結論:Instagramを土台にして、国ごとに1つ足す
「インスタやTikTokを始めたほうがいいと聞くけれど、何から手をつければいいのか分からない」。そう迷う店長やオーナーは多いはずです。日本語の解説は代理店の案内が中心で、国ごとの違いや、設定の正確な手順が見えにくいのが実情です。
先に答えを書きます。1つ目は、Instagramのプロアカウントと位置情報を整えて、土台にすること。Instagramは、主な国のほとんどで利用者の多いSNSの2〜3番目までに入ります。ただし1位のSNSは国で違うので、2つ目として、いちばんお客様の多い国に合わせて、足すSNSを1つ決めます。台湾・香港・タイはFacebook、韓国はNAVERブログ、米国・豪州はYouTubeです。3つ目は、店名・住所・営業時間の書き方を、どの媒体でもそろえることです。
例外が2つあります。中国のお客様はInstagramを使えないので、小紅書になります。タイはInstagramの届く割合が28.7%で、Facebookの71.9%やLINEの78.2%より小さく、Facebookが先です。この記事は、飲食店・サロン・体験施設など来店型の店舗向けに、足すSNSの選び方、設定、言語、投稿、ショート動画、店頭の工夫、インフルエンサー、測り方、任せる場合の費用を順に説明します。
| 知りたいこと | 先に結論 | くわしい節 |
|---|---|---|
| なぜSNSが要るか | 出発前に役立った情報源は、SNSが43.3%、動画サイトが39.6% | 訪日客に要る理由 |
| なぜInstagramが土台か | 主な国のほとんどで2〜3番目までに入る | Instagramを土台にする理由 |
| 国ごとに何を足すか | 台湾・香港・タイはFacebook、韓国はNAVERブログ、米国・豪州はYouTube、中国は小紅書 | 国別の攻め方 |
| 最初に何をするか | プロアカウントにして、住所はFacebookページから登録する | アカウントの準備 |
| ハッシュタグは何個か | 1投稿5個まで | 投稿の作り方 |
| 無料の食事で投稿を頼めるか | 頼めるが、「PR」などの表示が要る | インフルエンサーを招く場合 |
| 任せると費用はいくらか | 当社は初期10万円、Instagramは月10万〜50万円 | 任せる場合 |
訪日客に要る理由:出発前の情報源は SNS 43.3%・動画サイト 39.6%
訪日客は、日本の店のことをほとんど知らずに出発します。だから、来日の前に何で調べるかが、店を知ってもらう入口になります。
観光庁の「インバウンド消費動向調査」によると、出発前に役立った情報源(複数回答)は、1位がSNSで43.3%、2位が動画サイトで39.6%、3位が個人のブログで23.9%でした(観光庁 2025年)。さらに、滞在中に役立った情報では、飲食店が56.0%でした。
| 出発前に役立った情報源(全体) | 割合 |
|---|---|
| SNS | 43.3% |
| 動画サイト | 39.6% |
| 個人のブログ | 23.9% |
| 自国の親族・知人 | 19.9% |
| JNTOのホームページ | 12.2% |
| 口コミサイト | 11.0% |
国・地域別に見ると、1位が分かれます。韓国と中国はSNSが1位、台湾・香港・タイ・米国・豪州は動画サイトが1位でした(観光庁 2025年)。SNSと動画が大きな入口になっているのは共通で、その中でどのSNSを使うかが国で違います。次の節から、土台と、国ごとに足すSNSを見ていきます。
Instagramを土台にする理由:主な国のほとんどで2〜3番目までに入る
最初に整えるSNSは、Instagramです。理由は、国を選ばずに使えることです。次の表は、各国で広告が届く人数が、人口の何%にあたるかを示したものです。
| 国・地域 | YouTube | TikTok | Threads | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 韓国 | 83.1% | 13.6% | 49.5% | 26.2% | 8.5% |
| 台湾 | 78.4% | 74.9% | 52.6% | 43.7% | 28.8% |
| 香港 | 84.4% | 63.6% | 54.8% | — | 21.0% |
