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外国人客はどうやって居酒屋を見つけているのか?集客の第一歩となる3ステップ

「インバウンドが過去最高」というニュースを目にする一方で、自分の店の客席を見渡すと外国人観光客の姿がほとんどない——そんなちぐはぐさを感じている居酒屋オーナーは少なくないはずです。
日本政府観光局(JNTO)によると、2025年の訪日外国人数は4,268万3,600人となり、初めて4,000万人を突破しました*1。国・地域別では韓国が約946万人で最も多く、次いで中国が約910万人、台湾が約676万人と続きます*1
ただし、これは「日本全体の合計」であって、あなたの店に自動的に外国人客が流れてくることを意味しません。多くの場合、原因は接客やメニューの質ではなく、彼らが情報を探している場所に、そもそも店の情報が置かれていないことにあります。
本記事では、外国人客が居酒屋を「どこで」「どうやって」探すのかから逆算して、今日から取り組める集客の3ステップを整理します。大きな投資を前提にしたものではなく、優先順位を決めて少しずつ進めるための考え方です。

【目次】

外国人客は、あなたが思っている場所で店を探していない

外国人客が店を探す方法は、国・地域によって大きく異なります。「日本人と同じようにGoogleで検索するはずだ」という前提のままでは、対策の方向を見誤ってしまいます。

国・地域によって「調べる場所」が違う

同じ「外国人観光客」とひとくくりにしても、実際に使われているアプリやサービスはかなり異なります。

  • 中国:大衆点評(ダージョンディエンピン)やWeChat、Alipayが主流です。中国国内ではGoogleへのアクセスが制限されているため、来日後もGoogleをあまり使わない客が多いとされています。
  • 台湾・香港:小紅書(RED)やGoogle Maps、地元のSNSを併用する傾向にあります。Googleも使われますが、口コミの参照先としてはREDの存在感が大きいようです。
  • 欧米豪:Google Maps、食べログ、Instagram、TripAdvisorといった旅行系サービスが中心です。

裏を返せば、狙う客層をある程度決めれば、注力すべきプラットフォームもおのずと絞られるということです。まずは「検索の前提が国・地域ごとに違う」と知ることが、最初の一歩になります。

なぜ「Google Mapsだけ」では半分の客に届かないのか

「多言語対応をしています」という店は増えてきましたが、多言語対応と全国籍への対応は別のものです。英語メニューを用意していても、中国人客が見ているのはGoogleではなく大衆点評であることが多いためです。

大切なのは、すべてのプラットフォームを完璧にこなそうとしないことです。小規模な居酒屋であれば、狙いたい客層が主に使っているアプリを1〜2個に絞って着手するほうが現実的です。

この考え方を踏まえて、ここからは「見つけてもらう」ための具体的な3ステップを見ていきます。

ステップ1|見つけてもらうためのオンライン基盤づくり

最初のステップは、外国人客が実際に使うプラットフォームに、店の情報を「置く」ことです。ここが空白のままでは、その先の対策が始まりません。

Google Mapsは基本、決め手は情報の「厚み」

どの国・地域を狙うにせよ、Google Mapsの整備は欠かせません。登録するだけでなく、情報の充実度が来店の判断を左右します。

  • Googleビジネスプロフィール(GBP)の基本情報を漏れなく入力する(営業時間・電話番号・メールアドレスなど)
  • 英語での店舗説明文を用意する(外国人客が最初に読む部分です。雰囲気や料理の特徴が伝わる分量を意識しましょう)
  • 料理・店内・外観の写真を継続的に追加する

特に「メニュー」「営業時間」「アクセス」の3点が欠けていると、外国人客は不安を感じて別の店へ流れやすくなる傾向があります。

中国人客には「大衆点評」への登録を

中国人客を取り込みたい場合、大衆点評への登録が現実的な第一歩です。大衆点評は中国最大級の口コミ・グルメアプリで、中国の利用者にとっての食べログとGoogleマップを合わせたような存在です。

