較すると実態を見誤りがちです。主要市場の祝日カレンダーを手元に置きながら数字を読む習慣は、今後も役に立つでしょう。来年のイースターは3月28日の予定で、今年と同様に3月下旬への前倒しが起きる可能性があります。来年の4月も同じ構図で数字が押し下げられる可能性があり、前年比の解釈には同じ注意が必要になるでしょう。

2. 欧州市場は「全体」で見ると見えなくなるものがある

今月の欧州はフランスが単月過去最高(前年比3.7%増)の一方、イタリアは34.2%減と大きく落ちています。どちらもイースター前倒しの影響を受けているはずですが、振れ幅に大きな差があります。北欧地域(12.6%減)やドイツ(15.2%減)とも異なる動きで、欧州をひとくくりにした分析では見えてこない市場ごとの差が出てきています。
欧州向けに施策を組む際は、国別の季節性や航空路線の状況を個別に確認する必要がありそうです。

3. 東南アジアの伸びは「訪中旅行との綱引き」でもある

タイ・シンガポール・マレーシアについて、JNTO資料内では「訪中旅行の継続的な人気の影響等があるものの」という注記が繰り返し登場します。東南アジア各市場が訪日需要を伸ばしながらも、中国への旅行需要と競合している構図が透けて見えます。

現時点では訪日優位が続いていますが、中国がインバウンド強化と並行して自国への観光誘致を積極化した場合、東南アジアからの訪日需要が圧迫されるリスクは頭に入れておきたいところです。東南アジア市場への依存度を高めるほど、この綱引きの行方が自社の数字に直結してきます。

まとめ:通年で見たとき、2026年はどうなるか

1〜4月累計の前年比は0.5%減。中国の約173万人減を他市場がほぼ吸収しているという意味では、上出来といえる水準です。ただし、これが通年でも維持できるかどうかは、中国の動向次第でかなり変わってきます。
2025年通年の訪日外客数は約4,268万人でした。仮に中国が年間を通じて55%前後の減少水準で推移した場合、単純計算で前年比マイナス数百万人規模の押し下げ要因になります。他市場の伸びがそれを補えるかどうかは、5月以降の夏季需要期の数字が一つの分水嶺になるでしょう。欧米豪・東南アジアで休暇需要が最も集中する6〜8月は、中国以外の市場が最も動くタイミングです。ここで昨年超えの水準を出せるかどうかが、通年の帰趨を左右しそうです。

参照:訪日外客数(2026年4月推計値)|JNTO(日本政府観光局)

関連記事:【2026年3月インバウンド動向】訪日客数362万人で3月過去最高を更新——桜需要が牽引、中国市場は急減が続く


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