| タイ | 65.9% | 71.9% | 28.7% | — | — |
| 米国 | 73.0% | 56.8% | 52.3% | 55.7% | 7.1% |
| 豪州 | 77.7% | 65.3% | 56.0% | 51.2% | 5.0% |
広告が届く人数の推計(DataReportal Digital 2026)。TikTokは18歳以上に対する割合
タイを除く5つの国・地域で、Instagramは約5割に届いています。韓国ではYouTubeとKakaoTalk(95.1%)の次、台湾・香港ではYouTubeとFacebookの次です。米国のPew Research Centerの調査(2025年)でも、成人の利用はYouTube 84%、Facebook 71%、Instagram 50%の順でした。台湾のTWNIC「2025 台灣網路報告」では、最も使うSNSはFacebookが45.59%、Instagramが18.70%で、Instagramは2位です。
JNTO(日本政府観光局)も、21の市場に向けてInstagramで発信しています。
ここで押さえたいのは、どの国でもInstagramが1位ではないことです。1位のSNSは国で違います。だからInstagramは土台にして、次の節で、国ごとに足すSNSを決めます。
国別の攻め方:足すSNSは国で違う
お客様の国ごとに、足すSNSを1つ決めます。2列目は、JNTOが2026年10月21日に公表した、2026年1〜9月の訪日客数と前年同期比です。
| 国・地域 | 2026年1〜9月の訪日客(前年同期比) | 土台 | 足すSNS | 理由 |
|---|---|---|---|---|
| 韓国 | 8,262,700人(+21.6%) | NAVERブログ | 出発前の情報源で個人のブログが42.9%(観光庁)。Facebookは13.6%と低いので足さない | |
| 台湾 | 5,997,600人(+19.1%) | Facebook+Threads | Facebookは74.9%で、最も使うSNSでも45.59%。Threadsは28.8%に届き、TWNICで3位 | |
| 中国 | 3,335,500人(-55.5%) | Instagramは使えない | 小紅書 | Instagramが使えないため、中国で使われるSNSで発信する。JNTOも中国市場向けには微博などで発信 |
| 米国 | 2,522,800人(+5.2%) | YouTube | 出発前の情報源は動画サイトが43.0%で1位(観光庁)。YouTubeは成人の84%が使う(Pew) | |
| 香港 | 1,963,300人(+7.7%) | Facebookは63.6%に届く | ||
| タイ | 835,400人(+2.4%) | Facebook+TikTok | Instagramは28.7%で、Facebook 71.9%・LINE 78.2%が先 | |
| 豪州 | 771,900人(+2.2%) | YouTube | 出発前の情報源は動画サイトが43.9%で1位(観光庁)。YouTubeは77.7%に届く |
表で目立つのは、2026年の中国です。訪日客は前年同期の半分以下になっています。一方、韓国と台湾は前年より約2割増えています。
韓国:NAVERブログに書いてもらう
韓国のお客様に向けては、現地の人にNAVERブログで紹介してもらう形が合います。観光庁の調査では、韓国の訪日客が出発前に役立った情報源は、SNSが47.1%、動画サイトが43.8%、個人のブログが42.9%で、ブログの割合がほかの国より高く出ています。広告が届く割合は、YouTubeが83.1%、Instagramが49.5%、Facebookが13.6%で、Facebookは低く、足しません。招き方は、インフルエンサーを招く場合と同じです。
中国:Instagramは使えないので小紅書
中国のお客様はInstagramを使えません。中国向けは、小紅書が中心になります。くわしい始め方は、小紅書の記事にまとめました。
タイ:Facebookが先
タイは、Instagramが28.7%、Facebookが71.9%、LINEが78.2%です。Instagramだけで出すと、届く人が限られます。Facebookページを先に整え、ショート動画でTikTokにも出します。
