2027年のインバウンド対策|今から備えたい3つのポイントと実践ステップ
「2027年に向けて、インバウンド対策は何から手をつければいいのだろう」と迷っている飲食店・宿泊施設の経営者の方は多いのではないでしょうか。訪日客数は2025年に過去最高を更新しましたが、2026年に入ってからは国・地域ごとに動きが分かれ、状況が少し複雑になっています。
結論からお伝えすると、2027年のインバウンド対策で大切なのは、「特定の国や一時的な追い風に頼らず、どの国のお客様にも選ばれる土台を整えておくこと」です。具体的には、Googleマップなどの情報を整える、多言語で分かりやすく伝える、対応を個人任せにせず仕組みにする、という3点が軸になります。
本記事では、最新の公的データで2026年の動きを確認したうえで、2027年に向けて今から準備したい3つのポイントと実践ステップを整理します。自店の現状と照らし合わせながら、できるところから見直してみてください。
【目次】
2026年の訪日客はどう動いている?データで現状を確認
準備の方向性を決めるために、まず現在地を数字で押さえておきましょう。ポイントは「総数」ではなく「国・地域ごとの内訳」です。
2025年は過去最高、2026年は前年を下回る月も
2025年の訪日外客数は4,268万人で、前年(3,687万人)から15.8%増え、過去最高を更新しました*1。訪日外国人旅行消費額も約9.5兆円と過去最高で、1人あたりの旅行支出は約22.9万円でした*3。
一方、2026年1〜8月の累計は2,762万6,300人で、前年同期比2.7%減となっています*2。8月単月も309万8,900人(前年同月比9.6%減)でした。「訪日客は増え続ける」と一括りに考えるのではなく、増えている市場と減っている市場を分けて見る必要が出てきています。
国・地域によって明暗が分かれている
2025年の国・地域別の訪日客数は、次のとおりです*1。
- 韓国:約946万人
- 中国:約910万人
- 台湾:約676万人
- 米国:約331万人
- 香港:約252万人
2026年8月の動きを前年同月と比べると、韓国は28.7%増、台湾は7.3%増、香港は9.4%増と伸びている一方、中国は59.0%減でした*2。JNTO(日本政府観光局)は、中国については政府による日本への渡航の注意喚起の影響があると説明しています*2。
つまり、これまで特定の市場に多く来てもらっていたお店ほど、足元の来店状況が変わりやすい局面にあります。反対に、韓国・台湾・香港のように近距離で何度も訪れるお客様に選ばれる準備が、これまで以上に意味を持ちはじめています。なお、今後の動向は為替や航空座席数、各国の情勢などに左右されるため、数字は毎月JNTOの発表で確認することをおすすめします。
政府は2030年に6,000万人・15兆円を目標に
中長期の方向性として、2026年3月に閣議決定された第5次観光立国推進基本計画では、2030年に訪日客6,000万人、訪日消費額15兆円という目標が据え置かれました*4。あわせて、地方への誘客や、オーバーツーリズム(観光客の集中による混雑や住民生活への影響)への対策が重視されています*4。
国としては引き続き訪日客の受け入れを進める方針ですが、数だけでなく「地域で消費してもらうこと」「質を高めること」に重心が移っていると読み取れます。個店にとっても、量より「選ばれる理由づくり」が大切になっていくと考えられます。
2026年11月から免税制度が変わります
小売店や免税対応をしている施設では、制度面の変化にも注意が必要です。2026年11月1日の販売分から、免税制度は「リファンド方式」に切り替わります*5。これは、店頭では税込価格で販売し、出国時に税関で持ち出しが確認された後に消費税相当額が返金される仕組みです*5。
現行制度との併用期間は設けられていません*5。免税手続きを行っている場合は、利用中の免税手続システムの事業者などにも早めに確認しておきましょう。飲食店で免税対応をしていない場合は、直接の影響は限定的ですが、お客様から質問を受ける可能性はあります。
2027年に向けて準備したい3つのポイント
ここからは、データから見えてきた変化を踏まえて、2027年に向けて押さえておきたい3つのポイントを紹介します。
ポイント1:特定の国だけに頼らない、基本の情報整備
国・地域ごとに増減がある以上、「この国のお客様だけを想定する」運営は変化に弱くなります。まず整えたいのは、どの国のお客様も最初に目にする基本情報です。
- Googleビジネスプロフィール:営業時間・住所・メニュー・写真を最新の状態にします
- 国・地域別のプラットフォーム:中国のお客様向けには大衆点評、台湾・香港のお客様向けには樂吃購(ラーチーゴー)!などの活用が考えられます
- 情報の統一:媒体ごとに営業時間や価格がずれていると、来店前に比べるお客様の不信感につながります
すべてを一度に始める必要はありません。自店に来てくださっているお客様の国・地域を確認し、優先順位をつけて進めましょう。
ポイント2:「伝わる」多言語対応に磨きをかける
多言語メニューやGoogleマップへの登録は、すでに多くのお店が取り組んでいます。これから差がつくのは、「翻訳してあるか」ではなく「お客様にとって分かりやすいか」です。
