最初に戦略を決め、そのあとマップ、口コミ、発信と広告の順に整えます
「訪日客に来てほしいが、何から手を付ければいいのか分からない」。そう悩む店や施設は少なくありません。英語メニューを作り、SNSも始めたのに、来店が増えた実感がないという声もよく聞きます。
先に答えを書きます。出発点は戦略です。誰に(どの国の、どんな旅行者に)、何を、どこで届けるのか。これを、業種・業態との相性、立地、年間の時期の波から決めます。そのうえで、多くの店では①Googleマップの多言語対策(MEO)、②口コミ、③SNSと広告の順に整えていきます。
戦略が決まらないまま施策を始めると、来てほしい国とは違う言語でメニューを作ったり、その国ではあまり使われていないSNSに投稿し続けたりして、手間と費用が成果につながりません。施策の出来より先に、狙いが合っているかで結果の大きさが決まります。
この記事では、戦略の決め方から、施策の順番、自分たちでやる範囲と会社に頼む範囲までの全体像を整理します。会社ごとの対応範囲と費用の目安は、インバウンド対策会社の比較と費用相場に分けました。
手順1 誰に、何を、どこで届けるかを決めます
マップも口コミもSNSも、手段です。手段を選ぶ前に、次の3つの問いに答えを出します。これが戦略です。
| 問い | 決めること |
|---|---|
| 誰に | どの国・地域の、どんな旅行者に来てほしいか(国と、旅の目的や旅の仕方) |
| 何を | その人たちに、何を看板にして、いくらで、どう予約してもらうか |
| どこで | 旅マエ・旅ナカのどの場面で、どのアプリやサイトで知ってもらうか |
誰に:国は、業種・業態、立地、時期から決めます
狙う国は、希望だけで決めず、次の5つを重ねて決めます。
| 見るもの | 確かめること |
|---|---|
| 業種・業態との相性 | 飲食、美容、宿泊、体験などの業種と、価格帯、予約制か、滞在時間などの業態が、その国の人の好みや旅の仕方に合うか。食事の制限(宗教や菜食)など、受け入れの条件に応えられるか |
| 立地 | 近くの観光地、ホテル、駅に、どの国の旅行者が多いか。店の前を歩いている人は誰か |
| 時期(年間の波) | 国ごとに、日本に来る時期が違います。おおむね、春節(旧正月)の1〜2月は中華圏、国慶節の10月初めは中国本土、夏休みと年末年始は欧米・オーストラリアからの旅行者が増えやすく、桜や紅葉の季節は多くの国で増えます。店の繁忙期・閑散期と重ねて見ます |
| いまの来店客 | すでに来ている訪日客は、どの国の人が多いか。Googleの口コミは何語で書かれているか |
| 市場の大きさ | 国ごとの訪日客数と旅行支出。全体では、2026年9月の訪日外客数が約310.4万人(推計値・JNTO)、1月から9月の累計が約3,073.0万人でした。1人当たりの旅行支出は約23.4万円です(2026年7〜9月期・一般客・観光庁の1次速報)。ただし9月は前年同月より約5.0%少なく、1月から9月の累計も前年同期より約2.9%少ないため、毎月増え続けているわけではありません。国別の数字は当社の訪日データで確かめられます |
上の3つ、業種・業態との相性、立地、時期が出発点です。市場が大きい国でも、業種と合わない、店の近くを通らない、店が空いている時期に来ないのであれば、来店にはつながりにくくなります。年間で見ると、1つの国に絞るより、時期ごとに力を入れる国を組み替えるほうが、席が埋まりやすい場合もあります。
国が決まったら、旅の目的や旅の仕方まで絞ります。同じ国でも、食事を目当てに来る人、買い物の合間に寄る人、初めて日本に来る人、何度も来ている人とでは、店の探し方も選ぶ基準も違います。
何を:その人たちに合わせて、看板・価格・予約の仕方を整えます
来てほしい人が決まったら、店の側もその人たちに合わせます。ここを飛ばすと、見つけてもらえても選ばれません。
- 看板にするもの:その国の人が写真を見て行きたくなる一品、体験、内装はどれか。日本人向けの一番人気と同じとは限りません。
- 価格とメニュー:旅行中の予算に合うか。言葉が分からなくても選べるコースやセットがあるか。
- 受け入れの条件:食事の制限、支払い方法、その言語での案内に応えられるか。
- 予約の仕方:その国の人が使い慣れた方法で予約できるか。予約なしで来る人が多いなら、入りやすさを優先します。
どこで:国と旅の場面で、知ってもらう場所が変わります
訪日客が店を探すタイミングは2回あります。1回目は日本に来る前の「旅マエ」です。SNSや検索、旅行サイトで、行きたい街の店を探します。2回目は日本に着いてからの「旅ナカ」です。こちらは、地図アプリで今いる場所の近くを探すのが中心になります。
どちらの場面でも、使うアプリは国によって違います。当社の支援の現場では、おおむね次の傾向があります。
| 国・地域 | 店を探すときに使われやすいもの |
|---|---|
| 韓国 | NAVER(検索・地図・ブログ)、Instagram、Googleマップ |