台湾:Facebookが中心、Threadsも使える
台湾は、Facebookが最も使われるSNSです(TWNIC 45.59%)。Threadsも広告が届く割合が28.8%あり、TWNICの「最も使うSNS」では3位です。Facebookページを整えて、余力があればThreadsにも同じ内容を出します。表の国の中で、Threadsが広く届いているのは台湾です。
米国・豪州:YouTubeを足し、Googleマップも整える
観光庁の調査では、出発前に役立った情報源の1位は、米国・豪州とも動画サイトでした(米国43.0%、豪州43.9%)。SNSは米国が35.4%で3位、豪州が38.4%で2位です。ショート動画で撮った1本をYouTubeショートにも出し、店の雰囲気や行き方が分かる動画をYouTubeに置きます。
口コミサイト(トリップアドバイザー等)も、米国で18.6%、豪州で22.9%が役立ったと答えています。店の口コミや写真、営業時間はGoogleマップでも見られるので、あわせて整えます。くわしくはMEO対策とはにまとめました。
国別の費用の比べ方はインバウンド対策の費用相場に書きました。まず、予約や会計で分かる国別の割合を見て、多い国から手を付けましょう。
SNSごとの役割:店を探す人に届くか、知らない人に届けるか
SNSは、役割が違います。店の名前や地名で調べる人に見つけてもらうSNSと、まだ店を知らない人に動画で届けるSNSがあります。位置情報タグを付けられるかも、あわせて整理します。
| SNS | 向いている国 | 得意なこと | 位置情報タグ |
|---|---|---|---|
| 台湾・香港・米国・豪州・韓国(土台) | 店名や地名で調べる人に、写真と動画で見つけてもらう | 付けられる | |
| 台湾・香港・タイ | 店の基本情報の置き場。ページの住所は、Instagramのマップとつながる | ページに住所を登録する | |
| Threads | 台湾 | 短い文章と写真での近況の発信 | 付けられる |
| YouTube(ショート) | 米国・豪州・韓国・香港 | 動画で探す人に届く | 付けられる |
| TikTok | 台湾・米国・豪州・タイ | まだ店を知らない人に、おすすめの画面で動画を届ける | 付けられる |
| NAVERブログ | 韓国 | 現地の人に書いてもらい、検索で見つけてもらう | — |
| 小紅書 | 中国 | Instagramの代わりに、中国のお客様に店を知ってもらう | — |
| LINE・X | — | 店側からの発信の土台にはしない。Xの広告到達は韓国20.1%・台湾26.0%・米国28.5%・豪州17.5%・タイ18.6%で、Instagramより小さい。LINEは友だち登録した人にしか届かない | — |
位置情報タグの出典:Instagramヘルプ、Metaの開発者向け文書(Threads)、YouTubeヘルプ、TikTokサポート。Xの数字はDataReportal Digital 2026
つまり、Instagramで「店を探す人」に見つけてもらい、ショート動画で「店を知らない人」に届ける、という分け方になります。国ごとに足すSNSは、前の節で決めたものです。
アカウントの準備:Instagramはプロアカウント、住所はFacebookページから
投稿を始める前に、土台になる設定を整えます。Instagramで、ここがいちばん差が出ます。
プロアカウントに切り替える
お店は、個人のアカウントのままにせず、プロアカウントの「ビジネス」にします。小売・地域のお店・ブランド向けの種類で、インサイト(投稿を見た人数や反応の数字)、連絡先ボタン、カテゴリの表示、広告が使えるようになります。切り替えは、プロフィールから「その他」→「設定とアクティビティ」→「アカウントの種類とツール」→「プロアカウントに切り替える」→「ビジネス」の順です。プロアカウントは、非公開にできません。
プロアカウントの設定には「発見を促進」があります。オンにすると、投稿が検索エンジンの結果に表示されることがあります。
プロフィールには、予約ページか公式サイトのリンクを1つ置きます。投稿を見て気になった人が、次に迷わず動けるようにするためです。
住所はFacebookページから登録する
