ホテルのインバウンド対応、何から始める?外国人客に選ばれる5ステップ
「外国人のお客様を増やしたいけれど、何から手をつければいいのか分からない」。そう感じたまま、インバウンド対応を後回しにしているホテルは少なくありません。設備やサービスには自信があるのに、外国人の予約がなかなか入らない。その原因は宿の質ではなく、外国人客が宿を探す場面で「見つけてもらえる状態」になっているかどうかにあることが多いものです。
数字を見ると、訪日需要は高い水準にあります。2025年の訪日外客数は4,268万人で、過去最多を更新しました*1。一方で、2026年上半期(1〜6月)は2,108万人と前年同期比2.0%減で、中国市場の落ち込みが影響しています*2。全体としては高水準でも、国・地域ごとの動きは一定ではありません。だからこそ、特定の市場に頼りすぎず、どの国のお客様にも見つけてもらえる土台づくりが大切になります。
本記事では、ホテルがインバウンド対応を始めるための手順を、今月から着手できる5つのステップに整理しました。大きな設備投資は必要ありません。日々の運用に「仕組み」を加えていく考え方で、自館の状況と照らし合わせながら読み進めてください。
【目次】
ホテルのインバウンド対応は何から始めればいい?
結論から言えば、最初にやるべきことは「自館が今どこに掲載され、どの言語で情報を出しているか」の確認です。そのうえで、次の順番で進めるのが現実的です。
- 掲載状況の棚卸し(Googleマップ・OTA・口コミサイト・SNS)
- 説明文・写真の多言語化
- 口コミ対応の仕組みづくり
- 到着前後の案内の多言語化
- スタッフ教育と運用の定着
10〜30室規模の小規模なホテルであれば、まずステップ1〜3に絞って始めても十分です。ステップ4・5は、体制に余裕が出てから段階的に進めてください。
外国人客はどのようにホテルを探し、選んでいるのか
施策を考える前に、外国人客が宿を決めるまでの流れを押さえておきましょう。日本人の宿探しとは、情報の集め方がやや異なります。
複数のサービスを見比べて決める傾向がある
外国人客は、ひとつのサイトで完結させず、複数のサービスを行き来しながら比較する傾向があります。
- 複数サービスの併用:Googleマップ、Booking.com、Agoda、Expediaなどを見比べます
- SNSでの情報収集:InstagramやRED(小紅書=中国発の口コミSNS)で、実際の宿泊写真や体験談を探す人もいます
- 言語の壁:日本語の情報しかないと、候補に入る前に離脱されやすくなります
- 口コミの件数と評価:レビューの数と点数が、最終的な判断材料になりやすい項目です
日本語のホームページだけで情報発信をしている場合、外国人客の比較検討の場に、そもそも載っていない可能性があります。
予約までの3つの関門「認知・検討・確約」
IMJでは、外国人客が予約に至るまでの流れを「認知」「検討」「確約」の3つの関門として整理し、「予約3ゲートウェイ」と呼んでいます。どの関門でつまずいているかが分かると、優先して取り組むべきことが見えてきます。
認知:複数のサービスで「見つかる」段階
最初の関門は、検索結果やOTA(オンライン旅行会社)の一覧に表示されるかどうかです。
- Googleマップの検索結果に表示されている
- Booking.com、Agoda、Expediaなど主要OTAに掲載されている
- TripAdvisorなどの口コミサイトに情報がある
- InstagramなどのSNSで写真が見られる
検討:情報と口コミを「比較される」段階
見つけてもらえたら、次は他の宿と並べて比べられます。ここで見られるのは、情報の分かりやすさと安心感です。
- 説明文が多言語で、内容が正確か
- 口コミの件数と評価が、近隣の宿と比べて見劣りしないか
- 写真や動画から滞在のイメージがつかめるか
- 料金表示が明瞭で、追加料金への不安がないか
確約:安心して「予約・来館」できる段階
予約後から当日までの案内も、満足度を左右します。ここでの行き違いは、低評価の口コミにつながりやすいため注意が必要です。
