外国人客の口コミが増えないのは「文化の違い」?国籍別に見る、自然に集まる仕組みづくり
外国人客で店内はにぎわっているのに、Googleマップを開くと口コミはほぼ日本人からのものばかり——そんな違和感を抱えている飲食店オーナーは少なくないはずです。「よろしければ口コミをお願いします」と伝えても、外国人客の口コミだけがなぜか増えない。その理由は、努力不足でも英語力不足でもありません。
2025年の訪日外客数は4,268万人となり、初めて4,000万人を突破して過去最高を更新しました*1。2026年に入ってからは中国市場の落ち込みなどもあり伸びはやや鈍化していますが*2、それでも多くの店にとって外国人客との接点はすでに日常の一部になっているはずです。これだけの来店があるにもかかわらず口コミが残っていないとしたら、店が本来得られるはずの信頼シグナルを、活かしきれていない可能性があります。
本記事では、外国人の口コミが増えない根本原因を整理したうえで、評価が自然に集まる「仕組み」の作り方を、国籍別のプラットフォーム選びから会計時の一言まで解説します。今日から始められる3ステップも用意しました。
【目次】
なぜ外国人客の口コミは増えないのか
外国人客の口コミが増えないのは、日本人と「口コミを書く理由」そのものが異なるためです。日本語入力を前提にした導線や、そもそも彼らが使わないプラットフォームへの案内が、無意識のうちに投稿のハードルを上げている可能性があります。
口コミは「義務」ではなく「シェアしたい気持ち」から生まれる
日本人の口コミには、情報提供やクレーム報告など「誰かの役に立ちたい」という意識が強く働く傾向があります。一方で外国人客にとって、レビューはSNS投稿に近い「自分の体験を分かち合う」行為です。旅の記録を仲間に見せたい、という気持ちが出発点になりやすいと考えられています。
この傾向は国や地域によっても分かれます。あくまで一般的な傾向ですが、次のような違いがあると言われています。
- 中国・台湾・香港の客:大众点评(ディエンピン、中国最大級のグルメ・レビューサイト)やOpenRice(開飯喇、香港発で台湾・東南アジアにも広がるレビューサイト)など、現地コミュニティ性の強いプラットフォームで評価を書く傾向があります
- 欧米豪の客:Googleマップの星評価は付けても、長文レビューは比較的少ない傾向があります
- 共通点:「他の旅行者の役に立ちたい」という気持ちが投稿の動機になりやすいです
つまり、日本人向けの「ご意見をお聞かせください」という促し方だけでは、外国人客の「シェアしたい」という気持ちにうまく届かないのです。
言語の壁とひと手間が、投稿までのハードルになっている
外国人客が口コミを書かない大きな理由のひとつが、単純な「手間」です。日本語での記入を暗に求める導線になっていると、その時点で心理的なコストが上がり、多くの人が離脱してしまいます。
母国語で書けるプラットフォームへ直接たどり着けるかどうかで、投稿率は大きく変わってきます。ここで役立つのがQRコードの導線です。
- URLを検索させる方式:外国人客にとって手間が大きく、離脱しやすい方法です
- QRコードで母国語プラットフォームに直結:数タップで投稿画面にたどり着けます
書く気持ちがあっても、たどり着けなければ口コミは生まれません。促進とは「書いてください」とお願いすることではなく、書きやすい状態を先に整えることだと言えます。
外国人客の口コミが自然に集まる3つの条件
口コミは「頼んで増やす」ものというより、「集まりやすい状態を作る」ものです。ここでは、再現性のある3つの条件を整理します。
条件1:客層に合った「正しいプラットフォーム」を選ぶ
まず見直したいのが、プラットフォームの選定です。客層が使わない場所にいくら案内しても、投稿にはつながりにくくなります。
- 中国人観光客:大众点评が中心的な存在です。Googleマップは補助的な位置づけになりやすいです
- 台湾・香港客:OpenRiceとGoogleマップを併用する傾向があります
- タイ・ベトナム客:GoogleマップやLINE・Facebookなど現地SNSが使われやすいです
- 欧米豪客:ほぼGoogleマップが中心です。TripAdvisorは参考程度に見られることが多いです