店の場所をマップに出す方法は、Facebookページの住所を編集して、Instagramのタブと連携することです。連携から48時間以内に、店の場所がマップに出て、投稿でタグ付けできるようになります。台湾・香港・タイ向けに足すFacebookのページも、このときに同時に用意できます。
投稿時の位置情報は、既存の場所から選ぶ決まりです。Instagramの投稿画面から新しい場所を作ることはできません。そのため、店名・住所・電話番号・営業時間は、Facebookページ、Googleマップ、自社サイトで書き方をそろえておきましょう。店名の表記が媒体ごとに違うと、旅行者は同じ店だと気づけません。Googleマップの整え方はMEO対策とはで説明しています。
TikTokはビジネスアカウントにする
TikTokを足すときも、店はビジネスアカウントに切り替えます。プロフィールには、予約ページや公式サイト、Googleマップなど、来店に必要な情報へのリンクを置きましょう。
言語の選び方:英語と、台湾・香港向けは繁体字を自分で書く
観光庁の調査では、出発前に役立った情報の言語は、英語と中国語(繁体字・簡体字)がほぼ同じ割合でした。英語だけで足りると考えず、狙う国の言語を決めます。
Instagramは、投稿・コメント・プロフィールを、書かれた言語と閲覧者の言語設定に合わせて自動で翻訳します。対応している言語なら、閲覧者の画面に「翻訳を見る」が出ます。ただし、多言語の投稿のための専用機能ではありません。
リールのAI翻訳は、2025年10月にMetaが英語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・日本語・韓国語などへ広げました。対応言語に中国語は入っていません。台湾・香港のお客様に向けるなら、字幕とキャプションの繁体字は、店のほうで用意しておきます。
実際の書き方は、次のように分けると続けやすくなります。
- 英語と、狙う国の言語(台湾・香港は繁体字、韓国は韓国語)を、キャプションの中で段落を分けて並べます。
- プロフィール文も、同じ言語で書きます。何の店か、どんな料理や体験があるかが一目で分かるようにします。
- ハイライト機能に、メニュー、営業時間、アクセス、予約方法をまとめておきます。
- 翻訳ツールで下書きを作った場合は、その言語が分かる人に見てもらってから出します。
投稿の作り方:何を撮るか、ハッシュタグは5個まで
旅行者は、言葉が通じない分、写真と動画で判断します。ここからは、店の現場で撮れるものを中心に整理します。
何を撮るか
| 撮るもの | 伝わること |
|---|---|
| 料理・施術・体験の様子 | 何が楽しめる店か。湯気や盛り付けの瞬間など、動きのあるものは動画に向く |
| メニュー表・料金表 | 何がいくらか。写真に撮って、外国語の表記があるかを見せる |
| 店の入口と看板 | 探すときの目印。ビルの中の店は、フロアや階段も撮る |
| 最寄り駅からの道順 | 迷わずに着けるか。徒歩のルートを短い動画にする |
| 支払い方法・予約方法 | 現金だけか、カードやQRが使えるか。予約は要るか |
お客様が映る場合は、必ず本人の許可を得ます。また、キャプションの最後には、「予約はプロフィールのリンクから」のように、次にしてほしい行動を一言入れておきましょう。
リールと位置情報タグを組み合わせる
リールの動画にも、位置情報を付けます。編集のあと、「位置情報を追加」から店の名前を検索し、候補から選んでシェアします。位置ページには、同じ場所の投稿が並ぶので、タグが付いていれば店の投稿をまとめて見てもらえます。
- 最初の数秒で、何の店かが分かる映像にします。
- 字幕を入れて、音を出せない場所でも伝わるようにします。
- 位置情報は、店の実際の場所にだけ付けます。関係のない場所のタグを付けるのはやめましょう。
- タグが見つからないときは、店名の綴りを正式名称で検索し直します。Facebookページの住所を連携した直後は、反映まで48時間ほどかかります。
ハッシュタグは1投稿5個まで
Instagramのヘルプによると、1つの投稿に使えるハッシュタグは最大5個です。6個以上付けると、コメントが投稿されません。ハッシュタグはキャプションにもコメントにも付けられ、公開アカウントの投稿は、ハッシュタグのページに表示されます。