- 予約確認メールが多言語で分かりやすい
- チェックイン前の案内(アクセス・ルール・サービス)が明確
- 到着時の対応がスムーズ
- 滞在中の困りごとに速やかに対応できる
ホテルのインバウンド対応を始める5ステップ
ここからは、3つの関門を順に整えていくための具体的な手順です。すべてを同時に進める必要はありません。今週できることから始め、月単位で積み上げていきましょう。期間はあくまで目安です。
ステップ1:掲載状況を棚卸しする(目安:今週中)
最初に、自館がどこに載っていて、どこに載っていないかを確認します。意外と正確に把握できていないホテルは多いものです。
- Googleマップ(Googleビジネスプロフィール)の登録内容を確認する
- Booking.com、Agoda、Expediaなど主要OTAの掲載状況を確認する
- TripAdvisorの登録状況と口コミを確認する
- InstagramやREDで自館がどう言及されているかを調べる
- 確認結果を一覧にまとめ、未掲載のサービスを洗い出す
この作業は1〜2時間ほどで終わります。見つかった「抜け」が、そのまま次の取り組みになります。
ステップ2:説明文・写真を多言語化する(目安:2週間〜1ヶ月)
掲載の抜けを埋めたら、次は中身の多言語化です。優先する言語は、立地や客層によって変わります。まずは英語を整え、必要に応じて中国語(簡体字・繁体字)や韓国語へ広げていくのが一般的です。
- Googleビジネスプロフィールの説明文に英語を併記する(機械翻訳のままにせず、自館ならではの表現は手直しする)
- 各OTAの施設説明を、対応している言語で登録する
- 写真に、どの部屋・どの設備かが分かる説明を添える
- 公開前に、ネイティブスピーカーや翻訳サービスで誤解がないか確認する
自館だけで進めるのが難しい場合は、IMJのようなインバウンド専門の多言語対応支援を活用する方法もあります。翻訳の正確さは信頼に直結するため、無理のない範囲で進めましょう。
ステップ3:口コミ対応の仕組みをつくる(目安:1ヶ月)
口コミへの返信は、これから予約を検討する人に向けた「接客の見本」でもあります。返信がないままだと、検討の段階で不安を与えてしまうかもしれません。
- Googleマップ・OTA・TripAdvisorの新着口コミを確認する担当者を決める
- 肯定的な口コミへの返信テンプレートを、多言語で用意する
- 否定的な口コミには、相手を責めず、改善に向き合う姿勢を示すガイドラインを整える
- 翻訳ツールを使い、無理なく返信できる体制をつくる
- 最初の2週間は毎日、その後は週2回程度など、続けられる頻度に落ち着ける
なお、口コミの投稿と引き換えに割引や特典を提供することは、Googleのポリシーで禁止されています。QRコードで投稿ページへ案内するなど、自然に書いてもらえる導線から始めてください。
ステップ4:到着前後の案内を多言語で標準化する(目安:1.5〜2ヶ月)
「確約」の関門を支えるのが、到着前後の案内です。仕組みにしておくと、スタッフの負担も、ゲストの不安も軽くなります。
- 館内ルール・アメニティ・Wi-Fiの接続方法など、よくある質問を多言語の資料にまとめる
- QRコードから多言語のご案内ページを開けるようにする
- 予約確認メールとチェックイン前のメールを多言語化する
- フロントスタッフ向けに、基本的な英語フレーズ集を用意する
- 試験的に運用し、外国人ゲストの声をもとに改善する
ステップ5:スタッフ教育と運用を定着させる(目安:3ヶ月目以降)
最後は、つくった仕組みを組織に根づかせる段階です。担当者ひとりに頼らない体制が、継続のポイントになります。
- 月1回のミーティングで、外国人ゲストの対応事例を共有する
- 言語の壁を越える対応について、定期的に研修を行う
- 口コミ返信の内容を月1回見直す
- OTAなどの掲載情報を、四半期ごとに更新する
- 外国人ゲストの満足度を、別に確認する
モデルケース:5ステップを進めた場合のイメージ