来店客の国籍を把握できていない店舗は、まずGoogleマップと大众点评の2つに絞る戦略がおすすめです。この2つで訪日客の主要層を広くカバーできるためです。なお、台湾・香港客向けには、口コミ投稿の場としてはOpenRiceが中心ですが、集客の入り口としては「樂吃購(ラーチーゴー)」のような現地向け訪日観光メディアへの掲載も選択肢になります。
条件2:満足度が高い「その場」で声をかける
促進のタイミングは、早ければ早いほど効果が出やすいとされています。「来店後1週間」のフォローでは記憶も感動も薄れてしまい、投稿につながりにくくなります。
狙い目は会計時です。食事の満足度が高く、まだ余韻が残っているこのタイミングで、QRコードを添えて一言添えるのが理にかなっています。
- 「Would you mind sharing a review on Google Maps?」など、優しい問いかけを添えます
- 「This review helps other travelers」など、他の旅行者の役に立つという気持ちに寄り添う言葉を添えます
- 強要にならないよう、「よろしければ」というトーンを守ります
命令ではなく、そっと背中を押す。この温度感が投稿率を左右します。
条件3:新規客より「リピーター」に声をかける
意外に思われるかもしれませんが、口コミをお願いするなら初回客より2回目以降の客のほうが向いていると言われています。初回客は満足度のばらつきが大きく、評価も両極端に振れやすいためです。
2回目以降の客はすでに店への信頼が育っており、建設的な内容を書いてくれる傾向があります。顧客データを持っている店なら、2回目来店客向けにレビュー依頼のメッセージを送る方法も機能しやすいでしょう。
この3条件は、「客層に合ったプラットフォームか」「言語の壁を最小化できているか」「書きたくなる瞬間を作れているか」という3要素がそろって初めて成立します。どれか一つが欠けても、口コミは思うように集まりません。
こうした仕組みの設計から運用までを自社だけで回すのが難しい場合は、IMJのようなインバウンド専門のMEO支援サービスを活用する方法もあります。国籍分析やプラットフォーム選定も含めて相談できるため、選択肢のひとつとして知っておくとよいでしょう。
今日から始める3ステップ
ここからは、実際に手を動かすための3ステップを紹介します。大きな投資は不要で、日々の業務に組み込むだけで実装できるものばかりです。
ステップ1:来店客の国籍データを集める
- 予約時の問い合わせ欄に「ご来店の国籍を教えていただけますか?」の項目を追加します
- レジ近くに「Where are you from?」のさりげないポスターを置きます
- 月単位で外国人客の国籍分布を簡単な表で可視化します
1週間データを取るだけでも、来店層の輪郭が見えてくるはずです。
ステップ2:優先プラットフォームを2つに絞る
集めたデータをもとに、対応するプラットフォームを2つまでに絞ります。たとえば中国人客が3割、欧米客が4割なら、大众点评とGoogleマップに集中する、という判断です。
3つ以上に手を広げると運用負荷が増え、返信が追いつかなくなりがちです。「このプラットフォームには週1回は必ず返信する」という運用ルールを決めておくと続けやすくなります。
ステップ3:会計時に「QRコード+一言」を提示する
- スタッフが「Could you share your review? It would really help us.」と優しく促します(強要はしません)
- QRコードの隣に星マークのシンプルなアイコンを添えます
- 会計や決済の待ち時間に、自然に目に入る位置に置きます
この一言があるかないかで、投稿率は大きく変わってくるものです。
事例:外国人客の口コミが増えた飲食店の工夫
ここで、都内のある飲食店の取り組みを紹介します。数値はあくまでおおよその傾向値であり、同じ成果を保証するものではない点にご留意ください。
始まりは、外国人客からの口コミがほとんどない状態だった
この店の月間来店客数は約900人で、そのうち3割ほどが外国人客でした。ところが実際に口コミを投稿していたのは大半が日本人客で、外国人客からの口コミは月5件程度にとどまっていたそうです。
さらに、Googleマップに「英語メニューがない」という趣旨の低評価が付いてしまったこともありました。外国人客が増えているのに好意的な声が集まらず、目立つのは低評価だけという状況が続いていました。