登録にはWeChatやAlipayでの認証が必要になりますが、最初から完璧を目指す必要はありません。基本情報・営業時間・メニュー写真数枚から始め、口コミへの返信や写真の追加を少しずつ続けることが、「放置されていない店」という安心材料につながります。

台湾・香港客には「小紅書」と「Instagram」

台湾・香港客は、小紅書(RED)とGoogle、Instagramを行き来しながら店を探す傾向があります。REDへの登録とInstagramの定期投稿を組み合わせるのが効果的です。

Instagramでは「#居酒屋」「#日本」「#(エリア名)」のようなタグを付けた投稿が、旅行前のリサーチで目に触れやすくなります。投稿文はすべて日本語である必要はなく、英語や繁体字を少し添えるだけでも届き方が変わります。

欧米豪客には英語での情報整備を

欧米豪客が重視するのは、英語で必要な情報がそろっているかどうかです。高額な翻訳を業者にまとめて発注する必要はありません。

  • メニューの英訳:翻訳アプリでの下訳をベースに、不自然な箇所だけ手直しする
  • 英語のランディングページ:SNSやGBP、食べログと相互にリンクさせる
  • 予約サイトへの登録:食べログのEnglishページなどを活用する

こうした基盤づくりを自店だけで進めるのが難しい場合は、インバウンド専門のMEO支援サービスを活用する選択肢もあります。まずは自店に何が足りていないかを把握したうえで、外注の要否を判断するとよいでしょう。

ステップ2|来店した外国人客を困らせない店舗準備

見つけてもらえた次は、「来店した外国人客が困らない」環境を整える段階です。目指すのは完璧な接客ではなく、スタッフの負担を減らす「仕組み」への投資です。

言語対応は「人」より先に「仕組み」で

英語が話せるスタッフを新たに雇うのは、実は最後の手段です。まずは仕組みで解決できる部分から着手しましょう。

  • タッチパネルやQRコードでの注文システムを導入する
  • 指差し会話シートや多言語メニュー表を用意する
  • 翻訳アプリ(Google翻訳・DeepLなど)の使い方をスタッフ間でルール化する
  • スタッフに簡単な英語フレーズを数個だけ練習してもらう

すべてをスタッフの頑張りに頼ろうとすると、忙しい時間帯に対応が破綻しやすくなります。仕組みが接客の多くを肩代わりできる状態を目指すと、現場の負担が大きく変わってきます。

清潔感とルールの明示が安心につながる

外国人客が来店前に不安を感じやすいのは、味そのものよりも「衛生状態」や「店のルールがわからないこと」です。喫煙の可否や持ち込みの扱いが不明だと、入店をためらう人もいます。

看板や張り紙は、英語・簡体字中国語・繁体字中国語・韓国語で用意しておくと親切です。入口やトイレの清潔さを日々確認する簡単な仕組みを作るだけでも、印象は変わってきます。

会計時の「思っていたのと違う」を防ぐ

「思ったより高かった」という不満は、低評価レビューの典型的なパターンです。お通し代やセット価格を事前に見える化しておくことで、会計時のトラブルはかなり防ぎやすくなります。

決済手段の確認も欠かせません。訪日外国人が日本国内で実際に利用した決済手段を見ると、現金が94%と最も多く、次いでクレジットカードが70%、交通系ICカードが24%という調査結果があります*2。一方で、韓国は95.3%、中国は83.8%と自国のキャッシュレス比率が高く*3、日本の現金中心の会計に戸惑う客も少なくありません。PayPayやAlipay、WeChat Pay、銀聯といったキャッシュレス手段への対応を進めておくことは、会計時のストレスを減らすうえで意味があります。

無断キャンセルや行き違いへの予防線

予約の段階でキャンセルポリシーや注意事項をあらかじめ伝えておくと、無断キャンセルや後からの「聞いていない」という行き違いを減らせます。予約確認メール、Googleマップの概要欄、店内の多言語サイネージなど、複数の場所で繰り返し伝えるのがコツです。