たとえば、辛さやスパイスの有無、アレルギー情報、食材の説明、料理写真の品質などは、注文の判断に直結します。機械翻訳は便利ですが、ニュアンスまで伝わらないことがあるため、重要な部分は人の目で確認する体制が現実的です。写真やピクトグラム(絵記号)を組み合わせると、言語に頼らず伝えられます。
ポイント3:個人の対応力から、組織の仕組みへ
「英語が話せるあのスタッフがいるから大丈夫」という体制は、その人が休みの日や退職した後に対応力が落ちてしまいます。人手不足が続く中、特定の人に頼らず、誰が対応しても一定の品質を保てる状態をつくることが、安定した運営につながります。
予約・キャンセル・クレーム対応などをマニュアルやチェックリストにしておくと、属人化を防げるだけでなく、スタッフの負担も軽くなります。自店だけで進めるのが難しい場合は、IMJのようなインバウンド専門の支援サービスを活用し、戦略の整理から運用体制づくりまで相談する方法もあります。
今から始める4つの実践ステップ
3つのポイントを、実際の作業に落とし込んだものが次の4ステップです。週単位・月単位で進められる内容を選びました。
ステップ1:メニューと掲載情報を見直す
翻訳に入る前に、メニューの「内容」を見直します。辛さ・アレルギー・食材・価格など、お客様が知りたい情報が整理されているかを確認しましょう。そのうえで多言語化し、Googleや各プラットフォームの表記をそろえます。
3か月の計画なら、1か月目は内容の整理、2か月目は多言語化、3か月目は各媒体の統一、という進め方がおすすめです。
ステップ2:予約・キャンセル・注意事項を仕組みにする
口頭での説明に頼ると、「言った・言わない」のトラブルにつながりやすくなります。予約時点で次のような情報を伝える仕組みを整えましょう。
- キャンセルポリシーの明文化:予約画面やメールに記載し、同意してもらいます
- 予約枠の一元管理:Klookなど複数の予約経路を使う場合は、予約管理システムなどで二重予約を防ぎます
- 注意事項の見える化:持ち込みや撮影などのルールを、ピクトグラムや多言語の掲示・QRコードで伝えます
「禁止」だけを並べず、「こうしていただけると助かります」という前向きな伝え方にすると、お客様にも受け入れられやすくなります。
ステップ3:口コミ・SNSの運用ルールを決める
口コミは、返信や更新が止まると店の印象にも影響します。大切なのは、「誰が・いつ・どの媒体を」担当するかを決めておくことです。月に一度でも返信の日を決め、言語別の返信テンプレートを用意しておくと、翻訳ツールと人の確認を組み合わせて無理なく続けられます。
なお、口コミ投稿の見返りに割引や金品を提供することは、Googleのポリシーで認められていません。QRコードの設置など、自然に書いてもらえる導線づくりから始めましょう。
ステップ4:スタッフの負担を減らす
現場の負担が大きいままでは、対応が続きません。次のような工夫で、スタッフを支える体制をつくりましょう。
- 指差しで使える多言語の接客シートを用意する
- 翻訳アプリや音声翻訳機を、誰でも使える場所に置く
- 対応が難しかった事例を月に一度共有し、対応方針をそろえる
自店の現在地が分かる「対応レベル3層モデル」
IMJでは、インバウンド対応の進み具合を3つの層に分けて整理しています。自店がどの段階にあるかの目安として、チェックしてみてください。
第1層:基礎対応(まず整えたい最低ライン)
- GoogleビジネスプロフィールやTripAdvisor、大衆点評など、主要媒体の情報が最新になっている
- 多言語メニューやQRコードメニューを用意している
- 予約時にキャンセルポリシーを伝えている
この土台がないと、上の層の施策が十分に機能しません。まずはここから着手しましょう。
第2層:差別化(選ばれる理由をつくる)
- 国・地域ごとの好みに合わせたメニューや体験を用意している
- 複数の媒体で口コミ・SNSの返信や更新が続いている
- 指差しシートなど、現場で使える道具がそろっている
第3層:持続(担当者が変わっても続く)
- 特定のスタッフに頼らず、組織として対応できている
- 満足度やリピート率を見て、改善を続けている
- インバウンド対応を、スタッフの成長機会として位置づけている
事例:基本を整えて外国人来店が増えたケース
最後に、取り組みの進め方をイメージしやすいよう、事例を紹介します。なお、数値は傾向を示す目安であり、成果を保証するものではありません。
IMJ支援事例:GBP整備と投稿更新で来店比率が上昇
IMJが支援した都内のある飲食店では、Googleビジネスプロフィールの多言語での整備、メニュー写真20枚以上の掲載、QRコードを使った口コミ獲得、週2回の投稿更新に取り組みました。その結果、約6か月で外国人来店比率が15〜20%程度に達した傾向が見られました*6。
大がかりな施策ではなく、「見つけてもらう・選んでもらう」ための基本を整えて続けたことが成果につながった例といえます。
よくあるケース:特定の担当者に対応が集中している店舗
次は、現場でよく見られる状況を例にした想定ケースです。英語が話せる店長だけが外国人のお客様に対応していると、その店長がいない日は対応の質が大きく変わってしまいます。
こうしたお店では、翻訳ツールの導入、接客フローのマニュアル化、言語対応ができるスタッフをシフトに組み込むといった見直しで、誰がいても一定の対応ができる状態に近づけます。時間はかかっても、対応の安定は少しずつ整っていきます。
よくある質問:2027年のインバウンド対策
2027年のインバウンド対策は、何から始めればいい?