ここでは、地方都市にある30室規模のホテルを想定したモデルケースを紹介します。実在する施設の実績ではなく、取り組みが積み上がっていく流れをイメージしていただくための例です。成果は立地や競合状況によって異なります。
取り組み前:外国人客の予約はごくわずか
Googleマップには載っているものの、説明文は日本語のみ。主要OTAへの登録は一部にとどまり、口コミへの返信もしていない状態です。外国人客の宿泊はごくわずかで、スタッフも外国語での対応に不安を感じています。
ステップ1〜2の後:「見つかる」状態が整う
未登録だったOTAへの掲載と、Googleマップの説明文の英語化を行います。外国人客からの問い合わせが少しずつ入りはじめ、予約につながるケースも出てきます。まず「見つかる」状態を整えることが、最初の変化につながります。
ステップ3〜4の後:評価と当日の運営が安定する
口コミへの返信が習慣になり、新しい口コミも集まりやすくなります。到着前後の案内を多言語にしたことで、チェックイン時の確認や行き違いが減り、スタッフの負担も軽くなります。
ステップ5の定着後:組織全体で対応できる
月1回の共有や研修を続けることで、外国人対応への心理的なハードルが下がります。口コミを見て予約するお客様や、再訪されるお客様も現れ、取り組みが次の予約を生む流れができていきます。
よくある質問:ホテルのインバウンド対応の始め方
中国語・韓国語への対応は必要?どの言語から優先すべき?
まずは英語を優先し、その後は自館の客層や立地に合わせて広げるのがおすすめです。2025年の訪日客数は、韓国が約946万人、中国が約910万人、台湾が約676万人で、東アジアが上位を占めています*3。ただし、国・地域ごとの動きは年によって変わります。最近の予約や問い合わせの国籍を確認し、実際に来ている層に合う言語から整えていくと、無理なく進められます。
口コミ返信に時間を取られる場合、どう効率化すればいい?
鍵になるのは「テンプレート化」と「翻訳ツールの活用」です。高評価の口コミには共通の感謝のフレーズを使い、低評価の口コミだけ個別に丁寧に対応すると、負担を抑えられます。返信文を翻訳ツールで多言語化し、最後に人の目で確認する流れにすれば、品質も保ちやすくなります。「毎週月曜の午前に前週分をまとめて返信する」のように時間を決めておくと、続けやすくなります。
小規模なホテルでも5ステップはすべて必要?
すべてを一度に行う必要はありません。10〜30室規模であれば、ステップ1〜3を優先するのが現実的です。Googleビジネスプロフィールの整備、OTAへの掲載、簡単な多言語の説明文づくりは、大きな費用をかけずに始められます(OTAは掲載自体は無料でも、成約時に手数料がかかる仕組みが一般的です)。
自社での対応が難しい場合、外注するなら何から?
専門性が高く負担も大きい、多言語対応(ステップ2)と口コミ管理(ステップ3)から検討するとよいでしょう。サービス範囲や料金は会社によって異なるため、複数社に相談して比べることをおすすめします。
始めてからどのくらいで成果が出る?
立地・競合・既存の口コミの状況によって大きく異なるため、一概には言えません。一般的には、掲載や多言語化の効果は問い合わせの増加として先に表れ、予約数の変化はそれより遅れてくる傾向があります。最初の数ヶ月は検証と改善の期間と捉え、月1回の見直しを続けることが大切です。
まとめ:小さな実行を、月単位で積み重ねる
外国人のお客様に選ばれるホテルづくりは、一度の大きな施策で完成するものではありません。「見つかる」「比較される」「安心して予約できる」という3つの関門を、ひとつずつ整えていくことが基本になります。
まずは今週中に、ステップ1の掲載状況の棚卸しだけ行ってみてください。Googleマップ、主要OTA、TripAdvisorの登録状況と、説明文の言語を確認するだけなら、1〜2時間で終わります。来月は英語の説明文を整え、その次の月には口コミへの返信を始める。その積み重ねが、外国人のお客様に安心して選んでいただける土台になります。
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