スタッフによって対応がばらつくと、それ自体が不満の火種になります。対応の基準をマニュアル化し、誰が対応しても同じ説明ができる状態にしておくと安心です。

ステップ3|また選ばれるための顧客体験と口コミ

来店した外国人客が「また来たい」と感じ、口コミを残してくれる。この循環をつくれるかどうかが、長期的な差になっていきます。

満足度は「期待値とのズレ」で決まる

満足度は料理そのものの質だけで決まるわけではありません。「オンラインで見た写真」と「実際に出てきた料理」のギャップが小さいほど、満足度は高まりやすい傾向にあります。

古い写真や実物と異なる盛り付けは、低評価につながりやすい要因のひとつです。SNSへの投稿を増やしたいのであれば、盛り付けや照明への小さな工夫も効いてきます。

口コミ返信は「運用の証」

口コミへの返信は、派手な集客テクニックというより、「この店はきちんと運用されている」ことを示す行為です。

  • 低評価レビュー:謝罪と改善策を簡潔に。英語のレビューには英語で返信する
  • 高評価レビュー:来店への感謝を、相手の言語で伝える(翻訳アプリで十分です)
  • 返信のタイミング:目安として1週間以内。長期間の未返信は「営業していないのでは」という誤解を招きかねません

SNS投稿のハードルを下げる工夫

来店客に「タグを付けて投稿してください」と一言添えるだけでも、投稿は少しずつ増えていきます。金銭的な見返りを提供する必要はありませんし、Googleの口コミにおいて謝礼と引き換えに投稿を依頼する行為はポリシー違反にあたる点にも注意が必要です。

撮影しやすいスポットや内装のちょっとした工夫が、投稿の質と量に影響します。ほかの外国人客は、その投稿を見て来店先を決めていきます。

リピートにつながる小さな配慮

2回目以降の来店客に「またのご来店、ありがとうございます」と一言添えるだけでも、印象は残ります。名前まで覚えている必要はありません。

多言語のロイヤリティカードや次回割引を仕組み化するのも一つの方法です。誕生日や記念日の割引を案内する場合は、国によって祝日や記念日の時期が日本と異なる点だけ頭に入れておくとよいでしょう。

実践チェックリスト

自分の店が今どこまで進んでいるか、以下で確認してみてください。

ステップ1:オンライン基盤づくり(今週中の確認項目)

  • GBP:営業時間・電話番号・メールアドレスは登録済みか
  • Google Mapsの英語説明文を入力済みか
  • Google Mapsに料理写真を10枚以上登録済みか
  • 狙う客層の主流プラットフォーム(大衆点評・小紅書など)を1つ以上登録済みか
  • Instagramビジネスアカウントを設定し、直近2週間以内に投稿があるか

ステップ2:店舗準備(今月中の完成目安)

  • 多言語メニュー(英語・簡体字・繁体字)を用意済みか
  • QRコード注文またはデジタルメニューを導入済みか
  • 禁止事項の多言語サイネージを1つ以上設置済みか
  • クレジットカードやQR決済(WeChat Pay・Alipay・銀聯など)に対応済みか
  • スタッフへ簡単な英語フレーズの共有を実施済みか

ステップ3:顧客体験(継続的な運用の仕組み化)

  • 口コミに週1回以上返信する体制があるか
  • 低評価レビューへの返信テンプレート(英語・中国語)を用意済みか
  • Instagram・小紅書への投稿を週2回程度続けられる体制があるか
  • リピート客への簡単な声かけルールをスタッフ間で共有済みか
  • 月1回程度、オンライン情報を見直すルールがあるか

よくある質問

Q1:大衆点評・小紅書・Google Maps、すべて登録すべきですか?