まずは、Googleビジネスプロフィールなどの掲載情報の更新と、多言語メニューの整備から始めるのがおすすめです。すべてのインバウンド施策の土台になり、1〜2か月ほどで形にしやすい取り組みです。そのうえで、予約・キャンセルの仕組みや口コミの運用ルールへと広げていきましょう。
2027年も訪日客は増え続ける?
政府は2030年に訪日客6,000万人という目標を掲げています*4。ただ、2026年1〜8月は前年同期比2.7%減となっており*2、市場ごとの増減が大きくなっています。将来の数字を断定するのは難しいため、最新のJNTOの発表を確認しながら、特定の国に偏らない準備をしておくことが大切です。
中国のお客様が減っている今、中国向け対策は不要?
必要性がなくなったわけではありません。2025年の中国からの訪日客は約910万人と、依然として大きな市場です*1。2026年の動きは渡航注意喚起などの影響を受けているため*2、今後の変化に備えて、大衆点評などの情報を最新の状態にしておくと安心です。そのうえで、韓国・台湾・香港など増えている市場への対応も並行して進めましょう。
外国人スタッフの採用と多言語ツール、どちらを優先すべき?
二択ではなく、組み合わせるのが現実的です。まずは翻訳ツールやQRコードメニューなど、誰でも使える仕組みを整え、そのうえで必要に応じて言語に対応できるスタッフを配置します。個人のスキルに頼りすぎないことが、運営の安定につながります。
多言語化やインバウンド対応に使える補助金はある?
国や自治体、年度によって制度や内容が異なります。事業所のある地域の自治体や商工会議所のほか、観光庁などの最新の公募情報を確認しましょう。補助金の有無にかかわらず進められる、情報整備やマニュアル化は先に取り組んでおくことができます。
まとめ:2027年のインバウンド対策は「土台づくり」から
2027年に向けたインバウンド対策の要点は、次の3つです。国・地域ごとに増減がある今だからこそ、特定の市場に偏らない基本の情報整備を行うこと。分かりやすさを重視した多言語対応を整えること。そして、個人任せにせず、仕組みで対応できる体制にすることです。
まずは、今週中にGoogleや各媒体の掲載情報を確認して食い違いを洗い出し、今月中に予約・キャンセル・トラブル対応のルールを書き出してみましょう。第1層の「最低ライン」からで構いません。小さな準備の積み重ねが、これからの変化にも対応できる店づくりにつながります。
インバウンドマーケティングジャパンでは、MEO対策代行から多言語対応支援、SNSマーケティング、インバウンドコンサルティングまで、インバウンド集客を一気通貫で支援しています。「自店がどの段階にあるのか分からない」「何から手をつければいいか迷っている」という方は、お気軽にご相談ください。
参考・出典
- 国籍/月別 訪日外客数(2003年~2026年)※2025年の年間・国別数値|JNTO(日本政府観光局)
- 訪日外客数(2026年8月推計値)|JNTO(日本政府観光局)
- インバウンド消費動向調査 2025年暦年(速報)|国土交通省観光庁
- 観光立国推進基本計画(第5次・2026年3月27日閣議決定)|国土交通省観光庁
- 新免税制度(リファンド方式)について|国土交通省観光庁
- 参照:MEO対策による外国人集客改善事例(匿名)|インバウンドマーケティングジャパン