国籍の把握からプラットフォーム選定、QRコード導線へ
そこでまず着手したのが、来店客の国籍分析です。1ヶ月データを取ると、外国人客の約7割がアジア圏(中国・台湾・タイ)だと分かりました。
この結果を受けて、対策を絞り込みました。
- 大众点评のQRコードをテーブルに設置し、会計時に手渡すようにしました
- スタッフに簡単な英語フレーズを共有し、「Please share your review」という一言を徹底しました
- 運用はGoogleマップと大众点评の2つに集中させました
「たった一言」でも、伝えるかどうかで結果は変わります。実装からおよそ3ヶ月後には、大众点评で月15件程度、Googleマップで月10件程度と、合計で以前のおよそ5倍程度に増えたと見られます。
好意的な評価が、次の来店客につながる循環に
口コミが増えると、内容にも変化が見られました。「英語メニューがあって助かった」といった前向きな評価が増え、それを見た次の外国人客の来店にもつながっていったといいます。
以前目立っていた低評価も、新しい好意的な口コミの中で相対的に目立たなくなりました。結果として、外国人客の来店比率もある程度伸びる傾向が見られたとのことです。口コミの積み重ねが、静かに集客を後押ししたケースといえます。
よくある質問:外国人客の口コミを増やす際の疑問
Q1. 外国人客の口コミを増やすにはGoogleマップだけで十分ですか?
客層の国籍によって答えが変わります。欧米豪客が多くを占めるならGoogleマップ中心でおおむね問題ありません。一方で中国人客が一定数いるなら、大众点评への対応も実質的に欠かせません。「広く浅く対応する」より「優先順位をつけて絞り込む」ほうが、実装しやすく効果も出やすい傾向にあります。
Q2. 知人に依頼して口コミを書いてもらうのはありですか?
避けたほうが安全です。GoogleマップやTripAdvisorをはじめ主要プラットフォームは、不自然なレビューを検出する仕組みを持っており、実際の来店・利用が伴わない投稿は削除や非表示の対象になる可能性があります。金銭や見返りを条件にした依頼はGoogleのポリシー違反にもあたるため、いずれにしてもおすすめできません。
Q3. 外国人客からの低い評価(星1〜2)にはどう対応すべきですか?
まず、削除を申請できるのは「規約違反が明確な不正レビュー」に限られ、単に内容が厳しいという理由だけでは削除できません。大切なのは丁寧な返信です。低評価は改善のヒントとして受け止め、「ご指摘ありがとうございます。改善に努めます」という前向きな返信を残すことが、それを読む次の潜在客への信頼につながっていきます。
Q4. 外国人客の口コミへの返信は外国語でしないといけませんか?
すべてを外国語にする必要はありません。ただ、外国語での返信は他の潜在客に「この店は外国人客にも対応している」というシグナルになるため有効です。不自然な機械翻訳の日本語で返すより、シンプルな英語で返信するほうが伝わりやすいでしょう。
Q5. 新規客と既存客、どちらから口コミを集めるほうが効率的ですか?
既存客(2回目以降の来店客)から集めるのがおすすめです。新規客は満足度のばらつきが大きく、否定的な評価も出やすい傾向があります。既存客は店への信頼が育っており、建設的な口コミを書いてくれることが多いものです。リピート率を上げること自体が、口コミ件数の向上にもつながっていきます。
まとめ:口コミは「増やす」のではなく「自然に集まる仕組み」を作る
外国人客の口コミが増えないのは、努力の量の問題というより、仕組みの問題です。彼らが使うプラットフォームに、母国語で、満足度が高まっている会計時に案内する——この3つがそろえば、口コミは大きなコストをかけずに集まりやすくなります。
まずは今週、レジ横に「Where are you from?」のメモを置き、来店客の国籍を1週間記録してみてください。来週にはその分布から優先プラットフォームを2つに絞り、今月中に会計時のQRコード導線を整える。ここまで進めば、来月の口コミ件数は今とは違った景色になっているはずです。その一件の口コミが、次の外国人客が店を選ぶきっかけになるかもしれません。
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