すべてを一度に登録する必要はありません。むしろ小規模店ほど、狙う客層が主に使うプラットフォームを1つに絞って始めるほうが続けやすい傾向にあります。中国人客を狙うなら大衆点評、台湾・香港客なら小紅書とInstagram、欧米豪客ならGoogle Mapsと食べログEnglishというように、まずは的を絞ることをおすすめします。

Q2:多言語対応の予算が限られる場合、何から投資すべきですか?

優先度としては、デジタル化を先に検討し、翻訳、人の採用の順に考えると迷いにくくなります。QRコードの多言語メニューは月額数百円台のサービスもあり、メニューの英訳も翻訳アプリとスタッフの確認で対応できる場合があります。英語対応スタッフの新規採用は、後回しにしても差し支えないことが多いでしょう。

Q3:Google Mapsで低評価をもらった場合、どう返信すべきですか?

目安として1週間以内に返信することが大切です。返信の内容が「謝罪と改善策」になっているか、それとも「言い訳」に見えてしまうかで、その後の来店率に差が出ることがあります。「申し訳ございません」だけで終わらせず、「ご指摘ありがとうございます。今後〇〇を改善いたします」のように、具体的な改善姿勢を相手の言語でも添えるのが望ましい形です。

Q4:SNS投稿や口コミ返信まで手が回りません。外注すべきでしょうか?

最初のうちは、無理のない範囲で自店で取り組む価値があります。小規模店ならではの人となりが伝わる発信は、口コミの信頼度にもつながりやすいためです。目安としては週1回の口コミ返信と週2回のSNS投稿で、合計30分程度から始めてみてください。これ以上の負担が続くようであれば、優先度の高い施策一つに絞るか、外部の支援を検討するとよいでしょう。

Q5:外国人客が増えるとスタッフが疲弊してしまいます。どうすればよいですか?

それは、対応の多くをスタッフ個人の努力に依存しているサインかもしれません。QRコードの多言語メニューで注文説明の一部を仕組み化したり、指差しシートやタッチパネルを取り入れたりすることで、接客にかかる負担を減らせます。流暢な英語を目指すよりも、「困らせない仕組み」に切り替えることが、現実的な解決につながります。

積み重ねが差になる:ある飲食店の取り組み例

ここでは、店名を伏せた形で一つの事例を紹介します。数値はおおよその傾向としてご覧ください。

ある都内の飲食店では、当初Googleビジネスプロフィールが未登録で、外国人客の来店はほとんどありませんでした。転機になったのは、訪日客からの問い合わせがぽつぽつ入り始めたにもかかわらず、受け皿となる情報がまったく整っていなかったことです。

そこでGBPを登録して多言語の情報を整え、メニュー写真を20枚以上掲載しました。あわせて口コミ獲得のためのQRコードを店内に設置し、週2回のペースで投稿を更新していったといいます。派手な広告費をかけたわけではなく、「見つかる・選ばれる」の土台を整えたことが、結果として外国人来店比率の高まりにつながったと見られています。

この事例が示すのは、劇的な施策よりも、情報を整え、更新を続けるという地道な積み重ねの効果です。

まとめ:外国人客が選ぶのは「完璧な対応」より「誠実な運用」

外国人客が選ぶのは、必ずしも流暢な英語を話す店ではありません。写真が新しく、口コミに返信があり、来店してみたら想像どおりだった店です。つまり、誠実に運用されていることが伝わる店が選ばれやすいということです。

まずは今週、Googleビジネスプロフィールの営業時間と英語説明文を整え、料理写真を追加してみてください。来週には狙う客層の主流プラットフォームを1つ登録し、今月中にQRコードの多言語メニューを導入する。この順番で進めれば、大きな投資をせずに基盤を整えていくことができます。その小さな一歩の積み重ねが、次に日本を訪れる誰かにとっての「今夜はここにしよう」につながるはずです。

参考・出典

  1. 訪日外客数統計(2025年推計値)|日本政府観光局(JNTO)
  2. インバウンド需要の拡大と訪日外国人の決済動向|日本総合研究所
  3. キャッシュレス・ロードマップ2023|一般社団法人キャッシュレス推進協議会

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