| 中国本土 | 小紅書(RED)、大衆点評。Googleのサービスは、基本的に中国本土では使えません |
| 台湾・香港 | Googleマップ、Instagram、Facebook |
| 欧米・オーストラリア | Googleマップ、Tripadvisor |
たとえば大阪のマッサージ店です。日本語で検索すると11位で、競合に埋もれていました。ところが、実際に予約する訪日客の多くは母語で探していました。当社が韓国語を優先して整えたところ、韓国語の検索で1位になり、Google口コミは1年で952件から1,874件に増えました(2025年8月と2026年8月の比較・当社の支援事例)。同じ店でも、どの国の人に向けて整えるかで、見え方が全く違います。
決め方の例:架空の天ぷら店で考えると
3つの問いをどうつなげるか、架空の店で示します。実在の店ではなく、考え方の例です。
| 問い | 考えたこと | 決めたこと |
|---|---|---|
| 誰に | 店の近くに観光地があり、台湾と欧米からの旅行者が多く歩いている。いまの口コミも、英語と中国語(繁体字)が多い | 台湾と欧米から、日本食を目当てに来る個人旅行者 |
| 何を | 揚げたてをカウンターで出す様子は、写真や動画で伝わる。一方で、日本語だけのお品書きでは選びにくい | カウンターの「おまかせ」を看板にして、写真つきの英語・繁体字のコースを用意する。予約は、旅行者が使い慣れた方法で受けられるようにする |
| どこで | 台湾も欧米も、旅ナカはGoogleマップで探す人が中心。台湾の人は、旅マエにInstagramでも店を探す | まずGoogleマップの英語・繁体字の対策と口コミ。そのあと、台湾向けにInstagramと広告を足す。広告は、旧正月など台湾からの旅行者が増える時期に合わせて厚くする |
もし同じ店が中国本土からの団体客を狙うなら、答えは変わります。看板も、予約の仕方も、知ってもらう場所(小紅書や大衆点評)も別になります。戦略が変われば、施策もその順番も変わります。
3つの問いの答えで、成果の大きさが決まります。答えは業種・業態、立地、時期によって店ごとに変わり、国ごとの市場や探し方も比べて判断する必要があるため、ここはプロの手を借りて決めることをおすすめします。当社のコンサルティングでは、誰に・何を・どこで届けるかを一緒に決めるところから担当します。
手順2 決めた国に合わせて、施策を選びます
施策は多く見えますが、役割で分けると6つです。全部を同時にやる必要はありません。手順1の「どこで」で決めた場所と、自分たちの状況に合うものから始めましょう。
| 施策 | 役割 | 向いている店 | ただし |
|---|---|---|---|
| Googleマップの多言語対策(MEO) | 旅ナカで、近くの店として見つけてもらう | 駅前、観光地、繁華街など、歩いている訪日客が通る立地の店 | 口コミが少ないと、表示されても選ばれにくいです |
| 口コミ | 表示された後に、予約や来店を決めてもらう | すでに来店客がいて、母語での感想を集められる店 | 投稿の依頼方法には、各サービスの規約があります |
| SNS(Instagramなど) | 旅マエに、行きたい店として知ってもらう | 写真や動画で伝わる料理、体験、内装がある店 | 国によって使われるSNSが違うので、狙う国を先に決めます |
| 広告(旅マエ・旅ナカ) | 狙った国と時期に、短期間で届ける | 受け皿(マップと口コミ)が整っていて、席に余裕がある店 | 受け皿が弱いと、広告費だけが出ていきます |
| OTA・旅行予約サイト | 予約まで一つのサイトで済ませたい人に届ける | 体験、宿泊、ツアー型で、事前予約が前提の店 | 手数料がかかるので、利益が残る価格設計が必要です |
| 多言語サイト・予約導線 | 探した人が、迷わず予約や来店まで進めるようにする | 予約制の店、コース料理の店 | 作っただけでは見つけてもらえません |
MEOについては、訪日客向けMEOの費用ページで、費用と会社の選び方をさらに詳しく書いています。広告やSNSの運用は、サービス一覧で当社の対応範囲を確認できます。
戦略を決めたあとの最初の一手は、多くの店でマップと口コミです。広告やSNSは、その土台ができてから足します。ただし中国本土の旅行者を狙う場合は、Googleマップより先に、小紅書や大衆点評を整えます。順番そのものも、狙う国で変わります。
手順3 自分たちでやるか、会社に頼むかを決めます
最初の整備だけなら、自分たちでもできます。英語メニューを作り、マップの店情報を多言語で直す作業は、店の側でできる作業です。
むずかしいのは、その後です。口コミへの返信は、投稿者の言語で書きます。複数の言語を、毎週続けなければなりません。しかも国ごとに、使われるSNSも探し方も違います。国や市場の変化を、担当者が一人で追い続けるのは現実的ではありません。