5個の使い方は、たとえば、地域名、料理や体験の名前、店名のタグに分けます。地名と料理を組み合わせると、旅行者が調べる言葉に近づきます。
また、Instagramの検索結果の並びには、共有された時期、他のユーザーの反応、Metaの推奨ガイドラインへの適合が関わります。
ショート動画:1本撮って、リール・TikTok・YouTubeショートに出す
ショート動画は、1本撮って、リール、TikTok、YouTubeショートに出します。撮影の手間は1回で、まだ店を知らない人にも届く場所が3つに増えます。広告が届く割合は、TikTokが台湾で43.7%、米国で55.7%、豪州で51.2%、YouTubeが米国で73.0%、豪州で77.7%です(DataReportal Digital 2026)。
TikTokは、おすすめの画面で、まだ店を知らない人にも動画が届く仕組みです。TikTokの公式サポートによると、おすすめに表示される動画は、複数の要素で決まります。視聴時間などの反応、コンテンツの情報(楽曲、ハッシュタグ、視聴数、コンテンツが公開された国)、閲覧者の言語・位置・端末の設定です。通常は、反応が他の要素より重く見られます。検索でも、ハッシュタグと閲覧者の言語・位置が要因になります。
お店の側でできることは、次のとおりです。
- 最後まで見てもらえる動画にします。冒頭で何の店かが分かるようにして、短くまとめます。
- 字幕を付けます。閲覧者の言語に近い字幕があるほど、内容が伝わります。
- 位置情報を付けます。TikTokの投稿画面では、位置情報の候補は、人気度・距離・投稿内容をもとに並びます。候補に出ない場所は付けられません。YouTubeにも、動画の場所を付けられます。
- ハッシュタグは、地名と料理や体験を組み合わせて付けます。
TikTokの投稿画面では、説明、ハッシュタグ、ユーザータグ、位置情報、リンクを設定できます。写真の投稿は、最大35枚まで載せられます。動画の撮影や編集が負担なら、写真を並べた投稿から始める方法もあります。
店頭でできること:来店客に投稿と位置情報タグを頼む
費用がかからず、いちばん早いのは、店頭でお客様に頼むことです。席やレジの近くに「撮影・投稿は自由です」の案内を置き、店の位置情報タグとハッシュタグを書いておきます。お客様が付けてくれた投稿には、「いいね」やコメントで反応しましょう。投稿を店のアカウントで紹介したいときは、投稿した人の許可を得てからにします。
ただし、頼み方には注意が要ります。消費者庁のQ&Aに、店に関わる例があります。
| 店のやり方 | 消費者庁のQ&Aで言えること |
|---|---|
| 街頭で試供品を配り、投稿をお願いする | 不特定多数に向けたものなら、通常は規制の対象外 |
| 割引と引き換えに、予約サイトへ口コミを書いてもらう | 内容の指示がなければ、通常は対象外。「星5」や推奨コメントを条件にすると、対象になる |
| ハッシュタグ投稿のキャンペーンをする | 感想を自由に書いてもらうだけなら、通常は対象外。「毎日食べたい美味しさ」のような具体的な文言を条件にすると、対象になる |
つまり、お願いするのは「撮影と投稿」までです。内容や評価を指定する頼み方は、ステマ規制の対象になります。お願いの文言は、「感想はご自由に」としておきましょう。
インフルエンサーを招く場合:無料の食事でも「PR」の表示が要る
店が発信者を招いて、投稿してもらう方法もあります。対象の国で影響力のある人を選び、依頼の内容と条件は文書で決めておきます。韓国ならNAVERブログを書く人、中国なら小紅書の発信者が、その相手です。ここで押さえるのが、ステルスマーケティング(ステマ)の規制です。
2023年10月1日から、広告であることを隠す表示は、景品表示法の違反になりました。令和5年内閣府告示第19号に基づく規制です。消費者庁の資料から、店に関わる点を整理します。
| 論点 | 消費者庁の資料で言えること |
|---|---|
| 規制を受ける人 | 広告主の事業者。インフルエンサーなどの第三者は、この告示の対象ではない |
| 事業者の表示になる場合 | 事業者が投稿を依頼した場合。明示の依頼がなくても、やり取りの様子、対価の有無、取引の継続性などから、該当し得る |
| 対価 | お金に限らず、物品も含む。無料の食事の提供と引き換えに投稿を頼む場合は注意が必要 |
| 表示の方法 | 「広告」「PR」などと書く。または「A社から提供を受けて投稿」と書く |