ただし、誰に・何を・どこで届けるか(手順1)は、日々の作業とは分けて考えます。ここは、プロの手を借りて決めるべき部分です。業種・業態、立地、年間の時期の波によって答えが店ごとに変わり、国ごとの市場の動き、探し方の違い、競合の状況まで比べて判断するには経験が要ります。ここがずれると、あとの作業をどれだけ続けても成果が大きくなりません。
戦略が決まったら、日々の運用を自分たちでやるか頼むかは、次のように考えると決めやすくなります。
- 狙う国が1つで、店が1つなら、まず自分たちで始めて、手が回らなくなったら頼む。
- 狙う国が複数、または複数店舗なら、最初から会社に頼む。
- 広告を出すなら、運用の知識が要るので、会社に頼む。
ただし、全部を丸ごと任せる必要もありません。「口コミ返信だけ」「広告だけ」と、範囲を区切って頼む方法もあります。
手順4 頼むなら、支援会社のタイプを知っておきます
同じ「インバウンド支援」でも、得意な仕事は会社によって違います。当社は、大きく次の4つに分けて考えています。
| タイプ | 得意なこと | 向いている店 |
|---|---|---|
| 戦略・コンサルティング型 | 誰に・何を・どこで届けるかの設計、商品づくり | どの国を狙うか、まだ決まっていない店や施設 |
| 集客・プロモーション型 | 広告、SNS、インフルエンサーなど、届ける施策 | 狙う国と受け皿が決まっていて、集客を増やしたい店 |
| ツール・インフラ型 | 多言語の予約、決済、案内などの仕組み | 受け入れの手間を減らしたい店 |
| 人材・運営支援型 | 多言語の接客、スタッフの育成 | 来店客への対応に、人手が足りない店 |
当社は、戦略・コンサルティング型を土台に、集客・プロモーション型の施策までを一社で担当する形です。手順1の戦略を一緒に決め、そのまま運用まで続けます。ただし、ツールの開発や人材の派遣は、当社の主な仕事ではありません。そこが課題の店は、そのタイプの会社を選ぶほうが合います。
各社の対応範囲と公開料金、契約の前に聞いておきたいことは、インバウンド対策会社の比較と費用相場で並べています。
よくある失敗は、狙う国を決めないまま始めることです
失敗には、よくあるパターンがあります。始める前に、次の4つを知っておくと避けやすくなります。
- 狙う国を決めないまま始める。どの国の人にも少しずつ届く代わりに、どの国の人にも選ばれない状態になります。
- 多言語サイトを作っただけで終わる。見つけてもらう施策がないので、アクセスがほとんど来ません。
- 有名なインフルエンサーを一度だけ呼ぶ。一時的に話題になっても、検索やマップに残る形が作れていません。
- 安さだけで翻訳を頼む。機械翻訳のような不自然な文が公開され、かえって信頼を落とします。
どれも、施策そのものが悪いのではなく、狙い(誰に・何を・どこで届けるか)と受け皿が決まっていなかったことが原因です。
当社が向いている店と、向かない店
当社は、飲食店、サロン、宿泊施設など、店舗の訪日客集客を専門にしています。戦略の設計から運用まで、専任の担当が一社でまとめて担当します。参考までに、当社が運用を支援する店舗のGoogle口コミは、平均4.8点、合計1,000件以上です(2026年8月時点・当社調べ)。旅マエ・旅ナカ広告の年間取扱額は2億円を超えました(2025年9月〜2026年8月の出稿金額の合計)。ただし、これらは特定の条件下での実績で、すべての店で同じ結果になることを保証するものではありません。
向いているのは、誰に・何を・どこで届けるかを一緒に決めて、マップと口コミから順に整え、必要に応じて広告やSNSを足していきたい店です。施策をひとつだけ頼む単発プランは、月3万円〜です。向かないのは、次のような店です。
- 訪日客の来店が、立地の面でほとんど見込めない店。
- 多言語の接客スタッフの派遣や、予約システムの開発だけを探している店。
当社の料金の目安は、費用相場のページにまとめています。支援内容はサービス一覧、戦略づくりからの相談はコンサルティングをご覧ください。
よくある質問
予算が少ない個人店でも頼めますか?
はい。施策をひとつだけ頼む単発プランは月3万円〜で、マップ対策(MEO)だけなら月5万円〜15万円の範囲です(初期費用は別途5万〜10万円)。月3万円のプランは、LINEでの対応と週2回の投稿が中心です。それより少ない場合は、まず狙う国を決め、その言語でマップの店情報を整えて、口コミへの返信から始める方法もあります。
最初に何をすればよいですか?
誰に・何を・どこで届けるかを決めることです。来てほしい国は、業種・業態との相性、立地、年間の時期の波、いまの来店客の国籍から決めます。そのうえで、多くの店ではGoogleマップの店情報を、狙う国の言語で直すところから始めます。
広告から始めてはいけませんか?
始めることはできます。ただし、広告で店を知った人も、マップで口コミを見てから決めることが多いです。狙う国が定まっていないまま、受け皿も弱いままだと、広告費に見合う来店になりにくくなります。
会社に頼むと、どこまで任せられますか?
戦略づくりから運用、レポートまで任せる形もあれば、口コミ返信だけを頼む形もあります。範囲は契約の前に決められます。