つまり、無料でお出しして投稿を頼むなら、投稿に「PR」などの表示をしてもらう必要があります。店の側が、頼むときに伝えておきましょう。
また、依頼したインフルエンサーの投稿を、自社サイトで「お客様の声」として載せるのは、不適当とされています。載せたいときは、広告や紹介として載せます。
頼む前に、次のことを決めておくと安心です。
- 目的。認知か、予約か、来店か。目的で、頼む人も内容も変わります。
- 公開前の確認。事実と違う内容が出ないよう、公開前に見せてもらえるかを決めます。
- 費用の条件。投稿の数、期間、二次利用の可否を、見積もりの内訳として書面でもらいます。
測り方:保存・位置ページ・会計時の聞き取り
フォロワー数は見栄えのよい数字ですが、来店とは直結しません。見たいのは、来店に近い行動です。
| 見るもの | 見方 |
|---|---|
| 会計時の聞き取り | 「どこで店を知りましたか」と尋ねる。選択肢には、Instagram、Facebook、Threads、YouTube、TikTok、NAVERブログ、小紅書、Googleマップを並べ、国と一緒にメモすると、どの国のどのSNSが効いたかが分かる |
| インサイト | プロアカウントで、投稿のリーチ、再生、保存、シェアなどを見る。保存の多い投稿から、見た人が気になった店や料理が分かる |
| 位置ページ | 店の位置ページに、お客様のタグ付き投稿が増えているか。どの国の人がどんな写真を撮るかが分かる |
| 予約・問い合わせ | 外国語での問い合わせや予約が増えているか。経路を聞いておく |
来店経路は、把握できていない店が多いのが実情です。飲食店ドットコムが2023年9月に飲食店370店に行った調査(やまとごころ掲載)では、来店経路を「わからない」とする店が半数を超えていました。まず、会計のときに一言聞くところから始めましょう。
1か月で判断せず、旅行の季節も踏まえて、数か月単位で見ます。
よくある失敗
- 国を決めずに、英語だけで出す。出発前に頼る情報源も、使う言語も、国で違います。
- 韓国向けにFacebookを中心にする。韓国でFacebookが届くのは13.6%です。NAVERブログに書いてもらう形にします。
- タイ向けにInstagramだけで出す。タイはInstagramが28.7%、Facebookが71.9%で、Facebookが先です。
- ハッシュタグを付けすぎる。6個以上付けると、コメントが投稿されません。5個までに絞ります。
- 自動翻訳に任せきりにする。リールのAI翻訳の対応言語に中国語は入っていないため、台湾・香港向けの字幕とキャプションは自分で用意します。
- 店名や営業時間の書き方が、媒体ごとに違う。Facebookページ、Googleマップ、プロフィールで同じにします。
- 無関係な場所のタグを付ける。実際の店の場所だけに付けます。
- 割引と引き換えに、「星5」や決まった文言の投稿を条件にする。ステマ規制の対象になります。
- 来店客に経路を聞かない。何が効いたのか分からないまま、続けることになります。
任せる場合:費用の目安と頼む範囲
多言語の投稿を続けること、撮影や編集、数字の振り返りは、店の担当者だけで続けるのが大変な作業です。任せる場合の費用の目安を示します。
ほかの会社の料金は、インバウンドSNS運用代行の会社32選で、国・地域ごとに比べています。
当社(IMJ)の料金
当社のInstagramとTikTokの運用代行の料金です(税別・1アカウント、5店舗までの料金。広告費は別途)。くわしい内容はSNS運用とTikTok運用代行に載せています。
| プラン | 初期費用 | 月額 | 内容 |
|---|---|---|---|
| Instagram運用代行 ライト | 10万円 | 10万円 | 来店につながる投稿を多言語で設計し、運用まで担当 |
| Instagram運用代行 スタンダード | 10万円 | 25万円 | ライトの内容に、月1回のオンライン打ち合わせが付く |
| Instagram運用代行 プレミアム | 10万円 | 50万円 | ライトの内容に、月1回のオンライン打ち合わせが付く |
| TikTok運用代行 | 10万円〜15万円 | 20万円〜30万円 | 企画・制作・投稿・分析。撮影込み・動画週3本 |
自店と会社で、作業を分ける
| 作業 | 自店が向いている | 任せるのが向いている |
|---|---|---|
| アカウントと位置情報の設定 | 最初の1回だけなので、店で整えられる | 複数店舗で、一度にそろえたい場合 |
| 写真・動画の撮影 | 料理や店内は店の担当者が撮れる | 週に何本も、続けて出したい場合 |
| 外国語の翻訳と返信 | その言語が分かるスタッフがいる場合 | 複数の言語で、続けたい場合 |
| 数字の振り返り | 会計時の聞き取りは、店でしかできない | インサイトの分析と、次の企画までまとめたい場合 |
| インフルエンサーの手配 | 条件を店で決められる場合 | 候補選びと条件交渉を任せたい場合 |
アカウントは、必ず自店の名義で持ちましょう。会社に運用を頼む場合も、ログインの権限が会社だけにならないようにしておくと、契約が終わっても残ります。
よくある質問
Threadsはやるべきですか?
台湾のお客様が多い店は、Facebookのあとに足す価値があります。台湾はThreadsの広告到達が28.8%で、TWNICの「最も使うSNS」でも3位です。韓国は8.5%、米国は7.1%、豪州は5.0%なので、台湾以外の店は、Instagramとその国のSNSを先に整えましょう。くわしくは台湾をご覧ください。
TikTokとリールは、同じ動画でよいですか?
同じ動画で構いません。1本撮って、リール、TikTok、YouTubeショートに出します。字幕はそれぞれの言語に合わせ、位置情報はそれぞれで付けます。くわしくはショート動画をご覧ください。
中国のお客様には、どうすればよいですか?
中国のお客様はInstagramを使えないので、小紅書になります。JNTOも中国市場向けには、微博などで発信しています。くわしくは中国をご覧ください。
何か国語で書けばよいですか?
最初は、英語と、いちばんお客様の多い国の言語の2つで足ります。台湾・香港は繁体字、韓国は韓国語です。リールのAI翻訳は中国語に対応していないため、字幕とキャプションは店のほうで用意します。くわしくは言語の選び方をご覧ください。
個人アカウントのままでもよいですか?
お店のアカウントは、プロアカウントの「ビジネス」にするのがおすすめです。インサイト、連絡先ボタン、カテゴリの表示、広告が使えるようになります。住所はFacebookページから登録します。くわしくはアカウントの準備をご覧ください。
参考資料
- 観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年 年次報告書」
- JNTO「訪日外国人客数」(2026年1〜9月・10月21日公表)
- JNTO「ウェブサイトやSNSを通じた訪日観光情報の提供」
- DataReportal「Digital 2026: South Korea」
- DataReportal「Digital 2026: Taiwan」
- DataReportal「Digital 2026: Hong Kong」
- DataReportal「Digital 2026: Thailand」
- DataReportal「Digital 2026: The United States of America」
- DataReportal「Digital 2026: Australia」
- TWNIC「2025 台灣網路報告」
- Pew Research Center「Americans' Social Media Use 2025」
- Instagramヘルプ「ハッシュタグ」
- Instagramヘルプ「投稿に位置情報を追加する」
- Instagramヘルプ「ビジネスの場所をInstagramに追加する」
- Instagramヘルプ「投稿・コメント・プロフィールの翻訳」
- Instagramヘルプ「プロアカウント」
- Meta「リールのAI翻訳」(2025年10月9日)
- Meta for Developers「Threads 位置情報タグ」
- YouTubeヘルプ「動画の場所を追加する」
- TikTokサポート「おすすめの仕組み」
- TikTokサポート「投稿の作成」
- 消費者庁「ステルスマーケティング規制について」
- 消費者庁「事業者が講ずべき表示等の管理上の措置」ほか運用基準(令和5年3月28日)